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  作者: @kumaba0201
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9/9

タイトル未定2026/07/17 11:01

2045年 

この年を話題に出せば多くの者は“シンギュラリティ”に至る年と口に出すだろう。

シンギュラリティとはAIが人間を越える特異点のことであり、2045年シンギュラリティ説はAIに関する言説で1番有名であり長年信じられてきた。だが実際は、生成AIを筆頭に驚異的な成長スピードを果たし、予想より18年早い2027年にAIはシンギュラリティに至るのであった。

通説の2045年説は数十年も早く打ち砕かれたが巷ではある噂が席巻を。

“2045年、第二のシンギュラリティが起こるのではないか”

風の噂であり根拠はどこにもなかったがどこか信じてしまいたくなるものであった。

起こるか、起こらないか、それは神のみぞ知る。

故に、2045年5月 

    世は第二シンギュラリティ考察時代である








平日の昼、青年は自室に1人でいた。

青年は椅子に座り、勉強机に肘をつけ、スマホを片手に、一考している。 


[大学生は人生の夏休みと言われているが理系はどうだろうか]


理系の道を選んだ人間なら一度は考える事だろう。だが、青年には少々センシティブな話題であった。

「あの時もっと頑張ってたら正解を知れたんだけどな。はぁ、別に学歴に拘らなくてもなんとかなるのに。全く、ニヒルって名前なのにニヒリズムを体現していない。」

青年の名は鶏鳴ニヒル。2027年生まれの18歳であり、シンギュラリティの年に生まれたキラキラネームの男である。彼のように2027年生まれはシンギュラリティ世代と呼ばれることがある。


ニヒルが生まれた2027年には最早大学受験の価値は大きく下がっている。無論AIの影響を受けている。だが上位校は2045年になった今もブランドが確立されている。質の高い友と出会える場な事もありなんとしても入れようとする家庭もあるのだが、受験生、浪人生共に数は減少しているのである。故に士業は減り一次産業や力仕事に就く人が増えた。体を使う職業はいまだ3割しかAIに占有されていない。その3割はフィジカルAIなのだが高機能なモノは2045年になろうとも量産は叶わなかった。2045年、力仕事を昔の公務員の様な“安定した暮らし”と捉える者が多数いるがそれでもいずれAIに奪われる未来にあることに危機感を覚える人も少なくない。


「休憩時間なのに勉強のことばっか考えてても心が滅入るな。世間は第二シンギュラリティの考察に会話に花を咲かせてるのによ。昨年不老薬の完成を果たしたから不老不死薬の完成がーとか、AIに完全な人格が生まれる〜とか。vrmmoの市販化来るかもとか世間は言ってんのに。

俺は受験か、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、はぁ、複雑な感情だな、AIの進化は。」

AIの進化、本来なら喜ばしいものであるのだが、ニヒルにはある事情があった。そしてそれは珍しいことではない。


特にすることもなく[休憩時間のため]窓に目を向け何かに頼むかのように独り言を口にする。

「あーあー、スマートリング欲しいな〜スマホ使ってる奴なんてもうほぼいねぇってのに。はぁあ、せめてスマートグラスかスマートウォッチぐらいはなぁ。」

ニヒルの口にした三つの製品は全て2045年の電化製品であり、三つともスマホの延長線上にある製品と言って良い。

スマートリングは指輪、スマートグラスはメガネ、スマホウォッチは腕時計である。

「風つえーな。熱風だけど。まあ今日バイトないから関係ねーからいいか。、、、、、、うーーんと、今日の飯何にしよーかな。コオロギかなやっぱ、、、勉強以外何もないな。」


数秒間無心に外を眺め、そしてあることに気づき声を発した。

「ん……あ!!忘れてた、定期取りに行かなきゃ。」

定期とは電車定期PASMOのこと。ニヒルは予備校に電車通学する為PASMOを定期購入しているのだが、壊れてしまい新しいのに交換をしなければならない。そしてその期日が今日までとなっていた。

「今日までだったか!ド忘れしてた。。駅まで、うーん、面倒だけど行くしかないか。」

重い腰を上げ支度を始める。

「今日暑いかな?35あるか?まあいいや。すぐ帰ってくるし調べなくて。」

支度の途中、ニヒルも件の考察を何となくしてみた。

「第二シンギュラリティか、、、。第二シンギュラリティがもしあるんだったら、 AIを使えない人をゼロにするか、 AI自体を消失させる技術を確立とかがいいな。てかそうしてくれ。」

2045年、AIは進化したが、皮肉な事に貧困層には手が届かないツールとなっている。サーバー代、電気代共に高騰、そして人口増加やAI失職や企業の企みなど複合的要因により2029年から全てのAIアプリが完全課金制となり今では月6万が最低ラインとなってしまった。

