明かされた真実
美ノ上の失踪からもう4日が経った。
現在分かったことは美ノ上が残したカドミウムは普通のカドミウムでなく、発火効果が極めて高められた特殊なカドミウムだということだ。
更に室長いわく、美ノ上は月下の盗賊団と謳われたかつての有名な犯罪者たちらしい。
月下の盗賊団は2年前まで刑務所に捕まっており、捕まえる時に月を盗むと言っていたそうだ。
そして今、緑たちはカドミウムを中和する新たな薬品を作っているところだった。
「はぁー、できんぞー」
疲れきった顔で体を伸ばしながら言う恋先輩。
それに同調するかのように皆伸びをする。
それもその筈。3日連続で同じ作業をロボットのように繰り返しているからだ。
「コーヒーです」
こちらの面に関してはあまり得意でない緑は1人1人にコーヒーを淹れ配る。
「ありがと!」
待ってましたと言わんばかりにごくごくと飲む。
「室長…」
声を掛けようと近寄る緑。しかし、今までに見たことない迫力に恐れを負いそっとコーヒーを置こうとしたその瞬間。
「きたっ!!」
叫び声が響いた。それに驚いた緑はコーヒーを自分の手に少しこぼした。
「あっちぃ!」
「おぉー、すまんすまん」
「だ、大丈夫ですよ」
苦笑しながら「何が来たのですか?」と緑は訊いた。
「中和剤ができたのだ! 名付けてカドミン剤!」
勝手に名付ける室長に目を点にする。
それを察したのかオホン、と咳払いをしてから続けた。
「これはあのカドミウムが熱運動しているのを抑えることができるものじゃ!」
自信満々に言う室長。
「これから…」
そこまで言うと突如拍手する音が聞こえた。
「お見事だ。流石です」
緑と恋先輩は顔色を一気に悪くする。
それもその筈、その声の正体が美ノ上だったからだ。
「美ノ上! 何しにきたんですか?」
緑は叫んだ。それにより美ノ上とわかった仲間たちも顔色を失う。
「何も。お礼を言いに来ただけですよ」
その目には涙が浮かんでいた。
「私は元々月下の盗賊団のリーダーでした。月の核に存在すると言われている伝説のお宝"ミリタリウム"を得るために月を自分たちのものにしようとしました。
正直、昨日まではあなたたちの存在を鬱陶しいとしか思っていませんでした。
しかし、仲間の1人が病で死にました。私はそれを見てこの計画をやめようと思いました。
ですが、それを思ったのが昨日。もう私にできることはもう無い。従ってあなたたちに止めて貰おうと思ったのです」
「ここまでしたのに随分呆気ないんじゃな」
「そうですね…。元々これは私の意志ではなく死んだ仲間の勝手な行動から始まった事なので」
「こんなこと言うのもおかしいが仲間の意志は継がなくてよいのか?」
「あいつが『こんなことはもうやめよう。私たちは3年前、捕まった時にやめるべきだったんだ』と告げていたのでこれがあいつの意志だと思います」
室長の質問に涙を浮かべ答える美ノ上。
「先生、もしぼくたちが止められてなかったらどうするつもりだったのですか?」
「そうですね。最終手段をとってました」
「最終手段?」
美ノ上から思いがけない言葉が出て緑は聞き返した。
「はい。念の為にと仲間たちで作った爆弾を打ち上げ月を壊すつもりでした」
「なんと!」
あまりのことに室長は言葉を失った。
「では急ぎましょう。もう時間が無いのです」
「何の時間じゃ?」
「この月の光は通常の太陽の光と異なりオゾン層を破壊します。あと少しでオゾン層の崩壊が始まります」
次々と明かされる衝撃的な事実に冷静を保つことさえ難しくなってくる。
「しかし、これを月まで届かせるものが…」
室長はうろたえる。
「大丈夫です。ついてきて下さい。私たちが爆弾を打ち上げるのに作った発射装置がありますので」
美ノ上は研究室の者たちを連れ街外れの工場に入った。




