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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
東京迷宮シティ

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44.おそろっち

 お昼ご飯を食べたあと。

 装飾品の件を津守(つもり)さんに相談したところ、快く了承してもらえたので私たちは一番最初に訪れた遠距離魔法用の武器屋さんを再び訪れていた。


 金属バットを購入した近接武器のお店でも装飾品は販売していたけど、執行(しぎょう)さん的にはこちらのお店の方が良かったらしい。

 装飾品が並べられているガラスケースを前に、執行さんは真剣な表情だった。

 食い入るように見つめて装飾品を選んでいるみたい。


 その視線の先は、先ほど見ていた派手なデザインのイヤリングだった。

 本当に私に似合うと思っているのかもしれない。

 えー? 執行さんから見た私って、そんな大人っぽいというか、お姉さんな感じで見られているのだろうか? 

 そう思ってくれているなら、素直に嬉しいけど……。


 と、イヤリングを見つめていた執行さんがこちらに振り返る。


「……イヤリングはやめておいた方がいいですかね?」

「うーん。ダンジョンで動き回るから、落ちちゃうかもしれないなって思ったんだよね」

「あ、たしかに……」


 納得したように執行さんが頷く。


 当然、それは作った人も売っているお店の人も理解しているだろう。

 だからたぶん、普通のファッションとして身に着ける時よりも落ちにくい加工はされていると思う。

 

 とはいえ。

 ミノタウロスやミノタウロスアンデッドとの戦闘を経験すると安心はできなかった。

 それに戦いの最中に外れてしまうと、たぶん気が付かない。

 広いダンジョンの中で小さなイヤリングを探すのは骨が折れそうだ。


 金額的にも、決して安くはない。

 普通に私のお給料1ヶ月分はする。魔物との戦いで破損してしまうのは仕方ない割り切れる(正直言うとできない)けど、「歩いていて紛失しました」なんて報告したら津守さんに何て言われるか。

 だったら、敢えて紛失しそうなイヤリングにする必要はない。

 

 身につける箇所やデザインは多少変わるかもしれないけど、はめ込まれた宝石の種類が同じなら効果は同じだ。だから、もっと紛失しなくて邪魔にもならないアイテムにしたほうがいいだろう。

 例えば……。


「執行さん。こっちのブレスレットとかどう?」

「ブレスレットですか」

「指輪は武器を持つのに邪魔になるかもしれないし、手首が一番いいんじゃないかなって」

「そうですね」


 こくこく、と執行さんは頷いて、ブレスレットやバングルなど手首にはめる装飾品を物色し始める。

 

佐々貴(ささき)さんはこだわりなどは」

「特にないよ。青い宝石のにしてくれれば」

「そうですか?」

「うん。ていうか、執行さんこそ宝石は変えてもいいんだよ? 自分に合う効果のものを選んでくれて」


 おそろっちにする、と言ったものの丸々全てを同じにする必要はない。

 

 私は少しでも魔力の消費を抑えて、治癒魔法を使えるようにしたいから青色の宝石を選んだ。でも、執行さんが魔法の威力が欲しいと思うなら赤色の宝石でもいいし、その他の宝石でもいい。

 執行さんが欲しいな、と思うものは執行さんにしか分からない。


 例え宝石の種類が違っても、元のブレスレットのデザインが同じならお揃いにはなるはずだ。


「……同じでは、ダメでしょうか」

「へ? ダメじゃあないけど」

「じゃあ、同じがいいです……」

「そっか。じゃあ、そうしよう」


 執行さんが青い宝石を選んでも問題があるわけじゃない。

 魔力の消耗を抑えて燃費が上がるのは、どの探索者にも効果はあるはずだ。


 それからしばし。

 私たちは真剣にガラスケースと睨めっこをして、装飾品を選んでいた。

 ……といっても、ほとんど執行さんに任せきりというか、私は質問にちょっと答えるくらいだったけど。


「……これはどうでしょうか」

「うん。良いと思う」

「本当ですか?」

「うん。可愛いと思ったよ」

「良かったです……」


 ……いや、待てよ?

 執行さんが選んでくれたブレスレット……いや、正確にはバングル? を改めて見る。


 シルバーのバングルで、桜の花弁模様が刻印がされているデザインはすごく可愛い。

 そこに異論はない。

 でも、中央に埋め込まれた青色の宝石はハート型だ。

 さっきまでは可愛いデザインだなって思っていたけど、もしかして……。もしかしなくても、これって恋人同士が身に着けるアイテムなのでは?

 

 執行さんは分かっているんだろうか?

 ちらっと執行さんの顔を窺う。

 執行さんは僅かにではあるけど、どこか恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに、少しだけ頬を朱に染めていた。


「あの、お揃い……嬉しいです」


 ……これは分かってないな。

 単純におそろっちが嬉しい、といった感じみたいだ。

 

 とは言っても。

 私とのお揃いをこんなにも喜んでくれている女の子の笑顔に、水を差す勇気があるはずもない。


 ま、まぁ?

 デザインが可愛いのは間違いない。

 それに仮に恋人同士が身に着けるものだったとしても、それを私たちが身に着けてはいけないという法律はない。


「か、買ってくるね?」

「はい。ありがとうございます」


 レジに向かった私は店員さんに声を掛けて、お揃いのバングルを購入したのだった。


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