「AIがなきゃ受験生、いや全ての人間に差は生まれないのに。AIこそ格差是正に使うべきだろ。」

AIの使用未使用によって知能の差が開いているということは2045年ではもはや社会通念と言える。それだけでない、貧富の差、学歴の差、就職の差、数多くの差を作り出してしまっている。この差を作り出した事によって悲惨な最期を迎えた人間は少なくない。そう、自殺である。ある学者はAIに間接的に殺された人間は年間500万は下らないと述べる。

支度が終わり玄関へ向かう。

玄関に行き着くと遺影が2枚、それを一瞥し、AIを忌み嫌うキッカケを作った者の名をふと口に出す。

「父さん、、、」

ニヒルが7歳の時、父親は死を遂げた。AI失職によるものだ。

ニヒルの父親は税理士であり、AIが本格的に登場するまではなに不自由のない人生を過ごしてきたのだがAIにより失職してしまう。普段視界にも映らない社会の負け組である無職と同等な存在になってしまい、絶望してニヒルと妻を残しこの世を去る。

人間は幸福度の高低差により死を招くことが多々ある。彼のこれまでの努力はAIの登場によって牙となったのだ。

「はぁ、AI時代は辛いな、、、。これまでの俺の人生、AIがめちゃくちゃに掻き乱しやがった。親友との関係を拗らせられた。AI使える人間とAI使えない人間は確実な溝が生まれるからさ。受験も落ちた。毎日6時間は勉強したのに落ちた。受かった奴らの大半はAI使用者だ。なんせ上位校は金持ちがデフォだからな。そして父さんを自殺に追い込んだのも、AIだ。他にもいっぱいある。AIは俺たちに不利益を振りかざしすぎだよ。」


愚痴をこぼす。だが同時に己の愚かさに気付かされる。

「、、、言い訳だよな。こんなの。負け犬の遠吠えってやつだ。もっと努力してたら父さん以外のことはなんとかなってたかもしれない。あと、AIがこの手で使えないからってAIと無縁な生活をしているわけじゃない。今使ってるスマホはAIの技術によって作られたし生活家電にAIは組み込まれたり、サブカルにもAIがいなきゃできなかった作品がある。身近にあって便利にしてくれるけど実際には使えない。ほんと、ないものねだりだよ。

でも、けど、AIが皆使えないか使えるようになればこんなことにならないって考えは、正しいよな。、、、でも皆がAI使えたとしても父さんは、、、、、、、、、、、。


辟易するよ。死ぬほど。」


荒んだ心を深呼吸することによって整える。自分のキャパを超えた問題に、足を向けず、

「、、、いってきます。」

ゆっくりと、家から去る。





「覚王山までだから大体15分くらいか」

覚王山、名古屋市にあるそこそこの規模の駅である。電車に乗る時はいつもここを始点とする。だが今日は定期をとりに行くだけなので自転車に乗って行くことにした。無論、ヘルメットを装着している。

漕ぎ始めて5分ほど、雨が降り始めた。最初は視界が少し見えづらくなる程度だったが、1分、また1分経つごとに降り注ぐ雨は強まった。

「ザーザーだなおい、予報ちゃんと見るべきだった。」

雨が視界を遮り始めニヒルはスピードを落とす。そうしていると前方から自転車が走って来た。

時速30キロくらいだろうか。先程までのニヒルより少し速くいくらいだ。豆粒に見えた前方の自転車も瞬きを3回したらハッキリと造形が見えた。

ニヒルは車道が狭いので、歩道を走行しているのだが相手も同じく歩道を走行している。

ニヒルは順走だが相手は逆走なので「どいてくれるだろ」と思った。だが運悪く相手も同じ考え。

雨のせいか。それとも他の要因か。

避けるタイミングは十全にあったが両者とも避けず…

結果、恐ろしく鈍い音が鳴り響いた。現場を見た者は皆、両者はタダではすまないだろうと思った。

だが、違った。

自転車は無事だった。相手の方は。

体の方は無事だった。相手の方は。






ニヒルは…血が流れていた。














父の死から7年後、母親も努力の牙が突き刺さった。

過労死という名の努力である。愛していたからこその皮肉な顛末。


     「父さん、、、母さん、、、」




     















「、、、どこだ、ここ」

事故から3秒後、ニヒルは目を開く。

見覚えのない広場に立っていた。10メートルくらいの壁に囲まれ壁外は見えない仕組みになっている。広場の大きさは半径60メートルあるかないか。

広場には100人はいるがそれ以外の生き物はいない。広場、とは言ったが噴水やベンチなどはない。屋外ミニマリスト部屋と言えばいいか。

「え、、、なんだこれ」

ニヒルは事の状況に頭が追いつかず困惑するしかなかった。生きているのか、死んでいるのか、現世か、死後の世界か、幻なのか、夢なのか。いきなり風景が変わり何もかもが理解不能であった。

