45.おそろっち②
「はい、執行さんの分」
お店を出たところで、執行さんに購入したバングルを差し出す。
店員さんのご厚意で、バングルは綺麗な包装紙に包まれていた。
レジで支払いをしていたとき(といっても保安庁の経費だけど)の店員さんの様子からして、たぶん、私たちの関係を勘違いされていた気がする。
執行さんは気にしていないのか気づいていないのか、特に気に留めた様子もない。
「ありがとうございます」
受け取った執行さんは、さっそくバングルを取り出した。
シルバーに青色の宝石(ハート型)がデザインされたバングルを左手首に装着する。
私を見て、少し照れたように尋ねてきた。
「どうでしょうか……?」
「似合ってる……でも、ここで着けても効果は分かんないよ?」
「あ、そうですよね……」
「気持ちはわかるけどね」
執行さんに微笑みかける。
私も執行さんと同じくらいには気になっていた。
「どのくらい効果があるのか気になるよね。武器の方も使ってみたいし」
「そういうことですか……」
「え? 他にある?」
「いえ……ないです……」
なんだか執行さんが肩を落とした気がするけど……。
え、なんで?
首をひねるけど、良く分からない。
「それじゃあ、帰る? 本当に装備品は見なくていいの?」
「はい。前と同じものがいいなと思ったので」
「分かった。執行さんがそう言うなら、津守さんには伝えておくよ」
「お願いします」
バングルを買ったから遠慮しているのか。それとも本当に前の装備品(衣装)が気に入っているのか。どっちもの可能性もあるか。
執行さんのことは執行さんにしか分からないから、執行さん本人が言うのであれば、断る理由はない。
私の武器と二人の装飾品を購入して、今日は帰路に就くことにした。
駐車場に向かって、モール内を歩いていく。
ちら、と隣を見ると。
さっき一瞬だけ肩を落とした執行さんだったけど、もう気持ちは切り替わっているらしい。
手首に光っているバングルを見て、小さく微笑んでいた。
まるで可憐なお花が咲いているみたいな姿に、思わず私まで笑みが零れる。
なんだか、今日は執行さんの新しい一面に出会ってばかりだ。
いや……それは違うか。
私にとって新しく感じているだけで、こっちが素の執行さんなのかもしれない。
それだけ、私たちの距離が縮まっているってことかな?
私にとってはダンジョン調査において命を預けていると言っても過言ではない相手だ。距離が縮まるのはいいことだと思う。
そういう意味でも、今日は一緒に出掛けられてよかった。
提案をしてくれた津守さんに感謝。
なんて思っていると、不意に執行さんがこちらに顔を向けた。
ちょっと凝視し過ぎていたかもしれない。
「……あ、あの佐々貴さん?」
「なぁに?」
「いえ……。その、何か」
「ん? いや、執行さん可愛いなって」
「かっ!? そんなこと……」
「甘い物が好きとか、お揃いがしたいとか。そういうところもあるんだなって」
「それは、その……はい」
わずかにほっぺたを紅潮させた執行さん。
俯ぎ加減で小さく頷いた。
「……でも佐々貴さんくらいです」
「そう?」
「はい……」
再び執行さんは小さく頷く。
「私にこんなにしてくれるのは、佐々貴さんくらいですから」
「そんなこと」
ないと思うけど。
という私の言葉は、前方からの元気のいい声にかき消された。
「――あれ? 執行さんじゃん」
大きく手を振りながら歩いてくるのは、派手な見た目をした3人組の女の子たちだった。
執行さんと同年代くらいに見える。
知り合いっぽいから、同級生――クラスメイトだろうか?




