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噂話と自習

 昼前の授業として選択していたのは技術学科。


 かなりのところ他の学科にも併設されている講義で受講者は偏る。

 それぞれの学科でやっていくための下準備としての総合基礎技術講座と特に講座のない技術に対しての自主鍛錬を目的とした生徒のための講座だ。

 後者に関してはもらえる単位はほぼないに等しい。

 他の専攻学科で成果を示して単位をもらえ方針だ。




 のんびり机に腰掛けて木工をいじる少年。


 俺が教室に入ると顔を上げて明るく笑う。


「やっほ-。今日は一作品仕上げろってさー。で、自主作成時間だって」


 シルフィア・ファーティア。

 愛称をシーファ。本名で呼ぶと怒る。

 弟がいてそっちはシルフィール・フィーデン

 兄はリズベル・リーウェン


 三姉妹でなく、三兄弟らしい。

 名前の響きだけなら三姉妹だ。

「さっきは大変だったみたいだねー」

 からかい、人の悪いにまにま笑い。




 特にひどい怪我人が出ることなく終わった冒険学科の格闘採集講義。

 医療学科や、魔法学科の回復魔法取得者が怪我人を治していた。

 その治療能力で間に合わない怪我人は出なかった。



 リーネが不意におとなしく戦線離脱し、さぁ、ミズノリエが大型魔法を放つかという瞬間にのんびり現れた人物。

 のんきに

「ミリー、参考資料当たってたらミリーの論文だったから聞きたいことがあるんだけど」

 そう言ってやってきた男。

 俺の寮の同じフロア、今朝の朝飯の提供者。



 リューイ・グラント。



「取り込み中ならあとでいいけど?」

「ん。時間なら取れる。どの論文についてかしら?」

 即座に大型魔法を中断沈静化し、穏やかな対話モードに移行するミズノリエ。


 ミリーとはごく親しいものにだけ許されるミズノリエの愛称だ。


 そっと微笑みながら必要な論文のタイトルを告げるリューイ・グラントの左腕に絡められた手はそっと半歩後ろに立つリーネ。

 そして外野は余計なコメントは控える。

 本命の男の前でしおらしく振舞う女が二人。



「お前らさっきまで暴れてたろう」そんな想いが周囲を支配している空気がひしひし。




 というか、女二人の本気の前に俺に対するように野次れないし揶揄することができないのだろう。

 やったが最後、後で死ぬよりひどい目に合わされるのは必須だろう。


 ただ、あれこそ妬んで正解だとは思うんだけどね!



「まぁ。モテる男も大変なんだろうさ」

 最近、研磨にはまっている俺は青い石を削っては水洗いと風の魔法による研磨を繰り返す。

 大変というが、今回冒険学科の単位をしっかり確保しているあたり作為を感じなくもない。

「乱暴女系二人はきついだろうなー。それとも逃げ切るかな?」

 シーファの言葉に考える。キツイだろうけど、御しそうではあるな。



 先にリーネを嫁にして二番目の嫁にミズノリエってとこかな。

 他に候補はいたとしてもあの二人が認めるとは思えないしな。



 古い布で作品を光沢が出るまで磨き上げるシーファ。

 噂にしつつ、妬む色はない。

「将来の嫁はアレがいいなって言う奴はいるからさー」

 妬くとかってないと笑う。





 つーか俺が妬くわ!







 磨きこみ、光にかざしながら話をふってくるシーファ。


「黒狼のさー」

 ん?


「彼女、話聞いてる?」



 んー?

「システィナ。だったか?」

 なかなかの美人さんだったと記憶している。


「ううん。もう別れたって」


 あっさり首を振るシーファ。


「またかよ! つい最近付き合い始めた感があったのにな」


「三ヶ月だからもった方じゃない?」

 黒狼ことクロード・ロウェン。あいつは涼しげで穏やかな印象を与える人柄で異性同性区別なくモテる。


 そしてお付き合いをするがあまりもたない。

 なぜか振られるのだ。

 決まって言われるのが「本気じゃないんでしょう」「何もしてくれない」らしい。

 ちょっと哀れだ。


 いつもなら別れてすぐに恋人を作るような事はないんだが、こいつの言い方からしてもう次の恋人がいるんだろう。




 どうしてこう、羨ましい奴らばっかりなんだ!





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