「三途の川、じゃねーよな。壁に覆われてるし。vrmmoってやつか?それとも転生、いや転移か?」

ニヒルだけでなく他の人間も困惑していた。他の人間も死んだ?のであろう。

この場から立ち離れて良いのか、そもそも出来るのかと思った瞬間、“声”が聞こえた。


“皆、おはよう。聞こえてるかな?私はこの世界の王のユイビだ。”


「!!??」

唐突であった。人生で1番驚嘆したと言っていい。なんせ脳内に声を直接送られたのだから。2045年、といっても脳内に声を送られたことのある人間は一握りである。広場の混乱の様から皆この声が聞こえているのだろう。声の方はボイスチェンジャーを使った犯人声、みたいな感じだ。

“いきなりだが君たちは今から言う3つの選択肢から1つ選んでもらう”

「なんだ?ここはどこなんだ?今のこの状況は説明しないのか?」

「俺は死んだのかよ?ならここは天国か?説明してくれよ」

広場は騒然としておりカオスと呼ぶに相応しい光景である。無理もない。死を迎えたと思ったら訳もわからない地に転移され三つの選択肢から一つ選べと言われているのだから。

“ここはAIの国さ。勿論私はAIであり他にもAIはいる。そして《人間》との連携は一切ない。

それ以上の情報は今は言えない。説明はいずれするから今は聞いときなよ。君達の運命を左右するんだからさ。”

「これってロボットの逆襲ってやつか!?やばくないかおい。AIに完全な自我持つようなことなんてこれまでなかったぞ!!」

「いやまて、裏に人がいるだろ。AIは人の味方であり不利益を注ぐ時はいつも人間が介入している!!」

「お前AIなのか!!なら俺の人生返せ!!くそAIが!!」

「消えろ!!AIなんてくそくらえ」

広場にはニヒルのようにAIに間接的に虐げられた者が多々いた。そしてニヒルもAIに対して嫌悪感を示していた。

「AIの国ってなんだよ。電脳世界ってやつか?まさか死んだかもしれないのにまだAIに虐げられるのか?」


“よし、それでは三つの選択肢を発表する。まず一つ目、【君達が不老不死となり永遠に生きる】か、二つ目は【AIに自分の体を引き渡し乗っ取られる】か、三つ目は、皆はこれを選ぶと思うけど、【これからされるゲームに参加する】か。三つ目のゲームを選んで勝てば自由、負ければ上二つのどちらかを選ぶ事になるからね。因みに上二つはたった今受付開始したところだよ。”


喋り終わった後、一瞬の沈黙の後大ブーイングが巻き起る。

「はぁ??何言ってんだ??選ぶわけねーだろそんな選択肢!!早く自由させろ!!」

「不老不死って、バカ言ってんじゃねぇ。第二シンギュラリティがどうとか言ってるが所詮噂だ無理だ。不老薬とは訳が違う。乗っ取りの方は知らないが」

「ゲームって、バカか!!早く今の状況を説明しろ!!AIの国ってなんなんだよ!!死んだのか俺は?」

広場は荒れていたが一定の者達は顔を真っ青に変貌させていた。

「死んだと思ったらここにいるって事は本当に、、、」

「AIは我々の予想を超えてくる。まさか不老不死薬は完成を、、、!!??」

“この段階で僕が本当の事を言っているってことに気付いてる人は少ないね。状況を的確に理解している者か情報強者くらいかな。”

「信じる方がバカだろ不老不死なんて」

「そうだそうだ」

“うーん、確かに不老不死薬が完全に機能してるかどうかはは年月が経たないと分からないかな。最近できた薬だし。乗っ取りの方は確実だよ。ま、別に信じてもらわなくてもいいよ。拒否権は君達にないから。一応理解してると思うけど、抵抗は無駄だからね。”



拒否権はない。その台詞にニヒルは静かな怒りを灯していた。

「なんで、、だよ、どうして、こんな、酷で不可逆な仕打ちを、俺達は、、、。」

AIの理不尽さが怒りを生み出していたのだが、別の感情も心にはあった。



拒否権はない。その発言により場は更にカオスを極めていく。そんな中一人の少女が頭を押さえながらつぶやく。

「うぅ、頭痛い。」

“あ、脳内ボイスに適合出来てない人間がいたんだ。それは申し訳ないね。”

