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夏影
愛されないのがかっこいいだなんて、ただの嘘っぱちだよ。寂しくて、切なくて、この惑星の隅っこで泣く。どこかで誰かがあたしの声を、聞いててくれやしないかなんて思いながら。
コンクリートに埋まったビルの根っこに、たぶん虫が食って、小さな穴があく。細い糸がやっと通れるような、穴。そこに入ってしまえば、まるであたしたち死んでるみたいだね。生まれ変わりは猫がいい。
夏が閉じて、落ち葉が堆積していく。汚れた川で身を清めるように、あたしたちはいつも無意味だ。雲が滑っていく空は青い。吸い込まれそうに思うよ。いっそのこと、青に溶かして。掻き混ぜるように、愛撫するふうに、一陣の風が、胸のぽっかりあいた穴を、吹き抜けていった。
まだいきなきゃ。