第十五話 リャモロンちゃんの芸術家友達ともお友達になれたよ。ロブレンティアの有名芸術家少女トリオに私も加えてもらって、芸術家少女カルテットになりました。
次の休日、桜子はリャモロンに誘われモルランドル通りを訪れた。
「桜子さん、今日はあたしのお友達を紹介するね。桜子さんにも会いたがっているので」
「それは楽しみだなぁ。リャモロンちゃんのお友達も、絵が上手い子なのかな?」
「絵じゃなくて、別分野の芸術家さんなの。待ち合わせ場所はあそこの時計台よ」
「芸術家友達なんだね」
「うん、幼稚園の頃からの幼友達でもあるの」
モルランドル通りの待ち合わせスポットとして親しまれているその場所で少し待っていると、
「やっほーリャモロン、このお方が、絵が超上手いと評判の桜子っちだね」
「桜子様、はじめまして。リャモロン様の描かれた似顔絵のイラスト通りにとても可愛らしいお方ですね」
それらしき子達が現れた。
「こちらが彫刻家のオベロナちゃん、あちらがぬいぐるみ職人さんのポポララちゃんよ。あたしや桜子さんと同い年で学校は同じだけど、クラスは別よ」
リャモロンは楽しそうに紹介する。
「はじめまして、桜子っち。ウチ、まだまだ技術は未熟ですが、彫刻家のオベロナです」
獣耳で茶色のセミロングな髪をウルフカットにしたオベロナ、背丈は桜子やリャモロンより十数センチ高く、頼れるお姉さん的な感じ。
「はじめまして、桜子様。ワタシ、恐縮ながらぬいぐるみ職人と呼ばれている、ポポララです」
ポポララちゃんは、桜子と同じタイプの耳。卵顔でおでこが広く、ブルーの瞳に縁無しのまん丸な眼鏡をかけていた。クリーム色の髪を三つ編みにしていて、見た目から優等生っぽさが感じられた。背丈は桜子やリャモロンより少しだけ高めだ。
「はじめまして、一応、この国では絵の芸術家ということになっている、桜子です。オベロナちゃんはまさに彫刻家って感じで、ポポララちゃんはぬいぐるみ職人さんって感じだね」
「見るからに彫刻上手そうだねってよく言われてますよ。あの、桜子っち、初対面でいきなりお願いして悪いんだけど、ウチの似顔絵、描いて欲しいな」
「ワタシの似顔絵も、よろしくお願いします」
「もちろん喜んで♪」
桜子はスケッチブックに快く二人の似顔絵を描いてあげた。
「かわいいデフォルメ絵が特に上手いと、まさに評判通りだね」
「こんなにかわいく描いてもらえて嬉しいです」
オベロナもポポララも表情がほころぶ。
「あの、ウチ、リャモロンが描いた似顔絵を基に、桜子っちのミニ彫刻作ってました。お礼に差し上げます」
「ワタシも、桜子様のぬいぐるみ作ってますよ。お礼にプレゼントします」
その二人は自作品を鞄から取り出して、桜子に手渡す。
「私そっくりで凄く嬉しいよ。ありがとう♪ とってもいい出来だね」
長さ十五センチくらいの彫刻と、三〇センチくらいのぬいぐるみを受け取って、桜子は大いに喜ぶ。
「ワタシ、桜子様がお世話になってるというコスヤ様に憧れて、ぬいぐるみ職人さんを目指し始めたんです。あのお方のデザインされたぬいぐるみが大好きで、五〇体以上は持ってますよ」
「そうだったんだ。コスヤさんの作ったぬいぐるみ、とってもかわいいし癒されるし素敵だもんね」
「コスヤ様に比べてしまうと、ワタシの技術はまだまだ足元にも及びませんから、さらに上達出来るように精進したいです」
「ウチが彫刻家になろうと思ったきっかけは、エコール・プリメールに入学して間もない頃、美術館や街中にある魔物の彫刻に魅了されたことだな。こんな格好いい彫刻作ってみたいなって思ったんだ」
「彫刻って、私も中学の時、美術の授業でやったことあるけど、思った通りの形にならないし凄く難しかったよ。作品展とかに展示されたり売り物になるようなちゃんとした彫刻が作れる人って尊敬出来るよ」
「ウチはイラスト描くのは苦手だから、桜子っちやリャモロンの方が凄いなって思うよ」
オベロナは照れ笑い。
そんな時、
「あっ、ロブレンティアの有名芸術家少女さん達だ!」
「ロブレンティアの芸術家少女トリオに、サクラコちゃんも加わって、芸術家少女カルテットだね。初めて見る組み合わせだよ」
「四人とも大ファンです。アタシ、全員分のグッズ持ってます。オベロナちゃん作のコカトリスの彫刻はお祖父ちゃんがすごく気に入ってます」
「ポポララお姉さんがお作りになられたうさぎさんの特大ぬいぐるみ、いつも抱いて寝て癒されてます」
