8月29日 ~1stday~ 帰宅Ⅰ
初投稿です!処女作なので色々と経験不足感が否めないのですが、優しい目で読んで下さると嬉しいです。
――田舎独特の風景が、緑の縁に彩られた車窓から覗く。
何年ぶりだろうか。
もう夏も終わりに近づいているというのに、一向にやむ気配のないセミの声を聞きながら、俺は不意にそんなことを思った。
線路の上を走る、車両がひとつしかない小さな電車はなおも、目的地へと向かうためにどんどん速度を上げていく。
小さな山が、湖が、俺のすぐ横を通り過ぎるのをただ見ているのにも飽きてきた頃、突然俺のポケットの中のそれは黒いボディーに似合わない軽快な電子音を響かせ震えだした。
「……携帯電話か、電源切るの忘れてた。」
がらん、と人の居ない車内に俺の呟きが響く。
俺は使い古しのジーパンのポケットの中から、今もなお小さく震えるそれを取り出した。
タッチパネル式の手のひらに収まるサイズの携帯電話は俺が手にしたとたん、しん……と、まるで黙ったように静かになった。
多少のロックも掛けていないそれは、電源ボタンに触れるとすぐにメールの受信を俺に伝えた。
俺はメールの差出人を確認すべく、その液晶画面に目を向ける。
「真倉から、か……。」
メールの内容を確認しようと液晶画面に触れようとしたその時、辺りがいきなり闇に包まれたように暗くなった。
どうやらトンネルの中に入ったようで、携帯電話の電波がいきなり切れる。
返信も出来ない中でメールの中身だけを確認するのも面倒だったため、俺は携帯電話の電源を切ってポケットの中に戻した……その時だった。
――少し先に光が見えた。
もう少ししたらトンネルを抜けるのだ。この先に……俺の目的地である符月菜村が、妹が待つ俺の生まれ古郷が――。
――ふ、と。俺の視界を白い光が包んだ。
眩しく照りつける強い日差しのなか、車窓の外から目に入るものそのすべてに見覚えがあった。
俺の視界は近くから遠くまで、見渡す限りすべて、俺の知る符月菜村で埋め尽くされた。
(遂に……戻って、来たのか……。)
俺はこの村へ戻ってきたんだという実感と共に、ある種の感銘を受けていた――。
トンネルを抜けたあとすぐに、俺の他に誰も乗せていないちっぽけな電車は少しのアナウンスのあと、キキキッと耳障りな音をたてて停止した。
即座に席を立ち、切符を出口前の運賃箱へ入れる。
手動ドアの開くボタンを押し、ドアを開け電車から降りると、見るからに人の居ない寂れた無人駅が俺を出迎えた。
「……一度、外に出るか。」
そう呟くとすぐに、俺はその場をあとにした。
本来+1000文字での投稿だったのですが、初投稿というのもあり、様子見ということで約1000文字での投稿になりました。
※続きはすぐに投稿する予定です!
作者が思うに、この作品結構のんびりです。
作者も頑張りますので、最後までお付き合い頂けたらと、思ってます。