それぞれの未来
時刻はもう6時を回ろうとしていた。燃えるようなオレンジが所々穴の空いた天井から差し込んでいる。
地面には部品が散乱している。
そしてそんな工場の中心に似合わない立派な発射台があった。
大砲のようなそれは天に向かって立っていた。
「これが私たちが作った発射装置です」
滑らかに言う美ノ上を室長は尊敬の眼差しで見つめていた。
「君が犯罪者でなかったらうちに欲しい人材じゃったな」
「ご冗談を」
真剣に言う室長をあっさりかわす美ノ上は横側に取り付けられた蓋を開ける。
「ここに入れてください」
「こ、これは液体じゃぞ?」
「では瞬間冷凍剤を使いましょう」
そう言うや否や奥からスプレーのようなものと袋を持ってきた。
「この中に液体を入れてください」
室長は言われるままに液体を入れる。
液体が入ったのを確認すると美ノ上はその袋に先ほど持ってきたスプレーを吹きかけた。
袋はみるみるうちに凍っていく。
「凍った…」
緑は思わず声を漏らす。
「っと。これをセットして」
美ノ上は緑たちに離れるように指示して発射させた。
目に見えなほど速く打ち上がった凍った袋は月に届いたかどうかする分からなかった。
「後は夜になって月を見るだけです」
それだけ言うと美ノ上はその場から立ち去った。
その夜の月はまだ少し赤かったが2年まえまでの通常の月に戻っているように見えた。
「なんか新鮮だ」
見慣れていたはずの月を新鮮に感じつつ緑は笑みをこぼした。
後から知った話だが、美ノ上の死んだ仲間は彼自身の恋人だったらしい。
緑たちに話したことと少し異なり美ノ上自身がこの計画を始めたが彼女が病にかかり死に際に「もう人を傷つけるのはやめて」と言われたことがやめたことの原因らしい。
自分の愛する人を幸せにさせたくてとった行動が愛する人を殺すことに繋がるとは思ってもみなかっただろう。
美ノ上は月が元の色に戻り出したのを確認してから警察に自首したそうだ。
月を赤くした原因の熱運動を起こすために美ノ上は月を元の色に戻す為にとったのと同じ方法でラジタロスという美ノ上が作り上げたカドミウム活性剤を打ち上げたそうだ。
「緑ー!」
元気な声で緑を呼ぶ声が聞こえる。
恋先輩だ。
「恋先輩!」
「もぅ! 恋でいいってば!」
緑と恋先輩はこの事件で同じ研究室に居たことから仲良くなり今付き合い始めたのだ。
一方、潤の方は堂上先輩とメル友ぐらいには進展したらしい。
その後研究室は解散になり皆それぞれの道をあゆみ出した。
「ねぇ、緑…。またディゾニーシー行かない?」
「ああ、そうだな! 次の休みにでも行くか!」




