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たまゆら
幸福の理論を
筋立てて考えるのは
どれだけの不可思議を
人生のなか 乗り越えるかを
空想するのとおなじこと
不可視の逡巡とか
四季折々の冷たさとか
どうせはかないものだから
せめて
しあわせな夢を
おなかいっぱい
食べさせてほしいのだよ
ほんの一瞬
手が届きそうな気がした
きみの髪を
掴めそうな気がした
それでも
手を伸ばさなかったのは
たまゆらに見た幻影だったからですよ
ひとさじのお砂糖と
いちまいの写真があればいいよ
ねぇ、夢を見る準備はできたかい