40.武器選び④
新谷さんと合流して、私たちが向かったのはモールの3階に構えている近接系の武器専門店だった。
先ほどの遠距離魔法武器のお店がシックで高級感のある店内だったのに対して、こちらのお店はファンタジー世界に迷い込んだような中世風の作りになっていた。
映画の世界に入ったみたいで雰囲気がすごい。
剣や刀、ハンマーに斧などの他にも、鎧や兜などの防具も扱っているみたいだ。
西洋、東洋に関係なく、たくさんの種類が置いてある。
「……すごいですね」
「ね」
心なしか、先ほどよりも執行さんの興味も惹かれているみたいだ。
自分が刀を使っているからシナジーがあるんだろう。
このお店も自由に手に取って見て良いと言われたので、早速見て回ることにした。
まずは近接武器の花形と言ってもいいかもしれない、剣や刀が置いているエリアに向かう。
日本家屋で飾られている日本刀みたいに、多くの剣や刀が鞘に納められた状態で横向きに並べられていた。
端っこには長さが2メートルくらいある長い剣も置いてある。流石にあれは私には扱えない。
とりあえず、目の前にある赤い鞘の剣を手に取ってみる。
重さは1.2㎏らしい。
鞘から少しだけ剣を抜いてみると、銀色の刀身が姿を現した。
「おぉ……」
ピカピカに磨かれた刃は、自分で持っているのに怖いくらいだ。
逆に言えば、そのくらいのほうが武器として威力を発揮してくれるだろう。
やはりと言うべきか、さっき見た遠距離魔法用の武器よりも、自衛や執行さんのサポートに向いてそうだ。
刃を鞘に戻した状態で、柄に握る。
店内なので周りに気を付けて、小さく鞘に収まった剣を構えてみた。
ワンドやロッドに比べたら、剣の方がしっくりくる気がした。
一旦、剣を棚に戻して、その隣の刀を置いている棚に移動する。
一番近くにあった刀を手に取り、剣とお味用に鞘に収まっている状態で小さく構えてみた。
……あれ?
剣と刀って、同じでいいんだろうか?
ふと疑問に思ったので、隣にいる執行さんに質問してみる。
「ね、執行さん。剣と刀って違うのかな?」
「たぶん、違うと思います」
「やっぱりそう?」
「私は剣には詳しくないですけど……」
そりゃあそうだ。
執行さんの実家は剣術の家元とは言っても、使っているのは剣ではなくて刀。
詳しいのは刀のほうだろう。
ということは?
「刀にしたら、執行さんに教えてもらえたり?」
「え……」
軽い調子で聞いてみたんだけど、執行さんの反応は予想外だった。
なんていうか、僅かに顔が引きつったというか……。
家元の家系の子に、簡単に口にして良い話題ではなかったのかもしれない。
執行さんが困っているみたいだったので、私は慌てて自分の言葉を否定した。
「ご、ごめん! 素人が執行さんに気楽な考えて言っちゃだめだよね。全然気にしなくていいから、ごめんね」
「あ、いえ……」
執行さんの顔が、少しだけほっと安堵したように見た。
「私の、その……ダンジョン用ではないですから、佐々貴さんはきちんとした人に習ったほうがいいと思います」
「そっか。そうだよね。そうする」
努めて明るく言って、私たちは剣や刀のエリアから、他の武器のエリアに移動する。
こっちには、斧(バトルアックスとかハルバート、と名前が色々あるみたい)やハンマーなどの大きな武器が置いてあった。
斧かぁ。
津守さんが探索者だったときに使っていたと言っていた。
私に扱えるとは思えないけど、物は試しと手に取ってみる。
重さは3キロくらいで持つだけなら、なんとかなる。でも、ダンジョンで魔物相手に使えるとか言われたら、答えは否。
私の体格や筋肉では持ち運びも大変だし、よろめいて周りに迷惑をかけてしまうかもしれない。
手にしていた斧を棚に戻していると、新谷さんが傍にやって来た。
「懐かしいですね」
「え?」
思わず零れた私に言葉に、新谷さんが苦笑を浮かべる。
「すみません。こう見えて私もかつては探索者だったものでして」
「そうだったんですか」
それで今回、私の武器選びの案内を任されたのかもしれない。
「新谷さんも斧を使っていたんですか?」
「あ、いえ。私ではなく、使っていたのは同じパーティーを組んでいた友人です」
「そうなんですか」
「はい。佐々貴様も斧にされるのですか?」
「いやぁ……私には無理そうです」
「佐々貴様の目的を考えると、もう少し小回りの利く武器のほうがいいかもしれませんね」
その意見に同意だった。
ということで、斧の横の売り場に飾られているハンマー……も、斧と同じようなものだろう。私に扱うのは難しそうだ。
……やっぱり、遠距離魔法用のお店にあったメイスか、ここにある剣や刀がいいのかなぁ。
そう思いながら視線を横に向ける。
「あっ、これ……」
一角に置いてあったその商品に目を惹かれたのだった。




