香炉
立ち昇る煙にうっとりとするのは
柔らかな
光が照らす部屋の中と
その光に乗って
自分の好きな香りが
空へと帰っていくのが
とてもとても好きだから
部屋のドアを全部閉めて
窓という窓に全てカギをかけて
もう
どこにも逃げ場はないだろうと
にやにやとして振り返った僕の脇を
君の香りは
やすやすと通り抜けていく
徐々に徐々に
炙られ
しおれていく
蝋燭の灯も
だんだん弱くなっていく
遠く遠く
浮かび上がる蝶のように
壁に
べっとりと染みついた鱗粉が
この部屋を満たし続ける
香りは、イメージを司るといいます。
ありがとうございました。