41.武器選び⑤
「あっ、これは……?」
斧やハンマーが並んでいたコーナーの端っこで、私の目を引いた武器。
それは立てかけて置いてある金属バットだった。
……これも武器、なのかな?
「新谷さん。これも武器なんですか?」
「え、どうでしょうか……少々お待ちください」
新谷さんにも想定外だったのか、ちょっと困惑しているみたいだった。
調べてくれるらしく、手にしていたタブレットを素早く操作し始める。
「はい。どうやらハンマーの一種のようです」
「ハンマーの」
言われてみれば、ドラマで不良が振り回していたり、洋画でダークヒロインが振り回していたりするのを見たことがある。洋画のは木製バットだったかもしれない。
それは兎も角として。
武器と言えば武器。
剣でも刀でもないから、ジャンルはハンマーに分類されるのも納得はできた。
……でき、るかな?
その辺の疑問や、なんで金属バットがあるのか、といった根本的なことは一旦置いておいて。とりあえず手に取ってみた。
わぁ、めちゃくちゃ手に馴染むな……。
最近だと、金属バットに触れる機会はたまにバッティングセンターに行ったときくらい。
でも、今日見てきたどの武器よりも手に馴染んだ。
津守さんが言っていた「これだ!」って感覚はこれなのかもしれない。
……いや~、でもなぁ。
ここに置いてあるってことは、ちゃんとダンジョンで使える正式な武器なんだろう。
とはいえ。
金属バットを買って帰ったら、流石の津守さんもびっくりするかもしれない。
ここは大人しく、普通に他の武器にしておこう。
私でも扱いやすそうな短めの剣とか。
バットの長さや重さに近い武器はたくさんあると思う。
手に持っていた金属バットを元の場所に戻そうとすると、執行さんが「あの」と声を掛けてきた。
「それ、戻すんですか?」
「うん。やっぱり普通に武器っぽい武器にしようかなって」
「そう、ですか……。なんだか佐々貴さんに似合うなって思ったんですけど……」
「え、そう?」
「はい。理由はわからないですけど……」
ふーん。
そっか、そっか。
似合うね。
少なからずの付き合いのある執行さんには、なにか感じ取ったものがあるのかもしれない。
「実は……というほどでもないけど、私さ、高校時代はソフトボール部だったんだよね」
「そうだったんですか」
「うん。だから持ち方が慣れてたから、似合うって思ったのかも」
私の説明に執行さんは「そうだったんですね」と納得した様子だった。
しかしまぁ、似合うと言ってもらえると嫌な気はしない。むしろ嬉しい。
まぁ、金属バットが似合うというのは誉め言葉かどうかは微妙かもしれない。けど、ソフトボール部だった私としては、金属バットが似合う女というのは誉め言葉なのだった。
「……案外、いいかもしれませんね」
ぽつり、と新谷さんがつぶやいた。
数回小さく頷いて、私を目を見て口を開く。
「剣や刀と同じくらいリーチはありますし、それでいて自傷の心配はほとんどありません。ハンマーや斧と比べると重さも手ごろで小回りも利きます。持ち運びもケース等に入れれば邪魔にはならないはずです。それに何より、佐々貴様が扱いに慣れていらっしゃるのなら、ベストな選択かもしれません」
た、たしかに……。
新谷さんの説明に私は同意するように頷いた。
最初は自分に馴染みがあったから――と言っても、最近はたまにバッティングセンターに行くくらいだけど――手に取ってみただけ。
でも、冷静に考えると今日見て回った様々な武器のいいところを集めたような武器なのかもしれない。少なくとも私にとっては。
ちらっと、隣にいる執行さんの様子を伺って見る。
似合うと褒めてくれたけど、実際にダンジョンで使うとなったら別かもしれない。二人で行う調査に使うのだから、執行さんが別の武器の方が良いと言うのなら考え直した方がいいだろう。
執行さんは、こくっと首肯してくれた。
「良いと思います」
「そ、そう? じゃあ、これにしちゃおうかな」




