赤い月の実態
「こちら右側にあるのが2年前のまだ赤くなる前の月の光の波長です。そして左側にあるのが赤い月の光の波長です」
潤も含め食い入るように写真を見る。
「見た感じですが、主に光の波長に変化はありません」
「ではなんじゃ!」
早く言えと言わんばかりに室長の野々宮さんは急かす。
しかし、それを気に留めることなく録は続けた。
「では問題は何か? それは波長の歪みです」
録は2枚の写真の波長の部分を指さしながら言い切った。
「歪み?」
恋先輩は復唱した。
「はい。歪みです。真夏の晴れた日、少し離れたところの道路を見ると歪んだように見える陽炎と同じ原理だと思います」
「ほ〜」
堂上先輩は感嘆の声を漏らす。
「どこが同じ原理なんじゃ!」
野々宮さんは顔を強ばらせる。
「月が熱を帯びていて、それのせいで赤く見えているんです。そして、その他の副作用はまた別にあると思われます」
何故か正確だという確証を持てた緑はズバッと言い切った。
「どうしたら衛星である月が熱を持つんだ?」
恋先輩は訊いた。
「これに関しては自信はありませんが、多分熱運動です」
「熱運動? あの粒子やらが激しく移動することによって生じるあれのことか?」
「はい、それです」
野々宮は考え込むように顎に手を添える。
「アリじゃな」
蚊の飛ぶような小さな声でそう発した。
「どういうことですか?」
緑はすかさず訊いた。
「ちょっと前にわしらが打ち上げた衛星観察無人ロケットが月の石を拾って帰ってきたんじゃ。その時、石の中にカドミウムが含まれておった」
「カドミウム…。そうか!!」
野々宮さんの話を聞いた緑は叫んだ。
「カドミウムは有毒で近年熱をもち放出される気体には生物にの生態を変化させるものが含まれているって学会で説明されてた。それに宇宙空間を通ってきるからどんな化学変化が起きてるかも不明! なら、奇妙な現象が起こっていても頷ける!」
あまりにもこじ付けた理論だがこれを超えるものはないと野々宮さんは判断し、熱運動を止める方法に研究内容を移行することを命令した。




