6.キングゴブリン
ゴブリンたちを一掃していく執行さんに続いて、私もキングゴブリンが待ち受けるダンジョン最深部の広間に足を踏み入れた。
扉から最も近い位置に倒れていたゴブリンを探す。
急いで駆け寄り、右手をかざした。
「治癒!」
頭と胴体がさようならしているゴブリンが淡い色の白い光に包まれる。
2階層で倒したゴブリンの時よりも、魔法の濃度や出力を強くすると、その光もより色濃くなった。ゴブリンの身体が灰のようにパラパラと分解されていく速度も上がっている。
その代わり魔法の出力を上げると疲労度が半端ない。
あとあとになってクタクタに疲れてしまうけど、この際は仕方ない。
速度だって大事だ。
足元のゴブリンが完全に消え去ったのを確認して、私は顔を上げた。
「次っ」
周辺には、執行さんが倒したゴブリンたちが大勢転がっている。
そのなかで最も近くにあるものを探していると。
「佐々貴さん! こっちは準備できました!」
「え!?」
執行さんの方を見る。
対峙していたはずのキングゴブリンが膝をつき、前向きに倒れ込むところだった。
嘘でしょう!? 速すぎる!
執行さん、本当に何者なのだろうか。
信じられない気持ちでいっぱいになりつつ、私はキングゴブリンに目標を変更して走り出す。
「ご、ごめん。まだ一体しかできてない」
「構いません。こちらをお願いします」
「りょうかい」
執行さんとすれ違い、キングゴブリンの傍にやってきた。
当たり前だけど身体が大きい。
人間の場合でも、身体が大きい人や怪我の具合が酷い人に治癒魔法を使う場合、いつも以上の出力が求められる。
今回も同じだろう。普通のゴブリンと一緒にしてはいけない。それに速度も必要だ。キングゴブリンまで復活させて、また執行さんの仕事を増やすわけにもいかない。
これは気合を入れたほうが良さそうだ。
「……よしっ」
短く呟いて、私は肩幅に足を開いた。
片手ではなく、両手を「×」のように重ねて、可能な限りの出力で治癒魔法を使用する。
キングゴブリンの身体が段々と白い光に包まれていく。
やがて、これまでに見たことのないほど濃く、大きな光がキングゴブリンを包み込んでいた。
もし、この治癒魔法を使っている相手が人間だったとしたら。
私はどれだけ大怪我を負った人に魔法をかけているのだろうか。
いつも以上に身体の内側から力が出て行く感覚だ。
それに若干の気持ち悪さを感じつつも、決して手は緩めない。
徐々にキングゴブリンの足先や手がポロポロと砂みたいになって消えていく。
時間はかかるが、ゆっくりゆっくり、一歩ずつ確実にゴブリンキングの身体は消え去っていった。
そして、最後の最後だった。
「っ!」
旨の真ん中あたりだろうか。
歪な形をした真っ黒い石のようなものが見えた。
あれが、この魔物の核……?
魔物には核と呼ばれる、人間でいうところの心臓が存在している。基本的にはどの魔物も持っていて、これを壊すと死に至る。
でも、あれだけ真っ黒な核を見たのは初めてだった。
これが原因なのだろうか?
映像はしっかり撮れたはずなので、後で解析してもらおう。
核も消え去り、完全にキングゴブリンの身体がなくなったのを確認する。
でも、これで終わりではない。
まだ倒せていなかったゴブリンたちはどうなっただろうか。
キングゴブリンを倒したことで一緒に消えていたらいいんだけど……。
「執行さん、そっちは?」
「……ダメみたいです」
落ち着いた声色で執行さんが言う。
私たちの視線の先では、執行さんの倒したゴブリンたちが再び立ち上がっていた。
その姿はやはり痛々しい。バラバラになった身体を継ぎ接ぎみたいに無理矢理くっ付けていた。
「仕方ない。一体ずつ倒していこう」
「はい」
私たちは、残りのゴブリンたちの掃討を始めたのだった。
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