適性検査
ここは国の緊急対策研究室。その廊下の前に並べられたパイプ椅子に浅く腰をかけ軽く握った手を膝の上に置き、強ばった顔で緑はいた。
気をしっかりもたないと今にでも緊張で足が震えだしそうだ。
「はい、次。石原緑さん」
名前を呼ばれた緑は生唾を飲んでから裏返りそうな声を抑えて返事をした。
緊張のあまり重くなった脚をゆっくり一歩ずつ動かし、"検査室"と書かれたプレートが掛かっているドアの前に立つ。
短く深い息を吐いてからノックをした。
「どうぞ」
男の人の声がした。ドアノブに手を掛ける。ゆっくりそれを回す。ゆっくり開けたせいかキーという音がした。
「こちらに」
先ほどと同じ声の男性に3人の試験官と向かい合わせにセットされているパイプ椅子を掌で示される。
できる限りの礼儀を表現してパイプ椅子の横に立つ。
「掛けてください」
試験官の女の人にそう言われてから緑は頭を下げてから腰を下ろした。
「はい、では最初に。何故あなたはこの人員募集に応募されたのですか?」
今まで一言も発していない3人目の黒縁メガネの男が訊いた。
「はい。僕は最近見て取られる生物の巨大化に興味があり学校の方でも観察をしています。しかし、その謎を追求できませんでした。そんな時にこの募集があったので国に選ばれた人たちの中で研究をしてこの謎を解明したいと思ったからです」
ハキハキとした口調で言い切った緑。
くすりと女の試験官が笑った。
やっべ、やらかした。緑は心の中でそう呟いた。
「キミは面白いよ。合格だ。明日からこの研究所に通ってください」
最初の試験官にそう告げられた。
思わず顔をほころばせた。
「やった……。やったー!!」
一瞬でその言葉の意味を理解できなかった。しかし、理解した瞬間叫ばずにいられなかった。
「では次、高橋恋さん」
緑は一礼をしてから部屋を出る。入室しようとする恋とすれ違う。
「頑張ってください!」
瞬間にそう告げ緑は軽い足取りで歩き去った。
コツ、コツと玄関からヒールで歩く足音が響いた。
「どうでした?」
玄関の前で恋を待っていた緑は俯いたまま歩く恋に声をかけた。
「あー、緑か」
元気のない声だった。
「そうですか」
恋の様子を見て落ちたんだ、と思い声のトーンを落とした。
「何がだ? 私も明日から来いって言われたよ?」
「へっ!?」
思いもよらない一言に緑は声を裏返した。
「じ、じゃ、何でそんな残念そうな雰囲気なんですか?」
「それは残念そうじゃなくて疲れたいるんだ。いつも使わない言葉とか使ったしな」
呆れて言葉も出なかった。
「心配して損しましたよ」
「誰も心配してなんて頼んどらーん」
ハハハと笑いながら言う恋の隣を歩き緑は帰路を進んだ。




