表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
渋谷ダンジョンとアンデッド

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/42

8.迷宮保安庁にて

 翌日。

 迷宮保安庁に出勤した全身筋肉痛の私は、早々に津守(つもり)さんに呼び出された。

 十中八九、昨日のダンジョンについてだろう。

 ちょうどいい。私だって、聞きたいことが山のようにある。


 塵一つ落ちていない綺麗なオフィスの廊下を進み、津守さんの執務室に向かう。

 ノックをすると、はっきりとした凛とした声で入室を許可された。ゆっくりと扉を引く。


「――失礼します」

 

 津守さんは奥にある執務机で何やら書類に目を通していた。

 私が部屋へ入ると顔を上げる。

 

佐々貴(ささき)君。昨日はご苦労だったね」

「いえ」


 にこり、と穏やかに笑みを浮かべる津守二等迷宮保安監。

 目立つ金髪ショートカットに、ニヒルな雰囲気も漂う大人の女性だ。

 最も目立つのは右目の眼帯。その眼帯でも隠し切れない大きな傷が縦に一筋残っているが、それすらも彼女の魅力となりえていた。

 この傷は、津守さんが元々探索者だった頃に負ったものらしい。


「色々と聞きたそうな顔をしている」

「それは……はい」

「まぁ、当然だろう。かけたまえ」


 来客者用の革製のソファを勧められたので、私はその傍に移動した。

 津守さんが腰かけるのを待ってから、自分も着席する。


「それで?」


 と、津守さんが足を組みながら尋ねた。


「何から聞きたい?」

「あのダンジョンや魔物はなんだったのでしょうか? 普通の魔物とはどこか違うように感じました。倒しても倒せない……何度も立ち上がってまるでゾンビみたいでした。ですが治癒魔法を使うことで完全に倒せました。どうして治癒魔法が効いたのかも分かりません。これらのことは津守二等迷宮保安監殿はご存じだったのですか? それに、そうです。執行(しぎょう)さんは一体……? いえ、それよりもやはり魔物が……映像はご覧に?」

「佐々貴君。落ち着きなさい」


 津守さんに声を掛けられて私ははっとした。

 頭の中で話がまとまっていなかったせいで、責めるような口調でまくし立ててしまった。

 これでは津守さんも答えようにも答えられない。

 

「も、申し訳ありません」

「いやいや、気持ちはわかるよ。気にしなくていい」


 苦笑いを浮かべ、津守さんはあごに手を添えた。


「さて。どこから話すべきか……」


 数秒、思案を巡らせたのちに小さく頷く。

 顔を上げて、私を真っすぐに見つめて切り出した。


「時系列を追って話そうか。それがお互いに分かりやすいだろう」

「お願いします」

「まず、事の発端は二週間ほど前。当該迷宮の管理事務所よりおかしな魔物の存在が報告された。あの迷宮は政府管轄になっていて、現在は一般探索者の立ち入りが禁止になっているのは知っているね?」

「はい」

「あの迷宮では、近いうちに鉱石の試験的な採掘が予定されていたこともあり、すぐに魔物の調査が行われた。ただ、君たちも知ってる通りどうやっても倒し切ることはできなかった」


 てっきり私と執行さんが最初に踏み入れたのかと思ったが、そうではなかったらしい。

 地下二階層で見た最初のゴブリンに違和感を感じたのは、最初の調査の名残だったのだろう。


「その後、研究員たちやAIによって迅速に解析や推察が行われ、いくつかの対抗手段が考えられた。そのうちの一つに、治癒魔法が有効である可能性も挙がっていた。だから佐々貴君に調査を命じた。ここまでが、私が知っていたことだね」


 迷宮の調査を命じられるまでの経緯は理解できた。

 どうして私がなのかと思っていたが、治癒魔法を使える保安官である必要があったのだ。

 だが。だとすると、一つ疑問が浮かんでくる。


「一つ質問なのですが」

「何かな?」

「治癒魔法が有効だということを津守二等迷宮保安監殿はご存じだったわけですよね?」

「あくまでも可能性だけれどね」

「はい。ですが、どうして私には伝えられなかったのでしょうか。ですので、途中までは私が執行さんのサポートをするとばかり思っていました」

「その件に関しては私の判断で伝えなかった」

「え、な、何故ですか?」


 今回は、たまたま私が治癒魔法を試してみたからゴブリンを倒すことができた。

 しかし、普通に考えれば魔物に治癒魔法を使ってみようとは考えない。いつまでもゴブリンを倒せずに、そのまま特に成果を得られず撤退した可能性だってある。


「自分たちで辿り着いてほしかった。そのくらいの機転や観察力がなければ、次回以降の迷宮調査を安心して任せられないからね」

「なるほ……ん? 次回ですか?」

「まぁ、その件は追々ね」


 なんだか聞き捨てならないことをはぐらかされた気がしないでもない。

 が、今は話の続きに耳を傾けることにする。


「執行君もいたから、最悪の場合は撤退してくるだろうと思っていた。だけど、君たちを危険な目に遭わせたことは事実だ。試すようなマネをしたことは謝る。申し訳なかったね」


 まさか素直に謝罪をされるとは思わなかった。

 上官に頭を下げられると、なんだか恐縮してしまう。


「話を戻そうか。君たちのおかげで現段階で分かったことや推察されることを話そうと思う」


 一呼吸おいて、津守さんは足を組み替えて改めて口を開く。


「まず、今回発見されたゴブリンについてだが。解析によると生体反応が見られなかったそうだ」

「え……?」


お読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ、ブックマークや下の評価(☆)をつけていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