楠 光
【ボロアパート玄関前-愛・祐 部屋の中-光】
楠 光:(ヒーローなんてこの世にいない。いるのは救えるものだけを救う偽善者だけ。救えないと分かったら何もしない。見ない振りをする。いや、見えない振りと言ったほうがいいだろう。
人は目の前の救えるものだけを救って「自分は善人だ」って言い聞かせなくてはやってられない生き物だ。そうしないと自分の心が罪悪感という虫に食われてしまうから。そうやって人は心に善人バリアを貼って弱く、もろい心を守っている。自己中心的で自分は強いと錯覚することで己を守る弱い生き物。それが人間だ。僕はそんなやつらが大嫌いだ。僕も含めて。見えない振りをして見捨てるような僕らに生きる価値はないと思う。)
光:「かと言って死ぬ度胸も無いクズだしなぁ・・。楠じゃなくてクズのきにでも改名したほうがいいかもね。ふっ。」
ピンポーン
光:「誰だろう。最近通販で何も買ってないし。荷物が送られてくるわけ無いしな。うん。僕ニートだし。友達いないし。」
ピンポーン・・・ピンポンピンポンピンポンピンポーン
光:「え、怖っ!待って無理!何か怖いしドア開けたくない!!」
愛:「・・・開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ」
光:「わー!!分かりました開けます!怖いとか言ってごめんなさい!」
カチャ
愛:「やぁ!親切に開けてくれてありがとう♪」
光:(親切?どちらかというと脅し・・。)
愛:「ねぇ君!一緒に働k」
光:「お引取り願います。〔速やかにドアを閉める〕」
パタン
愛:「・・・え、なんで!?」
祐司:「当たり前だろっ!〔チョップ〕」
愛:「痛っ。ちょっ、仮にも私店長だよ!?」
光:(あんなのが店長なのか!?)
祐司:「お前は引っ込め。あー・・。楠 光くん・・だよな?とりあえずここ開けて話だけでも聞いてくんね?俺たち怪しいけど悪いやつらじゃねぇから。」
光:(この人さっきの恐喝女の連れの人か。パニックになって顔ちゃんと見てなかった・・。あの女よりはまともそうだしとりあえず開けてあげようかな。絶対働かないけど。)
カチャ
祐司:「さっきは悪かったな。すまん。」
パタン
祐司:「えぇぇぇ!?なんでだ!?」
愛:「ダサっw。」
祐司:「お前にだけは言われたくない!」
光:(金髪、ピアス、タバコのにおい!しかもピアスは三つもある!え、人間ってあんなに穴開けていいの?死ぬよ?ねぇ、死んじゃうよ??)
祐司:「なぁ、どうしたんだ?俺、何か気ぃ悪くさせちまう事言ったか?」
光:「生きてるとか人間ですか!?」
祐司:「はい!?」
愛:「ぶふぉwwww!生きる価値なし??ww。」
祐司:「お前吹き出すな!てか笑うな!!おい光、今のはどういう意味だ?とりあえず開けてくれ頼む!!」
光:(どうしよう失礼なこと言っちゃった!怒ってるよね?怒ってないわけないよねぇ??どうしよう・・。関わるとやばそうだしこのまま帰ってくれるのを待とう。)
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
光:(静かになった。帰ってくれたのかな。)
プチ
愛:「あっ・・。キレた。」
光:「え?」
ガン!!〔ドアが蹴られる音〕
光:「ひぃ!!」
祐司:「てめぇいい加減にけじめつけて出てこいやああ!!」
光:「ぎゃあああぁぁぁぁ!!」
隣の人:「うるせぇんだよ!!よそでやれ!」
ガチャ!
光:「ごめんなさい!!よそ行きます!」
愛:「・・・。ご近所さんには弱いのね・・。」