契約の刻印 共通①
生まれた時から異常な能力を持っていた私は、それを隠しながら生きていた。
『パパ、ママ、お空を飛べたの』
四歳の私は空を飛び生き物と会話が出来た。
人知を超える異常な力を持った私を両親はなぜか恐れなかった。
『このイヤリング、ネックレス、チョーカー、ブレスレット、アンクレット、リングはおまえの力を抑える物だ』
そして父は冷静に、力を制御する道具を私に与える。
『大丈夫よいずれ、貴女を受け入れる場所が現れるわ』
母は嫌悪や、畏怖も見せずにこやかに言った。
一番目の兄も泣きながら心配してくれた。
しかし、二番目の兄だけは違った。
『気味が悪い』
兄は私を憎んでいる。
「うーん不思議だね」
そして私は物心ついたときから定期的に皮膚科に通院している。
私の腕にはうまれたときから、二つの羽の絵のような朱い傷がある。
これが病院でどんな治療をしても消えない。
でも、消さないと周りから引かれるだろう。
「焼くしかないでしょうか」
「ダメだよ。そんなことしたら。肌に傷がつくよ」
診察を終えて、私は家に帰る。
この模様が手首から腕にかけてあるせいで、夏でも長袖を着ないといけない。
だから早く帰ってクーラーの効いた部屋で涼みたい。
◆
「おはよう」
寝起きの私に丁度食事を終えた兄が挨拶をする。
「あ、おはよう~お兄ちゃん」
「いよいよ明日お前ともお別れか…」
「兄さんったら大げさよ戦にいくわけでもないのに」
私は全寮制の学校に通うことになった。
しばらく家族と離れるのは寂しいけど、頑張って勉強したかいもあって、名門校に合格したのだ。
「戦って…普通例えるならお嫁に~だろう」
「熱血体育会系な兄さんがそんな事を言うなんて」
「そうか…おまえの中で兄ちゃんは暑苦しい筋肉バカだったか」
「うん、全身筋肉だと思ってた」
「それにしても、全寮制なんて怪しさ満点だぞ」
二番目の兄は見送りにはこないだろう。私はあくびをしながら言う。
「なんだそれは」
急に兄が不快そうな表情になりじっとこちらを見ている。
「えっ?欠伸してごめん」
(ああ、家族といってもさすがにあくびをしながらは、失礼だったよね)
「寝起きなのだから欠伸くらいするだろう。何を謝っているんだ?」
アクビが原因じゃないならさっきの嫌そうな顔は何だったんだろう。
「それよりその耳、どうしたんだ」
兄から指摘され、自分の耳が何かおかしいのかと思い、洗面所に行く。
「なにこれ…」
そして鏡の前で見てみると、両耳朶に薄い刺青のようなものがあった。
ポジティブに考えればピアスのようで可愛い。
しかし、じっくり見なければわかりにくいほど薄い。
でも兄はよく気がついたものだと思う。