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第5始 隣には

――――誰かの失敗は誰かにとっての成功である。



「やあ、君達。おっと、同じクラスだったかな?」

「てめえは、靭着……。なんだ?お前も5万払うか?」

「えーと、名前忘れたから馬鹿三人組で。」

「なんだとてめぇ!!」

結構低レベルな煽りではあったのだが、意外と効果があったらしく、三人組は挑発にのった。ここらへんも三人組の低脳さがうかがえるところだろう。

「『復讐夜襲(リクエストカウンター)』」

襲ってきた男の一人の顔に思い切り、拳を一発くらわせる。拳の威力と、走ってきた勢いのおかげなのか、かなり鋭い一発だったようだ。気絶したのか、その寸前なのか、曖昧な顔だ。

「な、なにっっ!?曲利(まがり)がやられた!!」

「曲利君、ねえ。じゃあ、のこりは馬鹿二人組ってわけだ。」

またもや煽りが入る。というか、俺にボイスレコーダー持たせる意味あったか?靭着が一人でやればいいのに。とは、思ったのだが、いや、思ったのだがという言い方は少し違うのだが、つまり言いたいことは、俺のいる意味があまりないということだ。いやまあ、最初だからお手本的な意味も込めてこうやって見学と考えればいいといえばいいのだが、受け取る必要性がないボイスレコーダーを受け取った時点で、何でもいいから仕事を与えた感が見て取れる。考えすぎか?

と、思っている数秒の内に、この場に立っていたのは、俺と靭着と釧麦だけだった。それ以外は、つまり、靭着が言う所の、馬鹿三人組は、気絶していた。

「あ、ありがとうございました。」

「いいんだよ。またこういうようなことがあったらまたおいで。」

「は、はい!」

そのまま釧麦は去って行った。

つまりはこういう部活というわけだ。ちょっと違う感もあるが、ただの部活なのだから(非公式ではあるけれど)、しょうがないといえばしょうがない。

「でさ、部活とは関係ないんだけどさ。明日、3年の修学旅行あるじゃん?」

「あれ?明日だっけ?」

「そうだよ!忘れてたの!?」

そういえばそうだったか。明日か。何の準備もしていなかった。

「でね、僕の班に、三須雷(みすらい)ちゃんがいるんだよ。」

三須雷、というと確か1組で一番人気の女子だったか、いやしかし。

「俺の班には聖格ちゃんがいるんだぜ。」

「聖格ちゃん!?くっ、僕よりも上が僕のこんなに傍にいたなんて…」

その言い方は失礼だろ。と、言おうとしたが、なんだか面倒くさい雰囲気になりそうだったので、言わないことにしておこう。ついでに、付き合っていることも言わないでおこう。(そもそも付き合っているのかまだ少し疑問ではあるのだが。)


まあ、そんなわけで、その日一日の部活動は終わり(といっても、4時までただ二人で談笑していただけではあったのだが)、帰宅し、早速修学旅行の準備に取り掛かる。

いつもは特に楽しくもなかった修学旅行なのだが、今回だけは別だ。先ほどの会話で分かったと思うが、聖格ちゃんがいるからだ。しかも、バスでの席は俺と隣だ。これはじゃんけんで決まった。他の奴らのその時の顔を考えると、ついついにやけてしまう。というか、会話がちゃんと続くかどうか、それが一番の心配だ。


――――次の日、俺はリュックを背負って、靴を履く。母が俺を見送り、俺は行ってくる。それで、道中、やはりというべきか、鉢節による聖各ちゃんの声真似が後ろから聞こえる。流石に素直に騙されるはずもなく、俺は冷めた目で振り向いた。

「あー、騙された!」

「騙されてねーよ!!」

こいつには冷めた目が通じないのか!?じゃあもう、次からは振り向かないに限るという事か。よし、そう決めた。

「でさ、お前は誰と同じ班だっけ。俺は聖格ちゃんとだぜ!」

「いや、俺と同じ班だろが!!」

ったく、別にお笑いの道に行くだとか、ツッコミ担当だとか、俺は別にそんなんじゃねえだろ。いや、もうこれはツッコミ担当だと言うしかないのか?少なくとも、お笑いの道に行くというわけではないのだから、別にいいといえばいいのだが。

「そうかそうか、同じ班だったか。忘れてた。」

「忘れてんじゃねーよ!!」

こうは言ったものの、俺も前日は完全に忘れていたのだから、このツッコミはちょっとあれだが、ばれなきゃいいだろう。

「あー、とっくーん、はっちー!!」

この声は、聖格ちゃん…ではなく(声が全然違う)、同じ班となったもう一人の女子、黄豆癒(おうずいやし)だ。別に俺は好意を持っているという訳ではないので、俺は呼び捨てで呼んでいる。

「よー、黄豆。」

「おっはよー、癒ちゃん!今日も良い天気だねー!!」

な、名前呼びだと!?確定という訳ではないが、それは好意がある、という事ではないのか?そして天気の話というのはつまり話題に困ったときに言う典型的なやつだぞ。まじで話題がないのか、それともそれがお前の挨拶と一緒についてくるセリフなのか。実際、ノミほどの興味もない。興味があるのは、鉢節は黄豆に好意があるのかどうか、という事だ。そっち方面の話題への興味は尽きる事を知らない俺にとって、これは大分暇つぶしになりそうだ。

「あ、聖格ちゃんがいた。あっち行ってくるねー、一旦バイバーイ!」

足早に、少し前方にいた聖格ちゃんの方へと行った。じゃあ、聞くか。

「なあ、鉢節。」

「んー?」

「お前、黄豆の事が好きなのか?」

「はあ?ちげーし。俺は別の学校のとある子が好きなんだ!!」

「はいはい、またそれね。」

分かりやすくとぼけながら鉢節は口笛を吹く。口笛はもう、怪しいの代名詞だろう(知らんけど)。つまりは、ほとんど確定で黄豆の事が好きらしい。口笛がフェイクの可能性もなくもないといえばあるかもしれないとも言えなくもないが、単純な性格からして口笛はまじで誤魔化そうとしていただけなのだろう。因みに、別の学校のとある子というのは、こいつの言い訳の代名詞的な物だ。


――――


「えー、今日は晴天に恵まれ、雲一つない―――――」

聞くに堪えない校長の長話、もういいだろが、とりあえず早くバスに乗せてくれ。せめて座らせてくれ。立ちながら話を聞き続けるのは大分苦しいぞ。体育館等の室内でならば、寝てしまえば問題ないのだが(問題ないというと少しアレなのだが)、今回に限っては、寒さがその手段をかき消す。

で、暫く我慢して、何とか話は終わり、バスに乗る。そういえば、聖格ちゃんと隣の席だった。出席番号順に並んで、どんどん入っていき、俺が先に入ったのでとりあえず、一度深呼吸して平静を装う。つまりは実際は平静じゃないという事だ。だが、聖格ちゃんが座った瞬間、装えそうもないほどに緊張してきた。

「あれ?どうしたの?」

やばい、感づいてきた。これは本当にヤバい。つまり、隣にいるのだから、そして聖格ちゃんの顔は当然こっちを見ているのだから、向けば大分顔が接近するということになる。実際は、そんなに接近するというわけではないというのは分かっているのだが、女子相手となるとその話は全くの別だ。ゆっくりと、顔を向けると、意外にも接近していなく、本当に僅かではあるのだが、落ち着いた。

「いや、なんでもない。」

「そう?」

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