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第7始 またもや

―――――十手前を見直せ。



聞いたところ、事故が起こった後、全員気絶。気付いたら10人だけだった、ということらしい。見つからない?そんなはずがないだろう。俺らを置いて先に行くはずがないし、不謹慎ではあるが、死んだのならそこら中にあるはずだし、色々とおかしなことが起きていて、混乱しそうだ。殺人鬼、バス事故、夢の中の男、と、まあ二つ起きたのだが、そもそも殺人鬼の時点で頭がどうにかなりそうだったのに、立て続けに色々起こるともうどうしたらいいのか分からない。

「鉢節、今どこへ向かっているんだ?」

「泊まる予定の旅館だよ。他の奴らがもしかしたらいるかもしれねーし。」

幸いなことに、旅のしおりに地図が載っているページがあったらしい。しおりを担当する係には感謝しないとな。

「警察は?連絡しないのか?」

「誰も携帯持ってないし、交番はここからだと大分遠いし、旅館に着いてから宿主に連絡してもらうしかねーな。」

「そうか。」

何で突然こんなにいろんな事が起き始めるんだよ。俺すげー危機的状況に陥りやすいし。

「あああ、やっぱり人生はクソゲーだ!!ゲームの中が一番の良ゲーだ!!」

突然、独り言を叫んだのは、藁谷だ。生粋のゲーマーだが、誰もゲームをしている姿がないという意味不明な伝説がある奴だ。特に仲が良いと言う訳でも悪いと言う訳でもない、ただ、同じクラスというだけの互いに至って平等な無関係を築いていた。築いていたというのは少し間違いか、正しく言うならば隔てていたというべきだろう。どうでもいいことだが。

「人生はクソゲーでも良ゲーでもない。人生はいたって普通の人生だぜ。」

さらに、次は折刀が口を挟む。とてつもなくどうでもいいことで。

「まあ、折刀には分かんねーことだ。というか、俺にしか分かんねーことだし。」

「ふーん。それって何?」

「ぜってー教えねー。」

いらぬ言い争いをするな、と言おうと思ったのだが、面倒くさい事になるのは嫌だと思ったのでやめた。もう言い争いも終わったようだし。

そして旅館についた。


「すいませーん。(いななき)中学の生徒なんですけど、今、他の生徒はここにいますか?」

入口付近のいた宿主であろう老婆に問う。

「まだ来ていませんね。どうかされたんですか?」

「バスが事故を起こして目が覚めたら俺達だけだったんです。」

「……そうですか。なら、警察に連絡しておきましょう。とりあえず、お部屋へ案内いたします。ついてきてください。」

今まで通りの予定だと、今はこの辺りの観光だったはずなのだが、多分、もうそれもないだろう。そして、部屋へ行くのにもここまで暗い雰囲気だったことが未だかつてあったことがない。

「では、警察が来るまでここで寛いでください。」

そういって、宿主は部屋を出る。なにが寛いでください、だ。寛ぐような雰囲気でもない。かろうじて藁谷と、折刀によって少し、たった僅かではあるが、最低の雰囲気は防いでいた。そろそろ連絡が終わった頃だろうか。

『ザザ…ザザザ……あー。』

「!!」

突然、テレビがついた。そして、聞き覚えのある、忘れる事はないであろう声でマイクテストを始める。事故の直前、バスのスピーカーをジャックした男の声によく似ている。同じだ。

『あー、あー、あー。』

バスの時と同じように、数回マイクテストを続ける。当然、全員慌てふためく、かと思いきや、数人冷静だった。鉢節と黄豆と角振は、この場合最も多くの人がするであろう、パニックに。そして俺と聖格ちゃんと風見と藁谷と折刀はパニックと非パニックの間、そして薩摩と行美だけは全く取り乱していなかった。

『えー、皆様、よくぞご無事で。』

お前が言うべきことではないだろう。構わずに続く。

『他の生徒方は、今、俺達の所で全員眠っています。皆殺しにされたくなければ、3日後の午後5時までにわたくし達の所まで来てください。ヒントは一切なしです。』

「…!?お前!!何勝手なこと!!!」

鉢節はテレビに蹴りを入れ、壁に寄りかかる感じで倒れた。全く壊れていなく(壊れているはずなく)、音声は続く。見つかるはずもない。ヒントもないし、そして3日後までに見つかる保証もない、そもそも、3日程度じゃ見つけられない程遠い場所の可能性だってありえる。

『それでは、またいつか。』

と言って、プツンと電源が切れる。黄豆がテレビの位置を直し、それを申し訳なさそうに、「ごめんごめん。」と、なるべく暗くならないように言ったであろうトーンで謝る。

「3日後……」

風見はそっと呟いた。

「そうだ、風見。お前の異能力で、あのテレビから、他になにが聞こえたか分かるんじゃないか?」

「!?…風見、異能力を持っているのか?」

俺の発言を聞いた数人が一斉と言っていい程同時に驚く。

「……あまり、知られたくなかったけど。」

その返事は、数人の質問にではなく、俺に向けたものだった。

「完璧ではないかもしれないけど、まず、男は椅子に座っていて、コートらしきものを着ている。そして、後ろに大人数が倒れている。多分、この大人数が生徒先生だと思う。聞けた情報はこれだけだよ。」

「有難う。」

大分細かく聞けたのにまず驚く。コート?つまりは衣擦れの音を聞き分けたということだ。

「近くに同じような状況の音がする場所はあるか?」

「…………」

ベランダに出て、前のめりに寄りかかり、耳を再び澄ます。暫く周りの音を聞いた。本当に異能力ってのは異常な能力だな。

「見つけた。」

「!!!、見つけたのか!?どこだ?」

「あっちの、あの緑色の倉庫の地下2階。」

「よし、行くぞ!!」

「待て。」

部屋を出ようとした俺に対し、薩摩が突然止めた。振り向き、目を合わせる。だいぶ怖い目つきに少し気おされかけるが、それに耐える。

「あいつはバスをジャックし、そして俺達がここに来てからすぐにテレビをジャックした。つまりは俺達の居場所がわかるという事だ。迂闊に行動は出来ないぞ。」

「あ!!」

そうか。完全に盲点だった。俺だけかもしれないが。

「分かったらとりあえず、どうするか全員で相談するぞ。」

相談、という言葉が最も似合わなさそうな男が発するので、違和感がする。関係ないが。

「じゃあまず、この中に異能力者はいるか?言いたくないなら手を上げなくてもいいが。」

まず、最初に風見が手を上げる。当然か。もうここにいる全員は風見が異能を持っている事を知っている。次に手を上げたのは二人。

折刀と、行美だった―――――。


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