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ボーイミーツガール

草原から町までの距離は千里眼のスキルから大体5kmぐらいだと思う。

前の世界では部屋から出ることもあまりなかった俺だが、なぜか今は体が軽い。

これは旅人スキルのおかげなのか、それとも年齢が若返ったことによる影響なのか。

どちらにしてもこの体の敏捷さは、久々に心が躍る。


しばらく歩いていると草原から人の手によって整備された畦道に出た。

ここからまっすぐ歩いていけば町に到着するだろう。


一本道の横側には木々が生い茂っていて、まだ日が高いというのに暗闇で奥まで見えない。


「うえ、何か出そうな雰囲気じゃないか」

カオスの柄を力強く握りしめながら歩く。


まるで化け物が獲物を待ち受けるような寒々とした雰囲気の中歩いていると、

何かが木々の奥の方からガサガサと音を立てながら俺の方へ向ってくる。


「マジで?怖い怖い怖い・・・」

ガクガクと震える手足を抑えながら、カオスを鞘から抜いて音のする方へ向ける。

こんな短剣で戦えるのか。

何かと戦うなんて小学校でケンカした以来だ。

胸の鼓動が止まらない。


バサッと音を立てて黒い影が畦道に現れた。

ビクビクと震えながら、俺はその物体を注視した。


「ん・・・女か?」

ぼろい布切れに身を覆っていたが、はちきれんばかりの胸が女であることを強調していた。

女だったことにフッと息を吐き、冷静に女を確認する。

女は息も絶え絶えに俺の姿を確認すると必死に叫んできた。

「た、助けてください!!」

すがるような目をしながら、俺のもとに駆け寄ってくる。

駆け寄ってくるというか、揺れてる揺れてる!

大きなメロン二つが俺に助けてくれと近寄ってくる。


「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ。何から助けを・・・」

ガサガサガサ、と女が出てきた後から一人の人間と一体の全身毛だらけの大男が飛び出してきた。


「おいおい、姉ちゃん、逃げられると思ってんのかよ」

「なんだその男は、助けを求めても無駄ですよ。お前は奴隷商人の私に売りに出された女なんだからな」


そういうことか。

この女はこの奴隷商人から逃げ出してきたわけか。



カオスを追手二人に向けて、相手の様子を窺う。

あれは獣人だろうか。2Mはあるであろう体躯に長剣を扱うようだ。

奴隷商人と思われる人間はメタボリックな体で、舐めまわすように女を見ている。

体からアドレナリンが溢れ出ているのか、先ほどまで震えていた手足はしっかりと相手を見据えられるほどしっかり地についているようだ。


「あ、あの。私も戦います」

後ろで震えていた彼女も意を決したのか、横に立とうとしている。

「いや、あなたは後ろで下がっていてください。大丈夫、なんか負けるきがしないし」


カオスを持った手が相手を値踏みするように動く。

「あははは、馬鹿な人間だな。お前みたいなどこぞと知れん旅人風情が獣人に勝てるわけないだろ!その細っちい体をへし折ってやれ!」

相手の恫喝にも冷静に相手の動きが目に入ってくる。


奴隷商人に命令を受けた獣人は敵意をむき出しにして、力任せな上段の構えから突っ込んでくる。

まるでダンプカーが突っ込んでくるような重量感である。

全身が筋肉の塊であるかのようなそれは、わき目も振らず俺に突っ込んでくる。

「ぎゃははは、死ねえ!」

鋼の筋肉をギリギリまで引き延ばして斬るというよりも叩きつけるように長刀を振りおろした。


俺はその様子さえ冷静に観察することができた。

なぜか相手のプレッシャーを感じることがなく、まるでカオスに操られるように手が、体が勝手に動いていた。

獣人が振りおろした長剣をひらりとかわしながら、横からすくい上げるように相手のわき腹にカオスで切り上げる。

カオスが相手の体に食い込んだ瞬間にドンっと獣人は数M後方に吹き飛んでいく。

わき腹が胸あたりにかけてが削り取られた獣人は息も絶え絶えに息をしているようだ。

「ば、ばかな。人間如きの力で獣人の強靭な体を吹っ飛ばすとは・・・」


獣人を吹っ飛ばした瞬間にわずかだが重みを感じたものの、そこまで力を入れずに獣人をなぎ倒せていた。

今のは自分が動いたというよりも武器が勝手に動いたと表現した方がいいのだろうか。

カオスの動きに翻弄されたのはむしろ俺自身と言っていい。

これがカオスの力なのか?

