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透明
透明っていうのは
なにも消えて無くなるって
そういうものだと思っていたよ
透明っていうのは
触れられなくて
この指の隙間から
ぽろぽろと落ちていくものだと
歩道橋でのぞいた
昏いせかいだったよ
陽が落ちたら
黒が塗りつぶしていく
瓶詰めの空気に
色はなかった
だれがせかいに色をつけたの
塗り忘れがあるよ
むらもある……
消えて
忘れられて
でもそこにいて
透明なまま
ここにいるよ
待っているよう
きみがいった
ような気が
した
から
境界線が、痛いよ
机の上で
ボールペンが寝てる
黒色のボールペン




