46.クラスメイト
「――あれ? 執行さんじゃん」
私たちの前に現れたのは、派手な見た目をした3人組の女の子たちだった。
執行さんの知り合いっぽいし、おそらくクラスメイトかもしれない。
派手な服装にお化粧をした顔、まとっている陽の雰囲気。何よりも自信満々の表情が彼女たちの学校での立場を如実に表していた。
間違いなく、カースト上位グループの女の子たちだろう。
真ん中にいる一番派手な金髪の少女が、手を振りながらこちらにやって来る。
「珍しー。何してんの」
「いえ……」
執行さんの反応で、この三人との関係性は何となく察することができた。
もしかしたら意外な交友関係? なんて思ったけど、そんなことはなかったみたい。
まぁ、執行さんとはタイプが全然違うし、馬は合わなさそうだ。
木の女子たちのことを知らないから、決めつけはよくないけど。
「ぼっちじゃねぇんだ?」
「…………」
純粋な疑問みたいに聞いているけど、その聞き方はどうなの?
悪意の塊じゃないか。
ていうか、ぼっち?
ぼっち……って、独りぼっちってことだよね。
執行さんが?
ちら、と執行さんの顔を伺う。
執行さんは俯き加減で口をきゅっと結んで、返答に窮しているみたいだった。
派手女子の視線が私に向けられる。
「そっちは? 執行さんの妹?」
い、いい妹!?
私が執行さんの!?
え、周囲から見たらそんな感じなの……?
しかも今は迷宮保安官の制服を着ているのに。いや、この子たちにとっては迷宮保安官なんて知らないか。ダンジョンと言ったら配信者になるのだろう。
それにしても妹か……。姉はともなくとして、友達ですらなく……。
とりあえず否定しておく。
「いや、妹では」
「じゃあ、お姉さん……ではないすよね?」
「ま、まぁ。知り合いと言うかなんというか……」
「ふーん。そうなんすか」
興味なさそうに返事をされる。
じゃあなんで聞いてきたの……。
「でもこいつ、全然話さなくてつまんなくないすか?」
「え? そんなことないけど……」
「ふーん」
この女の子が何を言っているのか、全く理解ができなかった。
私と執行さん、普通に話すけどなぁ。
派手女子たちの興味は、再び執行さんへと戻される。
「てかさ、ここにいるってことは執行さんも探索者なわけ?」
「いえ、そういうわけでは……」
「迷宮シティにいるのに? レベルいくつなん?」
「……ありません」
「はぁ? んなわけないじゃん」
女の子たちが怪訝そうな表情になる。
この子たちにとっては、ダンジョンに行く人は探索者や配信者しかいないのだろう。だから当然、レベルやステータスを持っていると勘違いしているのだ。
どうやら執行さんは迷宮保安庁でのお仕事について、少なくともこの子たちには言っていないらしい。
だったら私から言うのも違うかもしれない。でも、誤解がなぁ……。
と思っていると、左に立っているツインテールの女の子が「あ」と声を零した。
「あれじゃね? 今日からスタート的な」
「あーね!」
真ん中の派手女子が納得する。
別の勘違いが生じてしまったけど、レベルやステータスを隠しているとマイナスに受け取られるよりはマシかもしれない。
「あ、そうそう。うちらさ、今度有名な配信者の人とダンジョン行くんだよね! てなわけだからさ、なんか困ったことあったら聞いてな? 同じ探索者なんだしさ」
「は、はい……」
「じゃあ、うちら行くわ!」
一方的に会話を打ち切ると、派手な女子たちは去って行った。
大きな笑い声を響かせながら歩いていく彼女たちの背中を見つめながら、私たちは立ち尽くしたままだった。
「今の執行さんの友達……じゃないよね?」
隣で執行さんが小さく頷く。
「……一応、クラスメイトです」
「そっか」
「すみません。あの人たちが失礼なことを」
「いいよいいよ、私は気にしてないし」
妹と言われたのは、流石にびっくりしたけど。
それよりも、だ。
「執行さんこそ、大丈夫?」
「え……?」
私の心配に、執行さんは首をかしげていた。
だけど、すぐに思い当たったらしくて、はっとした。
「……はい」
「そっか。ま、よく分かんないけど、私にとっての執行さんは、今、隣にいる執行さんだから。それは変わんないよ?」
「そう、ですね……。ありがとうございます」
「いえいえ。とりあえず、帰ろうか? お家まで送って行くね」
「はい。お願いします……」
「うん」
ポンポン、と執行さんの肩を軽く叩いて、私たちも再び歩き出すのだった。