だとしたらこの武器チートすぎるだろ。これでLV1なのか。

自分の手に持つ武器を見ながら、あまりの強力さに笑みさえこぼれる。


「す、すご過ぎます。一体あなた様は・・・」

後ろのデカメロンちゃんもなんか頼りになりますみたいな空気出しているし。


「くそ、何なんだよお前は!こうなったら・・・あいつを呼び出すしかないな」

奴隷商人が懐から宝石のような石を取り出して、何か念じているようだ。


「ま、まさか。いけない。お逃げ下さい。ここから離れないと・・・」

「え?何?どうしたの?」

デカメロンちゃんは何か怯えたように奴隷商人を見ている。

「あの商人が持っているのは魔石です。あれには強力な召喚獣が封じ込められていて、私の村もあの召喚獣に焼き払われました」


「ぎゃはははは。もう遅いわ。お前の村を焼いたようにそこの男も焼き払ってくれるわ。お前はその後にゆっくりと可愛がってやるわ。安心しろ、もう逃げられないように薬漬けにして快楽から逃れられないようにしてやるからな」

奴隷商人の目が女の体を舐めまわすように視姦しながら、魔石から召喚獣を解き放った。

「出でよ、ファイアバード!」

魔石から強力な熱量が発せられ、奴隷商人の前に炎に包まれた大型の鳥が出現した。


「くそ、そんなことが!?」

「今からでも遅くないです。あなただけでもお逃げください」

俺が驚愕の言葉を発したことでデカメロンちゃんが悲痛の面持ちで俺に嘆願してくる。

「こんなデカメロン、もとい女の子を快楽の海に沈めるなんて。そんなことが許されていいのか。俺もその海に一緒に沈みたい」

「え?いや、そんなことを言っている場合じゃなくて、目の前の召喚獣に焼き殺されちゃいますって」

冷静さを失っているのか、デカメロンちゃんは俺に素でツッコミを入れていた。


「あ、ああ。あの火の鳥?多分、大丈夫でしょ」

「え?何を、ちょっと!?」

俺は目の前の火の鳥に向かって、というよりもあの不届きものの奴隷商人に向かって走り出していた。


「ぎゃはははは。馬鹿な奴め。そのまま黒こげになってしまえ!」

火の鳥は向かってくる俺に対して炎を吐きつけた。現代で言うところの火炎放射みたいだ。

俺はその火炎放射を真正面から浴びる形となった。


「ぎゃはははは。馬鹿め馬鹿め。真っ黒焦げだ。人間が召喚獣に叶うわけがなかろう。手間はかかったがこれで女が手に入る。もう逃げる気がおきんようにしっかりと調教してやるわ。ぎゃははは」

「誰が真っ黒焦げだって?」

「ぎゃ・・は?」

炎から抜け出した俺はそのまま一直線に火の鳥の眉間にカオスを突き立てた。

火の鳥は音もなく消滅し、魔石はパリンと音を立てて砕け散った。

「は?え?なぜ、なぜだ!?なぜ生きている?」

「それはな」

「それは?」

「お前がデカメロンちゃんを泣かせるからだよ!」

どっかのヒーローが口走る歯が浮くようなセリフを吐きながら、俺は奴隷商人に一発ボディブローをかましていた。

「ぐ、ぐえ・・・」

奴隷商人は、くの字に体を曲げて崩れ落ちた。



「ふう、怪我なかったか?」

「はい、私はどこも・・・あの、ありがとうございました。なんてお礼を申し上げたらいいか」

「いやいや、お礼なんて・・・」

一夜で十分ですよ。なんて口には出せません。それが魔法使いの礼儀です。だが、目は揺れる二つのメロンに釘付けである。け、けしからん。


「俺はロック。君は?」

「あ。私はマリンと申します」

「マリンね。よろしく。で、こうなった訳を聞いてもいいかな?」

「はい。実は・・・」


マリンの話によると、マリンはここから10kmほど離れた小さな寒村に住んでいたそうだ。

その村で平凡に暮らしていたが、あるときに奴隷商人なるあの男がやってきて、召喚獣で村を焼き払ったそうだ。

大の男たちは全員獣人に敵わず、また召喚獣で何もかもが焼かれてしまったとのことだ。

男は全員殺され、残った女子供は奴隷とされてしまったようだ。

みんな別の町で売られてしまったようだが、なぜかマリンだけは奴隷商人に目をつけられて売られずにいたようだ。

ま、それはわかる。なんせ、けしからんモノを持っているからな。俺でもそうする。


「そうか、一つ質問していいか?」

「はい、どうぞ」

「奴隷にされるって何か制約があるのか?」

「はい、奴隷商人によって奴隷にされた者は奴隷のジョブに落とされてしまうのです」

「奴隷のジョブねえ。ちょっとキャラカード見せてもらってもいい?」


キャラ名:マリン

性別:女性

年齢:20

ジョブ1:奴隷(所有者:マッジオ)


