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短編小噺シリーズ ~評価の高いものを連載化させます~

追放された乙女ゲーの悪役令嬢は隣国で魔法学院の教師になります

作者: 雪丸
掲載日:2026/05/16

 アルメリア帝国国立魔法学院。

 大陸最高峰と名高いその学院では、今日も新任教師たちの採用試験が行われていた。

 試験官たちの前へ現れたのは、黒髪の美しい女性。


 エレノア・ヴァレンティア。


 隣国レイシュタイン王国で、婚約破棄をされ追放されてきたという噂の侯爵令嬢だった。


「……レイシュタインの“氷薔薇”ですか」


「社交界で恐れられていたあの……?」


 試験官たちは緊張する。

 しかし、エレノア本人は涼しい顔だった。


「教師募集を見て参りましたの」


「本気で教師になるおつもりで?」


「もちろんですわ」


 周囲は半信半疑だった。

 貴族の令嬢が教師になるなど前代未聞であり、しかも彼女はかなり若い。

 だが試験が始まった瞬間、空気は一変する。

 実技では上級魔法の同時展開を行い、筆記では複雑な術式理論を完全解答してみせる。

 さらに、魔法研究論文の発表では、古い理論そのものを覆す新説まで提示した。

 試験官たちは絶句した。


「な、なんだこの才能は……!」


 そしてエレノアは、学院史上最年少の特別講師として採用される。

 だが、そんな彼女の採用を快く思わない教師も少なく無かった。

 職員会議の結果、彼女が担任として受け持つことになったのは、学院で最も問題を抱えるクラスだった。


「また新しい教師か」


「どうせすぐ辞めるだろ」


 エレノアの受け持ちとなったのは、落ちこぼれクラスと揶揄される1-Cクラス。

 貴族子弟、問題児、素行不良。学院内でも有名な厄介集団だった。

 教師が何人も逃げ出したクラスである。

 だが、エレノアは動じない。

 教壇へ立つと、静かに黒板へ魔法式を書き始めた。


「まず、あなた方は基礎理論を間違えていますわ」


 次の瞬間、彼女が放った火魔法は、通常の半分以下の魔力で発動した。

 生徒たちが目を見開く。


「なんでそんな低魔力で!?」


「術式の無駄を削っているからですわ」


 さらにエレノアは、生徒一人一人の癖や適性を瞬時に見抜いていく。


「あなたは出力過多」


「あなたは魔力制御不足」


「あなたはそもそも属性適性を勘違いしています」


 その指導は正確だった。

 落ちこぼれだった生徒たちは、少しずつ結果を出し始める。

 そして気づけば、問題児クラスは学院で最注目のクラスへ変わっていた。




 エレノアの名声が高まる一方で、学院内外で彼女を快く思わない者たちが増えていった。

 特に保守派貴族たちは激怒する。


「平民の生徒まで優秀になっているだと?」


「血統主義が崩れる!」


 エレノアの教育は、“才能ある貴族だけが優秀”という常識を壊していた。

 さらに学院対抗魔法大会の日。

 問題児クラスは、名門クラス相手に圧勝する。

 会場は騒然となった。

 だが試合後、ある教師がエレノアへ言い放つ。


「所詮お前はレイシュタインを追放されてきた下賎な身だ」


 空気が凍る。

 生徒たちは怒るが、エレノア本人は微笑んでいた。


「ええ、その通りですわ」


「否定しないのか?」


「結果を出す人間は、嫌われるものですので」


 静かな声だった。

 しかしその言葉には、長年積み重ねてきた孤独が滲んでいた。

 その夜、生徒の一人が尋ねる。


「先生って、本当はどんな人なんですか?」


 エレノアは少しだけ困ったように笑う。


「ただの、魔法好きですわよ」




 数年後。

 アルメリア魔法学院は、大陸最高峰の教育機関として名を轟かせていた。

 その中心にいるのは、もちろんエレノアだった。


 彼女の教え子たちは、宮廷魔導士、研究者、騎士団長として世界中で活躍している。

 卒業式の日。

 かつて問題児だった生徒たちが、壇上のエレノアへ頭を下げる。


「先生のおかげで、俺たちは変われました」


「魔法が好きになれました!」


 エレノアは静かに目を細めた。


「あなた方が努力した結果ですわ」


 そこへ学院長が現れる。


「エレノア殿。研究院長への推薦が来ています」


「お断りします」


 即答だった。

 周囲が驚く中、彼女は教室を見渡す。

 新入生たちが緊張した顔で席に座っている。

 エレノアは柔らかく微笑んだ。


「わたくし、教師が天職みたいですので」



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高評価よろしくお願いします!

毎日22時より 『【連載版】悪役令嬢に転生したけど前世で弁護士だったので第一皇子を訴えます!』を連載しています!

ぜひご覧ください!!

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