この世にヒーローなんていない
光:「どうですか。これで諦めてくれますか。」
愛:「・・・・・。ハッ!ね、寝てないよ!うん!」
光:(殴りたい!でもまだちょっと怖い・・。)
愛:「分かった。とりあえずお前がドジで馬鹿な事だけはよーく分かった。」
祐司:「それ俺も分かったわ。つーかそれしか分からんかった!」
光:「君たち本当の馬鹿なの!?」
愛:「失礼な。馬鹿は君だよ。」
光:「はぁ?さっきも言いましたけど、僕は学年トップまで上り詰めたこともあるし、学力は少し低下したけど、今でも君たちに比べたら僕のほうが頭いいですよ!少なくともこんな場所の悪いところを使って二人だけでカフェを作るとか、不毛なことをしてる貴方達に馬鹿って言われる筋合いありません!」
祐司:(不毛・・。確かにな。)
光:「それに僕は気づいたんだ!世の中にヒーローなんていない。周りは偽善者ばかりで何もしない。学校も!親も!自分を守れるのも、救えるのも自分だけ。」
愛:「守れるのも救えるのも自分だけ・・?ふっ。笑わせんな。」
光:(何だよ・・。雰囲気が一気に変わって・・。って顔怖っ!)
祐司:(愛がキレた。こいつがキレるとヤバイ。普段から想像出来ないくらいに顔が怖くなる・・。)
愛:「じゃぁ聞くけどよ、てめぇは一体何をしたんだよ。退学するまでの約三年間。」
光:「・・・何が言いたい。」
愛:「お前の事調べて、今の話を聞いて、確信したよ。てめぇは何一つ自分の意思で前に進んじゃいない。ただ妬んで、恨んで、人のせいにしてただけ。」
光:「・・!な!ぼ、僕はあの現状から脱出して幸せなひとり暮しを・・!」
愛:「辛い状況から逃げ出すのがてめぇの言う『前に進む』ってやつなのか?それはそれは。何てご都合主義の幸せ思考回路をお持ちなんだろうねこのお坊ちゃんは。その一人暮しも誰のおかげだと思ってる。どんなにボロくてもニートの高校生が住むには厳しいんじゃねぇか?あそこは。」
光:「それは僕が節約して・・。」
愛:「てめぇみてぇなガキが一人で働かずにネット使い放題で暮らせるわけねぇだろ。電気代、ガス代、水道代、ネットだってタダじゃない。」
光:「ちゃんと払ってる!」
愛:「月にいくらかだろ。てめぇの親がほとんど払ってくれてんだよ。でなきゃ月に合わせて数万円とかありえねぇから。」
光:「でも僕は見放されてた!親は自分の名誉のために僕の将来しか興味無かったんだよ!!」
愛:「そこんとこは私にも分からない。」
祐司:(あ、戻った。落ち着いたんだな。)
愛:「貴方の親が何を考えてたかなんて分からない・・けど、少なくとも気にはかけてたと思うよ。でなきゃ生活を助けるなんて事しないよ。」
光:「で、でも・・。」
愛:「楠くんの言った通り。この世界にヒーローなんていない。ヒーローっていうのは困ってる人を無差別に助けるからね。そんなお人よしなんていないよ。でも大切な人や物を守る人間は手からあふれてくるほどいる。もしかしたら貴方の親もそういう人達なんじゃない?」
光:「・・・・・。」
愛:「自分がどんだけ親の世話になってたかなんて考えてもみなかったでしょ。」
光:「・・・・・。」
愛:「家族ってね、よっぽどのことがないと嫌いになれないんだよ。多分楠くんの親もそうなんじゃないかな。」
光:「そんなの分かんないじゃないですか。それは貴方の憶測ですよね。今更信じる気になんてなれない。まだあの親を許すとか思えないし、そう簡単に割り切れない。」
愛:「え~・・。君って意外に頑固なんだね・・。」
光:「信じられないけど・・。感謝する気にもならないけど・・。借りは、返したい。」
愛:「・・!じゃ、じゃあさ!君パソコン得意なんだよね!ここのホームページ作ってさ、宣伝とかしてくれないかな!?それで、ここで働きつつ親御さんにお金返すの!」
光:「あ、あくまで金のためですから・・。他に働き手も無いし、仕方なくなんで!皆さんと馴れ合う気無いですから!」
愛:「ふふ。オーケーオーケー♪祐司、良いよね?」
祐司:「ま、働くならいいけど。」
愛:「よっしゃ!人員確保成功♪」