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幽霊とハンカチ

作者: あめく

 二月の朝はとても肌寒く、あちこちで霜柱がぱりぱりと音を立てている。

 葉の表面に浮いた朝露の玉がひとつ、地面に零れ落ちた。

 かしゃん、と閉鎖された校門を足をかけるひとりの人物。

 慣れた動きで彼――松野景之は校門を乗り越えて、校内へと足を踏み入れた。

 顔をあげて、校舎の時計を見やる。

 時刻は朝六時。

 明け方の身を切るような寒さに、白い吐息を弾ませる。

 教師や生徒たちが来るまで、あと一時間。

 それまでにどうか見つかってほしい。

 そんな願いを込めて、彼は今日も早朝の校舎へ潜り込んでいく。

 探し物を求めて。



 ○○○



 景之は足を忍ばせて、静まり返った冷たい廊下を歩いていく。

 太陽が昇る前の光は青く、少し靄がかっているように思えた。世界が狭まったような暗さは、なんとなく雨が降り出しそうな曇り空じみた薄暗さにも似ている。

 教室の扉をそろりと開けて、中を探索し、扉を閉める。

 また別の教室へ入って……結局探し物は見つからず、再び扉を閉める。閉める。閉めていく。

 校舎の一階、長らく同じような行為を繰り返して一年生の教室を探し終わった後、三階の三年教室が並ぶ廊下へ向かう。

 明かりを灯した電灯が、階段に蔓延る闇を隅っこへと追いやっていく。

 じじじ……と電灯が鳴った。


 ――今日も見つからないのかな。


 階段を登りきり、手前の教室の扉へ手をかけた瞬間だった。

 すぅっと、視界の隅で人が通った気配がする。

 見やった先は、ただ薄暗闇な廊下がしんと広がっていた。

 廊下の奥がひどく気になる。

 確かに誰かが通った気配がしたのだ。――今の時刻、人はいないはずなのに。

 教室内に目をやって、時計を確認する。

 針は六時十五分を指していた。



 ○○○



 彼がハンカチを失くしたのは、もう随分前のことになる。

 入学祝いにと母が買ってくれた青いハンカチが嬉しくて、何かあれば必ず青いハンカチを使っていた。

 一年の時も、二年の時も。

 そんな大事なハンカチを失くすなんて、失態にも程がある。

 家は貧乏で、制服と教科書一式揃えるだけでも苦労したのに。

 高校入学式、仕事で疲れ切った母が微笑んだ表情を思い出すだけで胸が詰まる。決して安物のハンカチじゃなかった。三年間、ずっと使えるようにとブランド物のハンカチを買ってくれた。だというのに……。


 ――探し出さないと。


 彼が幼い頃、母方祖母の屋敷で母がひとり泣いていた。しんしんと雪が降りしきる中、うえっ、うえっ、うえっ、と母は泣き続ける。冬の肌を切るような寒さは幼い景之を宥めることも詰ることもせず、静かに肌を焦がしていく。

