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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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【その18:まおうソフトタッチ(3)】


 ジャバナンスが去ったので、一旦店内に戻った我達。


 エリナが店先に本日閉店の木札を掛けている間に、我は壁に空けた穴を直し始める。するとそんな我を見て、ルラが意外そうな顔をした。


「何か言いたいことでもあるのか?」


「いえ。そういうの、自分でするんですね」


「む? 自分で壊したのであるから同然であろう?」


「まあ、それはそうなんですけど……。あ、釘どうぞ」


「殊勝である。ついでにちょっとそっちの板を押さえておけ」


「はいはい」


 そうして不格好ながらも穴が塞がった頃、エリナがお茶を持ってきた。


「助けていただいた上に、修繕まで……すみません。お茶、飲んでください」


「うむ。いただこう。どうせしばらくはここにいるのでな」


 我がそう口にすると、ルラが首を傾げた。


「どういう意味ですか?」


「そのままの意味であろう? 先ほどの奴らは『すぐ戻ってくる』と言ったからな。待つのである。どうせそれまでは暇なのだ。エリナよ、状況を説明してもらおうか」


「あ、はい……と言っても、あまりの急なことで……」


 困惑するエリナが言い淀んでいると、扉が乱暴に叩かれ、店に飛び込んでくる人物が。


「ソーイットさん!?」


 どうやらエリナの知り合いであるようだ。ソーイットと呼ばれた老人は、エリナを見て安堵と泣き顔がない混じった表情を見せると、


「ああ、無事で良かった……。エリナさん、本当に申し訳ないっ!」


 と、その場に膝をついて謝り始めた。


「ソーイットさん、とにかく立ってこちらへお座りください。ルラさん、マオさん、こちらのソーイットさんはこの土地と建物を私に譲ってくださった方です。支払いは分割で構わないとおっしゃってくださって……」


「つまり、本来の債権者であったのか。で、なぜにあのようなもの達にそれを譲ったのだ?」


「あの……あなたは……」


 ソーイットの疑問に答えたのはルラ。


「私の知人です。マオさんと言います」


「聖女様の……」


「うむ。先ほどジャバナンスをぶっ飛ばしたので、この一件と無関係ではなくなったところだ」


「は、はあ……ともかく貴方がエリナさんを助けてくれたのですな。お礼を申し上げます。全ては私の不手際のせいです」


「不手際ということは、お主が何かしたのか?」


「いえ。……実はジャバナンスは、コサード地区教長の名前を出して、ここ一帯の土地を強引に買い取ろうとしてきたのです」


「まさか?」


 眉を顰めたのはルラ。


「ルラよ、地区教長とはなんだ?」


「王都はとても広いので、教会本部を中心に複数の地区を分けて、それぞれの信仰の窓口をになっているのです。各地域に聖魔法の使い手が滞在し、怪我や病気などにも対応しています。それらを取りまとめているのが地区教長です」


「ほう。で、その地区教長とやらは、そんなに偉いのか?」


「教会の人間としては、あまりこういう言い方はしたくありませんが、まあそうですね。権力者です。ケガや病気を治してくれる教会は、人々にとって大切な存在です。生活には欠かせませんから」


「ではルラもどこかの地区教長とやらであるのか?」


 聖女と呼ばれるほどであれば、一介の聖職者ではなかろう。


「あ、いえ。私はちょっと別枠と言いますか、一応特殊な肩書を持っていますので、独立した教会を任されています」


「なるほど」


 我が納得していると、エリナがおずおずと口を挟んできた。


「あのう……マオさんはこの街の方ではないのですか?」


 氏の質問に我とルラが一度顔を見合わせると、ルラが力強く頷き、代わりに答える。


「マオさんは、元々魔族領の方面に住んでいたのですが、所用で王都へ私を頼ってきたのです。その……私が勇者をしていた時に知り合ったといいますか……」


「ああ、そういうことだったのですね」


 納得するエリナとソーイット。まあ、ルラも嘘は言っていない。二人の反応を見て、ルラは話を戻す。


「ともかく、コサード地区教長がなぜそのような事を? それは事実なのですか?」


「私も信じられず、ジャバナンスの要求を突っぱねたのです。しかし執拗にやってくるので、本当にコサード地区教長の意向なのか、ご本人に直接話を伺いに出向きました」


「それで、結果は?」


「随分と待たされた挙句、お会いすることは叶いませんでした。そうして家に戻ってみれば、私が不在の間に、ジャバナンスは妻を半ば脅し、強引に金を押し付けると権利書を奪っていったと」


「それは酷いですね。許せません」


 憤慨するルラ。


「ルラよ、ここではそのようなことが罷り通るのか?」


「当然許されませんが……聖騎士団にはすでにお話しされたのでしょう?」


 聖騎士団? 確か、前線で戦っている者たちの名前だな。話の流れからすると、街の治安も担っておるのか。


「もちろんです。しかし……まずは事実関係を確認するからとだけ……」


「信じられない怠慢です! 今度、抗議をしておきます!」


「はあ、しかし……本当にコサード地区教長が関係しているのであれば……」


 言い淀むソーイット。その言葉の続きは、『大丈夫なのですか?』か、それとも『信用できるのですか』なのもしれぬ。


 人間どもの諍いはさして興味はないが、この店がなくなり、ぬこのための数々の道具が買えなくなるのは困る。


 なので話は簡単である。


「つまり、ジャバナンスが二度と手が出せぬようにすれば良いということだな」


 我の言葉に、ルラが『今までの話、聞いてました?』といわんばかりに、なんとも言えない表情を向けるのであった。



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