幸運の女神 共通① 式札礼花という名
「ここにあの人がいるのね……」
名門私立と名高いセレブの子息息女の通う華姫木学園。
ここには私の父がいるのだ。
『おめでとうございます。女神様が降臨なさいました』
私は育成機から這い上がる。布にくるまれながら目を閉じたままだ。
『君がエリカさんだね』
『はい』
若い男の声に私は返事、己の名を認識していたから。
『私は君の父である射ノ芽さんの秘書、紙林だ』
『秘書の方が私になにかご用ですか』
なぜ父が私を迎えにこなかった。
『写真があるので、目をあけて』
『……』
そこには40代の男がうつっていた。
『私の父ですか』
『そう』
私は彼に父について言われた。学園の理事をしていて、権力者である。
人工生まれの子でも両親は必要で、父は未婚であり今のままでは体裁的に私が会いにいけないらしい。
私が学園でなんらかの功績を上げれば養女とするそうだ。
人工生まれは殺されない。たとえ親であっても、危害を加えることは組織を敵に回す事になる。
機械スイッチを押したら確定する。私達には10000人単位に匹敵する命がある。
しかしそれだけの価値が私にあるのか―――
■
「転校生の式札礼花さんです」
人間の機械による生誕が合法化され、金持ちにはそちらが主流となった。
私は一年で必要な知識を得た。
顔の選択はできないが外見年齢を選べるから16歳頃だ。
「よろしくお願いします」
このクラスの人間が機械生まれかそうでないかはわからない。
金持ちが人工母機生まれの子を持つのはもはやステータス。
そうでないと知れたらむしろ恥となるのだ。
しかし合法とはいえ、人口の大半である庶民階級からは好奇の目で見られる。
ここは金持ち階級だから関係ないが、互いに詮索はしないのだ。