 父が亡くなった、二月の大雪。

 母が働きに出始めた、冬の日。

 そんな母が彼の為にと買ってくれたハンカチ。

 今日も彼は、学校を歩く。

 隈なく、延々と。

 生徒が来る前に。

 ハンカチを取り戻す為に。



 ○○○



「――何してるの?」


 とある二階の教室。

 景之がひとつの机を覗いた時、そんな甲高い声が聞こえた。

 はっ、と意識が戻されて、反射的に顔をあげる。

 視線をあげると、教室の出入り口にひとりの女生徒が立っていた。彼女は首を傾げて、長い髪を横に流している。

 時計を見やる。

 時刻はまだ六時半。

 生徒が来るにはまだ早いのに、どうして人がいるのだ。

 呆けていた景之を見やったまま、彼女は当然のような足取りで近づいてくる。


「探し物?」


 彼女は何故か、屈託ない笑顔で話しかけてきた。

 ようやく見つけた、とでも言うように。

 おそらく制服からしてこの学校の生徒には違いないのだが、景之はどこか妙な雰囲気を感じ取っていた。

 先ほどの廊下で感じた気配は、彼女のものだったのだろうか。

 ……わからない。

 少女は嬉しそうな笑みを絶やさず、自己紹介をした。


「私、宮木彩音。あなたは?」


 思わぬ展開に、彼はたどたどしく答えてしまった。

 言った後で迂闊だったかと考えるも、その判断は少し遅い。


「……松野景之」

「朝早いね?」


 彼女は縋るように質問してくる。

 景之は彼女のような風貌も、人柄も苦手だった。

 誰彼構わず首を突っ込んでかき回す。周囲の人の目を気にしない性質は、それだけで厄介だ。

 なるべく彼女の存在を意識しないように、彼は捜索を再開させる。 


「今、忙しいから」


 突っぱねた言い方をしても、彼女――宮木彩音に意味はないようだ。

 景之がいくら顔をしかめても、彼女は自分がどう対応されているかわかっていない様子で、友好的な笑みを浮かべている。

 それは白痴にも似た笑顔。

 見知らぬ人に矢継ぎ早に質問するなんて失礼だと思うし、それすらも考えず、また気にもせずに喋り続ける彼女が、なんだか不気味に感じられた。

 まるで凄まじい台風が来る直前の、異様な静けさと先触れを思わせる風のような……。

 彼女を無碍にするのが怖くなったのか、それとも気を許してしまったのか。

 どちらかは知れないが、景之は徐々に彼女の質問に答え始めていた。


「ねえ、いいじゃん。どこのクラスか教えてくれても」 

「……三年五組」

「そうなんだ。探し物でもしてたの? さっき答えてくれなかったよね?」

「ハンカチ探していたんだ。失くしたから」

「へえ」


 彼女は一度考え込んで、口にした。


「私も探していたんだ。ハンカチじゃないけど」

「……?」

「だから、一緒に探してあげるよ。ハンカチ」

「え、いいよ別に……」

「どうして? 私も探しながらあなたの探し物を手伝う。一石二鳥って言うのかな。そうだと思わない?」


 いくら断ろうが、彼女はどこまでも彼の背後にぴったりとくっついてきた。

 一年の教室、職員室、購買部、販売機前、渡り廊下。

 どこまでもどこまでも、彩音はご機嫌な様子で景之の後ろにいる。それは本当、幽霊のように。

 景之が教壇の後ろを調べれば、彼女はゴミ箱を覗いて。

 景之がベランダに顔を出せば、彼女は黒板のチョーク入れを開けた。

 ついてくるなとも真似するなとも言えず、景之は彼女はいない者として扱った。別に彼女に好意を抱いたわけじゃあない。下手に断って騒がれても迷惑だ。おとなしく探してくれるのなら、放っておいても問題ないだろう。そう判断したまでだった。

 ふたりは黙々と捜索を続ける。

 ――と。


「ねえ、知ってる?」


 しんとした廊下に、彼女の小さな声が響いていく。

 見やれば、どこか憂う表情で彼女はグラウンドに視線を送っていた。景之は窓際に立ち尽くす彼女にどんな声をかければいいか迷っていた。知り合ったばかりの人間だ。何を口にしていいのかもわからない。

 ――彼女はつぅっと白く細長い人差し指をグラウンドへ向けた。

 その先に、一本の老樹が立っている。

 冬に葉を剥かれてしまった、寂しい巨木だ。


「あそこの樹にね、昔人が首を吊ったんだって。女生徒だか、男生徒が。とても朝早くにね、誰もいない学校で静かに。苛めだよ。原因は苛め。誰も助けてくれなかったんだって。教師も、友達も」


