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ぬこ様と魔王様と 〜もしも魔王が、猫を飼ったら〜  作者: ひろしたよだか


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【その10:くいちがいミーティング】


 我に腹を出し、ここもブラッシングせよと主張するぬこ。


「可愛い」


「で、あろう?」


「はっ!? 騙されませんよ!?」


 ぬこのブラッシュングのため一時休戦となった我と聖女は、揃ってぬこの腹を眺めるという奇妙な状況の中にあった。


 そのような中で聖女ルラが質問を投げてくる。


「どうしてこんな場所に猫ちゃんが? ……まさか、攫ってきたのですか?」


「失敬な。此奴は城の近くで拾ったのだ。いや、待て、なぜお主はねこが魔族領にいないことを知っておる?」


「それは簡単です。魔族領に存在するなら、わざわざに人の街に猫の道具を買いに来るはずがありません。でも、どうしてこんな魔族領の最奥に迷い込んだのかしら?」


「それについてはある程度予測できる。というか、お主ら人間のせいであるぞ」


「どういうことです?」


「分からんのか? ぬこがここにやってきた頃と、我が城に勇者パーティーがやたらにやってき始めた時期が、一致すると言っておるのだ」


「まさか……転移魔法陣に紛れ込んだ?」


「で、あろうな。全く迷惑な。我にも一つ聞かせよ。なぜ、我がマオだと露呈した?」


「その……猫さんに“ぬこ”という名前をつけるのは、個性的というか……珍しいというか……それに、そのブラシにも見覚えがありましたし」


「ぬ? ねこにぬこはと名付けぬのか? ああ、まあ、種族名がねこなら混同するか。我はねこという存在を知らなかったゆえであるな。しかしこの名はぬこも気に入っておる」


「いろんな名前がありますからね。特段変というわけではないですよ? 食べ物の名前をつける飼い主なんかもいますし」


「何!? このような愛らしい生き物を食べるというのか!?」


「食べませんよ! この、ふわふわもちもちしている感じが食べ物っぽい印象じゃないですか」


「む。確かに。人間はそこまで野蛮なのかと引くところであった」


「野蛮? 野蛮なのは魔族の方でしょう。人の領地への侵略を目論み、人々を恐怖に陥れる」


「それ、先ほどもそのようなことを言っておったが、我はそんなことしておらんぞ」


「またそのような嘘を。現に、国境線では未だに争いは発生しているではないですか?」


「それは事実だが、我らが一方的に攻め立てているわけではない。人間がこちらに足を踏み入れている案件も非常に多い」


「そんなわけ」


「ないとでも思っておるのか? 違う種族が領地を接しておれば、当然揉め事は起こる。特に長い年月の間に、魔族領だったものが人間領に、人間領だったものが魔族領になれば、その遺恨は延々と続くもの」


「でも……大司教様は……」


「分からん娘よな。では一つ真理を話してやろう」


「真理」


「お主も戦ったことがあるゆえ、よくわかっているであろう。我は最強である」


「……でもきっと、どこかに弱点が」


「そういう話をしているのではない。今まで無数の勇者が我を倒しにやってきた。それらは人間としては上位の実力者であるはず。その者らが我に手も足も出せてはおらん」


「何が言いたいのですか?」


「まだ分からんのか? 存外阿呆か、お主?」


「失礼な! 滅しますよ!」


「だからできぬと言っておろう。我が本気で人間を滅ぼそうとするなら、我自ら、人間領に出張れば良い。すべてを焼き尽くすのに、1年とかかからぬであろう」


「あ……」


「これで分かったか」


「いえ、でも。配下と人を戦わせて眺めるのが愉悦という可能性も……」


「そのような趣味は持ち合わせておらぬ。ぬこの愛らしい仕草を眺めている方が、よほど有意義である」


「うう……。でも、この様子だと、確かに……」


「もうこれで分かったであろう? お主にはぬこの買い物を手伝ってもらった借りがあるゆえ、見逃してやる。大人しく帰るが良い。今後魔法陣も使わぬように人間どもにうまく説明しておけ」


「くっ……分かりました。確認したいこともできたので今日は退がります。ですが、貴方のいうことを全て信じたわけではありませんから!」


 そんな捨て台詞を残し、ルラは魔法陣から帰っていった。




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