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スカート
ほら
春風に乗って
だれかの温度が
溶けだした季節が
通り過ぎていくようだよ
遮断機の前で
止まらずに
過るのは
まだ
幼かったころの思い出
へたなひらがなしか
書けなかった日のつれづれ
何年も前と
同じ桜がひらひら散って
風が
スカートを
ふわりと膨らます
緩やかな日々
それは夢うつつ
境目のない穏やかな情景
ささやかな慕情
それは春のようで
もう二度と帰らない
あたたかな季節
季節が巡り巡るだけ
あたらしいひとと巡り合う
季節が過り過ぎるだけ
しらない風が吹き抜ける