スキル一覧

絶対服従:所有者の命令に服従するパッシブスキル。このスキルから逃れようとするとグラビデの制裁が加わる。


「グラビデの制裁って・・・今、体が重いとかあるの?」

「はい、逃げている途中から体が重くなって逃げられないのかと、覚悟していましたが・・・」

「そうか・・・おい、そこの奴隷商人」

「・・・」

俺が奴隷商人のところまで歩いて行くと、先ほどまで顔を伏せていた奴隷商人は苦虫を噛んだような表情で顔を上げた。

「この奴隷ジョブは解除できるのか?」

「一度奴隷ジョブに陥ったものは二度と解除できんわ」


そうなのか?とマリンの顔を確認すると泣いたような顔でコクっと顔を縦に振った。

「はあ・・・そうか。じゃあ所有者の変更は可能なのか?」

奴隷商人はビクッと体を震わせると青筋を立てながら答えた。

「可能だが?」

「じゃあ、マリンの所有者を俺に変更しろ」

「馬鹿か?するわけないだろ」

「じゃあお前はここで死んでもかまわんということか」

俺の言葉にニヤッと悪そうな顔をした奴隷商人は勝利を確信した顔で俺に罵声を放った。

「ぎゃははは、そうか、お前は知らんのか。奴隷はな、所有者が死ぬと道連れになって死ぬんだよ。お前はあの女を助けたいようだが、残念だったな。それはできんのだよ!俺が所有者を変更しない限り、あの女は一生俺の奴隷だ。いや、これからは性奴隷だな。ぎひひひ」

奴隷商人はそのいやらしい顔で、マリンを舐るように覗き込んでいた。

「このクズが!!」

俺が思い切り殴りつけると奴隷商人はそのまま気絶してしまった。


「もういいんです。これ以上やるとあなた様の立場も悪くなってしまいます。どうか私を置いてこの場を去ってください」

マリンが今にも泣きそうな顔で、それでもなんとか笑顔で俺にお礼を伝えていた。

くそ、どうにかならないのか。


マリンの所有者を俺に変更しろよ!

俺は心の中で奴隷商人に対して叫んでいた。

「了解しました。マリンの所有者をマッジオからロックへ変更します。

主人との盟約を交わした者よ、新たな主人に盟約を交わしたまえ!」

俺の目の前で立ち上がった奴隷商人は、マリンに向かってスキルを発動した。

淡い光がマリンを包み込み、その光は俺に誓いを立てるかのように俺の手に吸収された。


奴隷商人はそのまま気を失い、その場に倒れこんだ。

「え?なんか身が軽くなりました」

マリンの言葉に気付いた俺は、もう一度マリンのキャラカードを見せてもらった。



キャラ名:マリン

性別:女性

年齢:20

ジョブ1:奴隷(所有者:ロック)



あ、所有者が俺になってる。

なんでだろ、なんで奴隷商人は所有者を変更なんて・・・

あ、思い出した。

スキル:服従の瞳

あれか?

でもスキル一覧にはなかったよな。

そう考えて自分のキャラカードのスキル一覧をもう一度確認する。


スキル一覧に新たなスキル:服従の瞳が追加されていた。

なぜだ、発動したタイミングで追加されるものなのか。

パッシブスキル以外はそういうものなのか。検証しないことにはわからんな。


「とりあえず、君の新しい所有者になったロックだ」

「なぜ変更する気になったかはわかりませんが、はい。よろしくお願いします。私はあなたにお仕えしますマリンと申します。これからよろしくお願いします、ご主人さま」

ぐは、こ、これはたまらん。

「も、もう一度呼んでくれ」

「はい。ご主人さま」

「も、もう一度」

「もう、そろそろ行きましょう。ご主人さま」

こ、これは辛抱たまらんな。


道端で失神している奴隷商人と息も絶え絶えになっている獣人を置いて、俺とマリンは町に向かって足早に出発することにした。


デカメロンて・・・


新しく仲間になったデカメロンことマリンちゃんです。

よろしくお願いします。

次回はエロ回ですかね?!

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