「皆さん芸術家活動、頑張って下さい! 応援してます」
同い年くらいの女の子達から声を掛けられる。
「あっ、ありがとうございます。頑張ります」
「応援してくれてありがとう。ウチ、桜子っちともたった今知り合いになりました」
ポポララとオベロナは、照れ気味に対応。
「ポポララちゃんとオベロナちゃんもこの街の有名人だったんだね」
「あたし達、ロブレンティアの芸術家少女トリオって呼ばれてたの。今からは桜子さんも加わって芸術家少女カルテットよ」
「私、まだこの街に来てそんなに経ってないけどそう呼ばれるなんて、嬉恥ずかしいな」
ロブレンティアの芸術家少女カルテットの四人はこの子達の握手に応じてあげたり、桜子とリャモロンはイラストを描いてあげたりとファンサービス。
このあと、この四人で十代の女の子達に大人気だという、うさぎカフェへ。
「ロブレンティアには犬さんや猫さんやうさぎさん、狸さん、小鳥さんなどなどいろんな小魔物さん達と触れ合えるカフェがたくさんありますが、うさぎさんカフェは猫さんカフェと並びワタシの特にお気に入りなんです」
「ウチも小魔物カフェではうさぎさんが特に好きだな。もふもふ系だし」
「日本にも動物さん達と触れ合えるカフェはいっぱいあるけど、この世界のはうさぎさんにも翼が生えて空を飛んでてファンタジー感が凄くてより楽しいよ。うさぎさん達も私のいた世界のうさぎさんよりもかわいいし」
「あたし達が何度か利用してるこのお店、桜子さんに喜んでもらえると思ったわ」
プゥプゥ♪
「食事を運んでくれるのもうさぎさんなんだね! 日本以上にカフェの動物さんが主役になってるね」
「他の小魔物カフェの動物さん達も、こういう芸当を披露してくれますよ」
「それは凄いね。ひょっとして、お料理してるのも動物さんとか?」
「さすがにそこまで高度なことをこなすのは無理みたいです。猫カフェのシロヒネコさんとか、爬虫類カフェのサラマンダーさんとかが、炎を吐いて工程の一部を手伝ってくれる場合はあるみたいですけど」
「そっか。全部やるのはやっぱ無理みたいだね」
「魔物さんがお料理の工程全部こなせたら、それはもうファンタジー漫画や絵本の世界よ」
桜子とリャモロンはふふっと笑う。
四人はうさぎさん達が運んで来てくれるフルーツやチョコのクッキーやケーキなどのお菓子を堪能し、このカフェをあとにした。
そのあとは、モルランドル通りを抜けて、桜子とリャモロンが以前訪れたとことは別の公衆浴場へ。
「メルヘンチックな外観だね。お風呂屋さんには見えないよ。イラストに残しとこっと♪」
桜子は楽しそうにスケッチブックに描いたのだった。
館内脱衣所に入ると、みんなすっぽんぽんになって浴室へと入っていく。
そして体を洗って湯船に浸かってゆったりくつろぐ。
初対面の子達とも仲良くなれば、その日のうちにいっしょにお風呂に入るのがこの国の文化なのだ。
「キャラメルミルク風呂って初体験だよ♪ 香りも甘そうでいいねぇ」
「ロブレンティアだけで数百箇所ある公衆浴場、それぞれに特徴があるのよ。前に桜子さんと訪れたとこは、炭酸風呂なの」
「有馬温泉みたいな感じだったんだね」
「ウチはこういうスイートドリンク系のお風呂の大好きだよ」
「ワタシもー。おウチのお風呂でも時々その入浴剤入れて楽しんでます。スイートドリンク系は小さいお子様にも大人気で、大人向けの酔っちゃいそうになるワインやビールのお風呂もありますよ」
「魔物さんのエキス風呂を提供してるとこもあるわ。美容効果があっておば様達に大人気だそうよ」
「ウチは職人柄、切り傷や手のまめやたこの治癒効果がある薬草風呂もよく利用してるよ」
「日本以上にいろんな種類のお風呂がありそうだね。いろいろ巡ってみたいよ」
※
キャラメルミルク風呂の公衆浴場をあとにした四人、
「そんじゃ、まったね。桜子っちに出会えて良かったよ」
「桜子様も、またお会いしましょう」
オベロナとポポララはここで別れを告げて、それぞれのおウチへ帰っていく。
「リャモロンちゃんのお友達、思った通りとっても良い子達だね」
「あたしも幼い頃からいろいろお世話になってる頼りがいのある子達なの♪ 二人ともあたし以上に創作活動が忙しいので、今日みたいに学外でいっしょに遊ぶことはそんなに頻繁にはないけど、夏休みには、一回くらいはみんなでいっしょに海とかにも行こうね」
「うん、楽しみにしてるよ」
リャモロンと桜子は、幸せ気分でそれぞれのおウチへ帰っていくのだった。




