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落第せずに進級できました!

 



 さてさて、いよいよこの時が来ました。


「祝! 二年生首席殿!!」


 お手製のくす玉を割って『本日の主役』と書かれたタスキをユーリにかけ……拒否された。


「騒がしいよ()()()()。何の祭りだいこれは」


「いやぁ、ユーリくんが二年連続で首席になったのが嬉しくてねぇ。おじさん歓喜したよ」


「おじさんって……君はまだそんな歳じゃないだろうに」


 転生する前にも含めたらお前のお父さんでもおかしくない年齢なんだけどなぁ。


「まぁまぁ、俺は友人として誇らしいんだよ()()()


 先日行われた進級試験。ユーリにとっては一年の復習くらいで済んだんだが、俺にとっては退学を賭けた大勝負だった。

 執筆関係の仕事が増えて収入が高くなるのはいいんだけど反比例で学力下がるのが辛い。居眠り多いから教師陣から問題児扱いされる始末。


 推しCPの誕生から行く末を見守りたい俺からすればまさに人生を賭けたと言っても過言ではない!

 なので、試験三日ほど前からユーリに付きっきりで勉強を教えてもらい、合格を果たした。

 以上が予想していなかった友情イベントで親密度が上がって呼び名が変わった理由だ。


 推しキャラから名前を呼び捨てにされる幸せ。友達みたいで嬉しいよ!………いや、友達…だよな?


「でもこれでユーリとは離れ離れかぁ」


「確かに。首席は例年通りで行けば特進クラスに進むからね。学問・武術・剣術・魔法・芸術、何かで非常に優秀な成績を収めないと無理だ」


「ユーリは学問と武術が上位で剣術がトップだったからな」


「芸術以外ではトップを獲りたかったのだが、同学年には強者が多くてね。魔法に関しては歴代最高得点を叩き出した子がいたからね」


 それ、サテラのことだよなぁ。俺が必死にライターの火をバーナーくらいにしようとしてたら隣の試験場の屋根が吹き飛んだ事件。

 まだ原作スタート前だからこれからパワーアップするとなると、どこまで強くなるやら。


 魔法でトップになった時点でサテラの特進クラスは確定。これでめでたくユーリ×サテラの二人が同じ教室に揃うんだけど……そこに俺がいないとなぁ。


 一年間通った教室で担任教師から次のクラスが書かれたカードが配られる。

 ユーリに渡されたのは明らかに他の人とは違う紙質のカードで、縁に色まで付いてる。


 一方の俺は去年と同じ白いカード。中に書いてあったのは『補欠合格 特進クラス』っていう嬉しくない知らせ…………


「ユ、ユユユユユユッ!ユーリ!!」


「特進クラスだね。おめでとう」


 反応薄っ! ここはもうちょっとビックリする所じゃないの?


「俺が特進クラスなんだぞ! こう、もっとあるだろ」


「別に、不思議なことはないよ。試験問題については僕が付きっきりだったからね。平均以上はあったはずだよ。武術・剣術はそこそこ。たまに僕の練習相手をしていたからただの平民よりは強くなっている。魔法も威力はないが特殊な効果を持つ魔法を使えるだけで充分さ」


 おっ、おう。確かにユーリに付き合って筋トレとかして体つきは良くなったし、サテラには彼女の祖母が使っていた魔法をいくつか教えてもらった。

 でも、どれも中の下くらいしか出来てないけど。


「そうなるとあとは芸術の分野で高く評価されたのだろうね。君の書く短編や雑誌のコラムは学園内でひっそりとしたブームになりつつあるからね」


「そう言ってもらえると嬉しいなぁ。へへっ」


 雑誌の出版社や学園の新聞部からもファンレターが届いてますよとは聞いたけど、まさか趣味でやってることがリアル人生に影響を与えるだなんて思ってもいなかった。


「さて、それじゃあ新しい教室に行こうか。諸君達、一年間ありがとう。また学園で会ったら声をかけてくれ」


 キザったらしく前髪を触りながらユーリが教室を出ると黄色い歓声が上がったので、真似したら爆笑が起きた。解せぬ。










「……ってことがあってさ。あー、俺もイケメンになりたかった!」


「ふふっ。似合わないとこをするからよ」


 いつもの放課後の図書館。いつもの席に座って談笑をするのだが、今日は少し違うところがある。


「これでユーリとサテラと同じクラスかぁ。その制服似合ってるじゃん」


 これまではザ・エルフの着てそうなヒラヒラの服と、その上から白いローブを羽織っていただけなのに、今は学園内を歩く女生徒と同じ制服なのだ。

 ニーソックスとスカートの間に眩い絶対領域できてて俺の目が潰れそうなんだけど。


「そうかしら? 図書館に来た他の子たちにアドバイスしてもらったんだけれど、変じゃない?」


「全然変じゃないぜ! マジ天使。マジ可愛い。…………これならどこぞの堅物騎士様もイチコロだろ」


「最後の方よく聞こえなかったけど、アッシュがそこまで褒めるなら今の私って可愛いのかな?」


 いまいち自信がないのか、首を傾げるサテラ。

 もう!あざといよ!無自覚なのがタチ悪い!でもそこが好き!


「そりゃあもう。今の同学年にサテラより可愛い子なんて………何人かしかいないな」


「何人かはいるんだ」


 そう、そこが問題よ。サテラは凄く可愛い。俺の推しという色眼鏡を外しても数十年、数百年に一人の美少女!と評価される。


 ただし、この世界、この学園はプレイヤーである主人公が在籍する場所であるからして、必然的に美男美女、それもサテラ並みの子達が集まる。

 そういう子に限って成績や家柄が良くて特進クラスに集まりやすい。

 俺の記憶が正しければ特進クラスって名前やプロフィールすらないモブキャラの方が希少だった気がするんだけど。


 もしかして俺ってレアキャラですか?


「あぁ、でも楽しみね。今まで生きてきて誰かと一緒に授業受けたり行事に参加するのって初めて」


「うん。楽しみなんだけどサラッと重い境遇混ぜるのやめような」


「私、変なこと言った?」


 半年間の付き合いでわかったけど、この子ポンコツ属性ありそうだわ。それも無自覚なの。


「変ってことではないんだけど、これからサテラは輝かしい青春を謳歌するわけなんだから、後ろ向きな発言や暗い過去を一旦置いといて、ポジティブに行こう!」


「……そうね。私より寿命が短いみんなみたいに明るく元気にいくわ!」


「ん?ひと言多くない?」


 サテラって思ってたより拗らせてるとこある?

 ゲーム時代の彼女は自分の過去や素性をあまり話さないけど、微笑みを絶やさない女神とか妖精っぽいとこあったけど、最近は常時ニッコニコなんだが。笑顔で笑えない爆弾落とすんだけど。


「さて、今日も新作書いてきたから感想聴かせてくれたまえサテラくん」


「はい、アッシュ先生。原稿をください」


 けれども、そういう変化があるのことが、俺がこの世界で彼女と関わり合えているという証拠なんだろう。

 ……推しキャラの性格変えるとか俺が世界に与えてる影響って結構大きすぎやしないだろうか。


 まぁ、どうにかなるでしょ。


 何かとんでもないこと忘れてる気がするけど。







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