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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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13/67

【その13:ひざのせスロウリィ】


 魔王が私の前で床に拳を叩きつけている。


 大人、という表現が正しいのかわからないけれど、大の大人がここまで悔しがる姿を見るのは初めてだ。


 しかもその理由が、飼い猫が膝に乗ってくれないから、なんて。


 相手は魔王なのだけど、私はついくすりと笑ってしまった。魔王はそんなこと気づきもせずになおも悔しがっている。


「あの……魔王、ぬこさんが膝に乗らないって、普段どんなふうにしているんですか?」


「おおお……お? それは当然、常にぬこに近寄って、いつ膝に乗ってきても良いように準備しておるが?」


 それが何か? みたいな顔で私を見るけれど、原因がひとつはっきりした。


「個体差もありますけど、基本的に猫は、動きの激しい相手を嫌がります。えーっと、確か言ってましたよね? ブラッシングをするために自分から近づいてくるって」


「うむ。そうである」


「その時はぬこさんに自分から近づいていないのでは?」


「む。確かに。朝はぬこも忙しい。我は邪魔せぬようにしていた」


「それですよ。猫に好かれるのはあまり動かない方です。静かにしていれば、ぬこちゃんの方から近づいてきます」


「なんと!?」


 もぞもぞと起き上がった魔王は、少し迷ったのち、そのままその場所であぐらをかく。めちゃくちゃそわそわしているのが微笑ましい。


 私は膝で丸くなっているぬこさんを軽く抱き上げる。


「ぬにゃっ」


 と抗議の声を上げるぬこさんへ、


「ほら、あちらにご主人が待ってますよ」


 と水を向ける。ぬこさんは何度か私と魔王を見比べてから、やれやれといったふうで魔王の方へと向かい、そのまま魔王の膝にぽんと飛び乗ると丸くなった。なかなか賢い子だ。


「……!? ……! ……!!」


 震えながらオロオロする魔王。私から静かにしていればと言われたので、喋って良いのかわからない様子。


「……大きな声を出さなければ大丈夫ですよ」


「そ、そうか……。しかしぬこがこれほど簡単に我の膝に……」


「良かったですね」


「うむ。感謝しよう」


 純粋に嬉しそうな魔王を見て、私は少し、戸惑う。


 これが私を騙すための演技だとしたら大したものだけど、とてもそうは見えない。やはり本当に、魔王は侵略なんて望んではないない?


「ぬこさんはまだ若い個体のようですね」


「そうなのか? いや、それよりもなぜ、お主がここにおるのだ? 大人しく帰れと警告したはずであるが」


「あ、そうでした。いくつか貴方に伝えておく必要があったのです」


「なんだ? また懲りずに勇者どもがやってくるのか?」


「違います。むしろ、しばらくはやってこないかもしれません。少なくとも、魔法陣を使っては」


「ほお。では、人間領の魔法陣を破壊したか?」


「いいえ。ここにある魔法陣とのアクセス先を、私の私室に移しました。今後、私以外が出入りすることはできないでしょう」


「ぬ? なぜそのような事を?」


「理由は二つあります。一つはあのままアクセス状態を残して、何かの拍子に魔法が発動しては危険です。なので、根本的な対処をしたのです」


「ふむ。勇者どもが利用しなければ、我はなんでもかまわぬ。で、もう一つは?」


「それはもちろん、私が貴方を見極めるためです」


「むう。面倒であるな。まだ疑っておるのであるか?」


「それは当然です。ですが、貴方の言葉を否定するほどの材料もない」


 大司教様の態度や、行方不明になった神官。私たちの側にも腑に落ちない部分がある。


「確かにお主には多少の借りがあるが、我の私室にこう気軽に出入りされてものう……」


「王都に貴方が来るときは、私の私室にも入るのです。お互い様ではないですか」


「それはお主の勝手な……いや、待て。なら一つ取引といこうではないか」


「なんですか? 国の情報を流せ、みたいなのはお断りします」


「違う違う。我が頼みたいのは……」


 魔王の提案したそれは、意外なような、らしいような案だった。



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― 新着の感想 ―
そうですよね、魔王というくらいだから、きっと大柄な方だと思っていました。スペースには余裕がありますよね。 乗ってもらえてよかったですね。 そうか、かわいいものをめでるというのも平和につながりそう。
魔王様の「ぬこも朝は忙しい」が最高!! 魔王様膝に乗ってもらって良かった笑 続きが気になる〜
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