刹那、広場の中心に高さ1メートルほどの円柱が出来上がる。その円柱の頂点に一人の人間の形をした存在が現れた。

      「それじゃ、続き始めよっか。」

王の声が聞こえた。それは先程までのボイスチェンジャーとは違う。変化を遂げた声は皆の心臓を粉々に粉砕する悲劇のマーチであった。

        人間の出せる声ではない。

人間の見た目をしている。だが声が異質である。ボイスロイドというものがあるがまさしくそれだ。人間の見た目をした輩が人間離れした声を出す。圧倒的なリアル人間模型なら2045年時点で可能だが完全な“人”は無理である。第二シンギュラリティがコレと言われても信じる者も多いだろう。

当然まだ異議を唱える者がいた。

「で、でも、ここが電脳世界なら納得だぜ。俺としてはここが電脳世界なのは確定した。それ以外ないぜ!!現実でこんなの、、、」

「さっきも言ったけど信じなくてもゲームはしてもらうよ。けど信じてくれる人も多数いるね。最初から超常フィジカルAIとして現れればよかったかも。人間はこの技術を知らないからさ。この声はね、ロボット時代の名残なんだよ。あ、因みにこの乗っ取り技術はvrmmoの開発あってのものだから。」

動揺している人が多数であった。そんな中、1人の高飛車な青年が質問をする。

「お前らの技術力の誇示などどうでもいい。質問に答えろ。なぜゲームをしなきゃならない?俺たちは今どう言う状況だ?死んだのか?生きてるのか?これはAIの謀反か?AIに魂はあるのか?不老不死と乗っ取りという組み合わせは第二シンギュラリティと関係があるのか?貴様らは人間と全く関係ないのか?ゲームに勝ったら自由になる根拠は?」

「質問攻めだな、はは。さっき質問はいずれ言うって言ったけど最後の1つは言及しようかな。 

不可能が可能になるんだよ。なら、足掻きなよ。」

高飛車な青年は目を瞑る。

「早くゲームを始めろ。」

「うん、分かったよ。他に文句ある人はいるかな?文句があったところでゲームはするけど。」









今、広場には多種多様な人間がいる。

AIに怯える人

AIに複雑な感情を持つ人

AIに反抗する人

AIをいまだ好意的に捉える人

AIに膝まつく人


ニヒルは、一考していた。


          何をすべきか


抵抗か、復讐か、自由になることを優先するか。

「父さん、母さん、、、何をすればいいのかな、、、」

運命を変える選択肢だからか、亡き2人に問いかける。



「自由、か、、、。AI時代で、父さんも母さんもいない、、、なのに、、、自由、、、か。」

ニヒルの心に別の感情がとても高く波を立て始めた。

それは事故が起きる前から恒常的に備えていたもの。

  

            


            諦念

ニヒルは知らず知らずのうちにニヒリズムを体現していたのである。




ニヒルは更に一考する。

父と同じく、諦めるか

AI時代に辟易していたからこそ、罷り通る選択肢。

AIに復讐も抵抗もできるはずもない。ならば自由になることを優先するか。あるいは乗っ取られて楽になるか。

「、、、」


それとも母と同じく、諦めないか

AI時代に辟易していようと、選ぶべき選択肢。

AIに復讐も抵抗もできる可能性が少なろうと、牙を剥くか。

「、、、」


凪である。二つの考えは伯仲に伯仲を重ねていた。だがいずれ前者に流れるのは必然と言えるか。








  挑戦を諦めてしまうこと以外に敗北はないんだよ。









不意に、心の中に姿を現した言の葉。

「母さんの、言葉、、、」

母の死である過労、それは挑戦を諦めてしまうことを選ばなかった故の結果。 

だからこそ今のニヒルにはこの言葉はセンシティブであった。

「、、、、、、生きて、欲しかった。」

「過労に、なんで、、、」

「過労になる前に、、、どうして」

「俺の為に生きて欲しかった。母さん、、、どうしてだよ」



少しの間を開けた後、心は稼働する。

「分かってる。全て、昔から分かってる。どうしてなのか。

、、、愛してたから、だろ。だから諦めなかった。」

「俺は諦めていいのか?母さんが愛してくれて、魂をかけて尽くしてくれたのに、、、」


「ダメに決まってんだろ!!俺は諦めたらいけねぇ!!!」

諦めの潮は消え去り、凪も同様に。


「母さんがしてくれたのに!!俺が挑戦もせずに諦めるのは母さんへの侮辱だ!!

何をすべきかなんて、とうに決まってるだろ!!」


かくて、覚悟は胸中へ

「努力しろ。諦めるな。牙を剥け。」

 

 



       「今度は俺の番だ!!」








AIの国で、AIの王はゲームの開始を告げる。

「では、デスゲームを始めよう。

最初のゲームはかくれんぼ。鬼は君達の先輩さ。」

広場の人間はどよめいた。ニヒルは抗う意思を身に染めた。

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