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4 変わった人

「家族……ですか」


 彼は少し驚いた顔を見せると、次第に顔が曇り始めた。


 こっくり彼女が軽い頷きを見せると、近くにある小さなベンチに腰を下ろす。


「俗に言うタイムワープってモノなのかもね」


 その声を聞くと、彼は隣の隙間にそっと座った。前には錆びれた時計と規則良いリズムで巡るビル群。


 そしてまた、彼女は深く考えに入り……。


 じっと前を見つめている。


 彼はその姿を見て、自分自身の話を持ち出した。どうやら2人におかしな事が起こっているのだ。そう思いどこかで謎の期待を持ち過去の話をする。


「俺は……年齢が動かない。周りよりも老化が遅い病気。それは40年ほど前に初めて起こったことで……」


 意識することは無く彼は熱心にそのことを話し続ける。細部まで蘇る記憶は彼をまた欺き始めていた……。


―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――


 それは40年前のこと。太陽に照らされた田舎道がぎらっと輝くあの夏。


 天国岩は遠の昔より存在していて、この頃はここが1番天国に近い場所だった。


 今とはまるで別世界のように……。未来はここまで進歩した。


 それは実質8年前になるのか。


 原因不明の年齢が遅く進む病。普通の人々と比べると約1/5のスピードで、歳を重ねる。


 0歳で発症するとその患者は20歳になった時、始めは同年齢だった人がもう100歳。


 当然、いなくなる可能性が高い。


 死とは真逆のお話だ。そしてそれは、不死身と近い何かがあって僕を大いに困らせる。



 ちょうど22歳で発症した。そして今は30歳。体もゆっくりと老いていく。ほかの人々とは、どんどん歳が離れていく。



 その周りは62歳にもなっているのだから。




 病院でその「遅老症」の診断を受ける前は……何をしていたのかと言うと……。



 普通の会社員としてせっせか働いていた。今もなお残る大きな会社で。



 意外と頭は良くて、成績もクラス上位。

 流れのままに就職して、大手企業に就いたわけだ。


 学生時代……。苦労もした。

 

 賢くても賢くなくてもそれなりの苦労はある。


 課題は人それぞれ違うのかも知れない。



 将来の夢も決めず、きっかけまで与えてくれたはずなのに、何も応えれなかった。


 今思えば、毎日が無駄に流れていたんだ。ただ働いてお金を受け取り、程々に消費して、また働いて……と言ったように。



 季節はものすごいスピードで巡り感情もほぼ失っていた。



 けど、そんな最中。あることが起こる。



 僕の後々の妻となる女性に出会ったんだ。



 踏切を渡った先の、あの小さな噴水で。




 今も忘れない、木漏れ日が揺れ動くあの優しい肩は、何かを引き寄せるものを持っていたんだ。


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