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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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【その26:せいじょリサーチ(下)】


 さて、どこからどうやって調べようか。


 私のように勇者に祭り上げられることは稀らしいけれど、勇者パーティーに参加する聖職者は意外と多い。


 なぜなら怪我を治す魔法が聖魔法しか存在しないから。聖職者がいないパーティの生存帰還率は、著しく下がる。


 そして、聖魔法を使える者はほとんどが教会に所属しているため、聖職者の同行の有無は、勇者たちにとって死活問題である。

 

 とはいえ、自称勇者の有象無象も含めれば、掃いて捨てるほどいるのが勇者パーティーだ。教会も誰彼構わず聖職者を貸し出しはしない。


 王様が認めるような一級冒険者は別として、名を挙げたいだけのパーティーが、教会から人を借りるのは大変だ。


 そんな中でモノを言うのは、有力支援者(スポンサー)かお金。


 俗な話ではある。けれど以前の私ならば、そんなものかなで、疑問も抱えずに終わっていただろう。


 勇者パーティに参加すると言うことは、命懸けの冒険に出るのだ、それなりのお金を払うのはむしろ当然ではないか、と。


 けれど、魔王の話を聞き、さらには先日のエリナさんのお店の騒動。私の中で何かが揺らいでいるのは事実。


 もちろん、魔王の言葉をすべて信用したわけではない。だからこそ、オレックと言う人物に話を聞いてみたいのだ。


 私は棚に並ぶファイルの年代を指でなぞる。


 まず、ここ3年間の記録は除外して良いと思う。私が想定外の力を秘めていると判明したのが4年前。


 それから半年ほどで聖女認定されて、勇者として魔王に立ち向かう使命を課せられ、修行に明け暮れた。


 教会に入った頃ならともかく、私が勇者に指名された後にオレックが旅立ったのなら、同じ境遇の人物として印象に残るはず。


 勇者になる前であっても、聖女として冒険者に加護をあたえる仕事があった。全く記憶にないとは思えない。


 それと多分、あまり古い話でも無いような気がする。ここのところ、周囲の聖職者にそれとなくオレックについて触れてみた結論だ。


 一部の高位にある方が、急に話を切り上げたり、まるで興味もないし知らないと言う不自然な態度をとったのである。


 つまり昔話として広く噂される人物ではなく、割と最近、内密に何ががあった人物である可能性が高いのではないだろうか、と。


 ある程度期間を絞ったところで、私は目についた記録書を手に取った。


 ひとまず予想した範囲内で、オレックの名前がないかを探すしかない。見つからなければ……まあ、その時に改めて考えよう。


 期限が決まっている話ではない。時間はある。


 何冊か机に積んで黙々と記録書をめくっていると、


「ルラ様、随分とごせいが出ますね」


 と声をかけられた。誰かと顔を上げてみれば、そこにはハーロットの顔が。


「あら? ハーロットも調べ物ですか?」


 私の言葉に少し呆れたような、困ったような顔をするハーロット。


「聖灰の件、近々ご説明いただくとお約束していたではないですか。それがいつまで経ってもお話に来られないので、私がせっつかれて、ルラ様の教会に出向いたのですよ?」


 ……すっかり忘れていた。


「それで、ルラ様あの聖灰は一体どこで?」


「あー……えっと。実は魔王城の一角で見つけたのです」


 嘘は言っていない。


「確かに勇者時代に発見したものと仰っておられましたね。しかし、魔王城になぜ、聖灰が? それにどうして、今更?」


「その、あれです。魔王城にあったものですから、何か危険がないのか調べていたのですよ。ほら、呪いとかかかっていたら一大事じゃないですか」


「なるほど。しかしそれなら余計に早く明かして欲しかったところですが……」


「私が勝手に拾ってきたもので、他の皆様方に被害を振り撒くわけには参りませんから」


「左様で。ですが、もう危険はないと判明したのですか?」


「……おそらくは。一応、毎朝私も祈りを捧げて浄化してましたから、その、少し前にはそろそろ大丈夫じゃないかと思ってはいたのですよ」


「そうでしたか……もしかして、本日の調べ物もそれに関係するのですか?」


「そう! そうです! できれば聖灰の持ち主を特定し、その方の魂の安寧を願いたいと思いまして……」


「素晴らしいお考えですな。では、私も協力いたしましょう」


 言いながら積んであった記録書の一冊を手に取り、パラパラと開き始めるハーロットに、私は慌てて言葉を続ける。


「大丈夫です! そもそも何の根拠もない話ですから! ハーロットは忙しいでしょう? ご自身の仕事を優先してください。ほら、聖灰の報告とか」


「……遠慮なさらずとも良いのですが……。わかりました。確かに優先すべきは報告の方です。それでは私はこれで」


 去り行くハーロットを見送り、私はため息を吐く。


 元々はハーロットの失言からとはいえ、あの様子から、私がオレックについて調べることを快く思っていないだろう。内緒にしておいた方が良いような気がする。


 そうしてハーロットが開きっぱなしにしたままの記録書を戻そうとして、私の手は止まった。


 いた。


 それは10年前に王都を出立した勇者パーティーの記録だ。


 その中にはっきりと、聖職者オレックの名前が記載されていたのである。



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