 気怠い時間に彼女の唄うような声が染み込んでいく。

 それはどことなく優雅で、なんとなく恐ろしかった。

 悲しげに微笑む顔は、何を考えているんだろう。

 その視線に気づいたのか。彼女は切り替えるように景之の横を過ぎて、優しく言った。


「たまに、出るんだって。……その亡くなった子がさ」


 背筋がぞくりと粟立ち、静寂が張り詰めていく。

 冷たい静謐を一通り味わった後、ぷっ、と彼女が含み笑いをした。


「そんな本気にしないで。ほら、探そう。人が来たら探しにくいよ」


 大きく息を吐く。

 景之は文句を言う気力もなく、彩音に引かれる形で様々な教室を覗いていった。

 理科室、音楽室、体育館、使われていない宿直室に、屋上。


 時刻は六時五十分だろうか。

 生徒たちが来るまで、残り十分。

 遠くの街並みは命が吹き込まれたように喧騒めいていて、薄靄じみた青さは遠く、朝焼けに追いやられていく。

 徐々に日が昇る。

 彼女はぬるんだ風に長い髪を乗せて、フェンスに全体重を押し付けて嘆息した。


 彩音は何を探しているんだろう。


 つと、そんな疑問が浮かんでくる。

 それを口にしようと思ったのだが、ふいに彼女の視線がゆるりと彼を射抜いた。景之はその目にたじろいでしまう。結局、彼は最後までその疑問を口にすることは出来なかった。 


「見つからないねえ。ハンカチ」

「うん」

「他に探してないところある?」

「……わからない」


 彼女は少しだけ首を傾げて、

 その動作に、少しだけ嫌な予感がした。


「ねえ、私ひとつだけ探してない場所に心当たりあるんだ」

「どこ?」

「あそこ」


 彼女はフェンスの向こう、遠くの老樹を指した。

 確かに、校舎をいくら探し回ってもハンカチは見つからなかったのだ。

 もう辺鄙な場所を探す以外にないだろう。

 少女は上目使いに彼を見上げる。それは遊び熟れていそうな口ぶりで、警戒するべき危うい色をしている。


「行ってみない?」

「……行きたくないんだけど」

「なんで?」

「人が吊ったんだろ? 怖いよ」


 その回答が意外だったのか。

 彼女はいくらか目を瞬かせた後に、可笑しそうに目を細めた。


「大丈夫だよ。私がいるから。ねえ、行こう?」


 彼女の艶めいた声が彼の背を強く急かす。いくら拒否しても無駄だろう。やり取りを続ける気が起きなかった。

 それは本当に、どうしようもなく。

 彼女の声に抗えない。――そんな感じだ。

 たった三十分程度しかいないが、彼女の性格はもうなんとなしに把握していた。

 ああ、もう朝が近づいてくる。



 ○○○



 西日にも似た陽光がグラウンドを照りつけて、ささやかな風が砂埃を淡く舞わす。

 景之と彩音は椅子に揺られる老婆じみた巨木の下にいた。

 この巨木はどのような時間を送ってきたのだろう。

 景之はその樹のそばにいるだけで、妙な感覚に囚われてしまっていた。

 それは熱に浮かされたような、酩酊にも似た感覚。


「大きいね」

「……うん」


 彩音の声に、曖昧な生返事をするしかなかった。

 気ぜわしい朝の音が、遠くから迫る。


「さぁ、探してみよっか」

「……ごめん」


 景之は謝罪してしまう。

 どうしても体が鈍っていた。彼はその場に蹲ってしまう。

 下腹部から首筋にかけて、湯の中に冷えた水を流し込んだような嫌な怖気が巡っている。

 脳が現実の時間とダブるように揺らいでいて、気色悪い。


「ちょっと気分悪い」

「大丈夫?」

「……」


 答える気力すらなく、彼女の「……じゃあ、私が探してあげるね」の言葉にも返事が出来なくてなっていた。

 背後に、冷たい気配の塊が浮き彫りになっていく。

 それは振り返って見てしまってはいけないような――存在だ。

 見ればきっと後悔する。

 振り返っちゃいけない、と心が叫ぶ。

 

 ○○○


 焼けるような痛みが、彼の体を覆っていく。

 朦朧とする意識を、やけに冷えた闇が呑み込んでいく。

 憎悪と痛み。

 悲しみと絶望。

 呪いが彼の身を焦がして――。


 ○○○


「ねえ、これ」


 世界が暗闇に閉ざされる直前、一筋の光が差し込んだような、そんな温かい声に引き上げられる。

 眩しくて目を開けられないが、彼はどうにか顔をあげた。

 呆然とする彼に、心配そうに眉をひそめた彩音が手を差し伸べる。

 その彼女の小さな手には、泥やかびで汚れきった布があった。


「……すっごい汚れているけど、どうかな」


 彼女は自分の手が汚れるのも厭わず、親指を擦らせて汚れを拭い去っていく。

 泥や砂が払われた先に、見覚えのあるブランド名の一部が覗いた。


「ああ……」


 彼は懇願するように両手を伸ばして、彼女の手を覆うように優しく重ねる。

 その両手にハンカチを渡して、彩音はゆっくりと手を離した。

 景之の頬にいくつもの涙が零れ落ちていく。

 自分の中の悪鬼が猛り狂うまま、世界を呪った。

 どうして自分がこんな目に遭わなくてはいけないのだと啼いた。

 耐えがたいまでの屈辱。

 濃縮された憎悪は発散されず、内側にこびりついて己を浸食していった。 


「母さん」


 ぽつり、と呟く。


「ごめん。俺、本当にごめん。俺、馬鹿だったよ。ごめんよ、母さん。ひとりにしちゃった」


 火薬が弾けたような学校の鐘が鳴り響く。

 頭上へ降り注ぐ音に横目を向かせて、彩音は震える彼の背に目を落とした。

 彼の姿は、どこにもなかった。

 いくら見渡しても、グラウンドに男子生徒の姿はない。

 時刻は七時。

 遠くから、生徒たちの明るいざわめきが、徐々に世界を覆っていった。


 ○○○


「おい、三年五組の委員長は誰だ?」


 男女賑わう昼休み。

 騒がしい教室に顔を覗かせる数学教師の言葉に、はい、と彩音は声をあげた。


「彩音か。すまんがちょっと手伝って欲しいことがあるんだが」

「あぁ、ごめんなさい。ちょっと他の用事があって、今は……」


 申し訳なさそうに顔を伏せると、数学教師は数瞬だけ困ったような表情をしたが、すぐに別の生徒に声かけをし始めた。

 それを確認して、彼女は廊下は足を向ける。

 彼女は今、探し物をしていた。――正確には探し人、だが。

 松野景之。

 彼女の在籍するクラスに、もちろん松野景之なんて人物はいない。それどころか、全校生徒の名簿を確認したが苗字すら同じ人はいなかった。

 どうしたもんか、と彼女は胸中で愚痴りながら思考を巡らせる。


「部長」


 聞き覚えのある声を背中に投げられて、彼女はあちゃあと顔をしかめた。

 オカルト同好会の後輩、春原夏之が駆けてきた。

 移動教室中だったのだろう。教科書を片手に持った彼は、いつものように顔をしかめたままこちらを睨みやっている。

 厄介な奴に捕まってしまった。


「何してるんですか。またひとりで廃墟とか行こうなんて考えているんじゃないんでしょうね」

「してないよ」


 否定するも彼は聞く耳を持たない。

 それもそうだ。以前、近所の廃墟の写真を自慢したら彼は激怒したのだ。写真に刻まれた時刻が丑三つ時だったのがバレたせいもあるのだが。

 夏之は強い口調で疑いの目を向けてくる。

 

「本当ですか?」

「本当。第一、今はそんなこと考えてないし」

「でもオカルトなことしようって考えているでしょ?」


 それは図星だった。

 うぐ、と呻くと彼は肩を落とす。


「幽霊なんていないんですから、そういうのやめましょうって」

「もー、本当オカンなんだから。それより、人を呼び止めたんだから何か用でもあったんじゃないの?」


 無理やり言葉をはぐらかす。

 彼は何故か言葉を窮してしまったので、彩音は用がないのならと踵を返そうとした。


「用がないなら行くからね」

「あ、えっと」


 夏之はあぐねいて、どうにか言葉を吐き出す。


「あ、そうだ。あれですよ、ちょっと歴史の勉強したかったんですけど、先輩得意じゃないですか、歴史。それを習いたくって」


 不審な目を向ける。

 彼の顔は真っ赤になっていた。そして、どもり気味に彼は継げる。


「い、い、一緒に図書館行きませんか? ほ、ほうか、放課後とか」


 図書館。


「そうか、図書館」


 彼女は目を見開いて、小声でそう叫んだ。

 そんな彩音に、夏之は顔を赤くしたまま首を傾げる。


「いいね。一緒に行こう」


 彩音は飛びつかんばかりに夏之の手を強く握りしめた。

 彼は驚いて、片手に持っていた教科書を落としてしまう。半ば興奮状態になって「図書館に行こう」と繰り返す彩音に、夏之は強く首を縦に振った。


「は、はい」

「よし、今行くよ!」

「え!?」


 驚愕の声をあげる夏之の言葉は耳に入らぬまま、彼の手を引っ張って図書館へと駆け出す。

 胸の底から湧き上がる衝動に突き動かされるまま、彼女は図書館の扉を開いたのだった。


 ○○○


「先輩、いつまで見てるんですか」


 頭に響く静けさの中、夏之は慣れた先輩の背後を半眼で見やる。


「もう少し」


 綺麗な花が開くように、円形に広がるスカート。

 誰も訪れぬ図書館の片隅。冷えた地べたに正座した姿で、彼女は大きなハードカバーの本を開いていく。これで何十冊目なのだろう。彼女の周囲には、似たような形の本が多く積み重ねられていた。

 本に抱かれる少女。

 その表紙には『○○年度集合写真』と書かれている。

 どれほど過去を遡っただろう。

 ちょうど十年と少しだろうか。

 折れそうなほど細く、雪じみた白さの指が文字を読み込むように本をなぞって――とある位置でピタリと止まった。


「……見つけた」

「見つけた?」


 彼女の背後から覗き込む形で、夏之は見やる。

 その指先には、ひとりの真面目そうな男子生徒が映っていた。わりとふざけたポーズで映っているクラスメイトに紛れて、じっと真剣な表情でカメラを見やっている。

 その名前は――。

 確認しようとしたところで、ぱたん、と彩音は本を閉じてしまった。

 何か言おうとするけれど、それを遮るように彼女は鮮やかに微笑んだ。


「ね、お礼に何か飲み物奢ってあげる。何がいい?」


 悪戯っぽい笑顔に、夏之は頷くしか出来ない。

 彼女は今年で卒業だ。それを想うと寂しく感じるし、抱きしめたくなる悪い衝動に駆られてしまう。今、この時間がそのまま止まってくれないかと無様な考えまで思いつくようになった。

 彼はこんな風に笑ってくれる彼女に、心底惚れていた。


「先輩が好きなのなら、何でもいいですよ。もう」


 悟られないように肩をすくめる。

 恋愛に疎い彼女は彼の行為や意図に気付かず、自分で決めなさいよ、と言いながら散らかった本を片づけ始めた。その横顔は、いつもよりも少し綺麗に思えた。

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