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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
東京迷宮シティ

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39.武器選び③

 執行(しぎょう)さんはレジの横にある大きなガラスケースを見ていた。


「執行さん」

「あ、佐々貴(ささき)さん」


 声をかけると振り返る。


「武器、見つかりましたか?」

「ごめんね、一次のお店を見に行くことになったから呼びに来た」

「そうですか」


 小さく頷いて、執行さんがこちらに足を踏み出す。

 でも、視線は先ほどまで見ていたガラスケースの中に惹かれているらしい。なんだか後ろ髪を引かれている様子だった。


「何を見てたの?」

「あ、いえ、特には……」

「そう?」


 特には、と言われても気になったのでガラスケースの中を見る。

 どうやら装飾品を展示しているブースのようだった。


 様々な色の宝石が埋め込まれた指輪やネックレス、ブレスレットなどが飾られている。

 魔法の威力を強化したり、魔力の消費を抑えたり、魔力の回復を早めたり、色々な効果があるらしい。

 説明書きによると、石のみの販売のほか、オーダーメイド品の受注や、このお店で購入した武器への埋め込みも受け付けているとか。

 

 ……装飾品かぁ。


 今日は私の武器を買うのがメインみたいなところだけど、装備品やその他の道具も、必要であれば購入していいと津守さんに言われている。

 執行さんは執行さんで、ちゃんと自分のことを考えてお店を見ていたらしい。


 正直、私は武器を選ぶことに必死になっていて、装飾品なんて思い浮かばなかった。

 執行さん、偉い……。


「欲しいものがあったんじゃないの?」

「いえ……私ではなくて」

「……?」

「佐々貴さんに似合いそうだな、と……」

「え、私?」


 思わず、きょとんとしてしまった。

 そんな私の反応に、執行さんは僅かに時間を置いてから、はっとした表情になった。視線を逸らして、まるで言い訳をするみたいに言葉を繰り出す。


「あ、いや……似合うと言うか、佐々貴さんの魔法の補助ができないかなって思いまして」

「そういうこと。ありがとね」


 執行さん自身が使う装飾品ではなくて、私のために探してくれていたらしい。

 執行さんの買い物でもあるのに、何だか申し訳ない。

 でも、私を思ってくれるのは嬉しい。


「どれがおすすめなの?」

「えっと……左側の真ん中にあるイヤリングです」


 執行さんが人差し指で示した先を見る。

 大きなハート型をした金色のイヤリングで、青色の宝石が飾られていた。説明によると魔力から魔法に変換する際の効率をあげることで燃費を上昇させる効果があるらしい。


 ふむふむ。

 治癒魔法にも効果はありそうだ。

 流石は執行さん。ダンジョンに入るようになって一ヶ月ほどだけど、目の付け所が良い。


 でも……。


「私にはちょっと派手で可愛すぎない?」

「そう、でしょうか?」


 こてり、と執行さんが首をかしげる。


 装飾品の効果的にはばっちりなんだけど、デザインが私よりも大人っぽいカッコいい人に似合うイメージだ。それこそ、執行さんみたいにすらっとしてる美人に。

 え?

 もしかして、執行さんから見た私って、そんな風に見えてる?

 それはそれで嬉しいけど……。


「あ、執行さんは? 自分が使いたい装飾品とか、見つけてないの?」

「私ですか?」

「うん。自分用に良さそうなものはなかった?」

「私のものは……やっぱり、買って頂かなくてもいいかなと」

「遠慮はいらないよ? 少しでも強くなったら、ダンジョン内での安全とか調査の効率も上がるんだしさ。津守(つもり)さんだって、そのほうが喜んでくれると思うし」

「そう、でしょうか」

「そうそう。さっき執行さんが教えてくれた装飾品と同じものでもいいと思うよ」


 私たちが相手をするのはアンデッドだから、一撃の攻撃力を上げることよりも、魔力の消耗を抑えて燃費を上げたほうがいいだろう。

 私がトドメを刺すまで、執行さんには何度かアンデッドを倒してもらうことになるのだから。


 そうなると、先ほど執行さんが私に提案してくれた青色の宝石を使用した装飾品がぴったりだ。


「そ、それって、お揃いってことですか……?」

「え!? いや、そういう意味だけどそういう意味じゃないっていうか」


 まさか、そう捉えられるとは。

 宝石は同じものがいいのではないか、と言ったけど、デザインまで一緒にしようと言ったつもりはない。


「私と一緒って、執行さんも嫌でしょ?」

「い、いえ、私は構いません」

「そ、そう?」

「むしろ、その……」


 執行さんは私から視線をふいっと逸らす。

 ほっぺたを僅かに朱に染めて、小さな声で言った。

 

「……今までしたことがなくて、少しですけど、憧れがあるというか」


 もじもじと両手の指さき同士を遊ばせている様子は、いつもの凛とした執行さんからは想像できない姿だった。

 あれだけ強くても、私より背が高くても、カッコいい美人さんでも、やっぱり年下の女の子なんだなぁ。なんだか、そのギャップにきゅんとしてしまった。


 断る理由なんてなかった。


「じゃあ、せっかくだし、おそろっちにしようか」

「お、おそろっち……」

「うん。デザインも宝石も二人でよく選ぼうよ」

「は、はい。あ、でも……二人分も買うとお金が……」


 嬉しそうにしていた執行さんだけど、再び遠慮からか表情が曇ってしまう。

 実家が剣術の家元で、幼いころから厳しくされてきたのかも。それが遠慮というか、気遣いに繋がっているのかもしれない。


「んー、そこまで言うならお昼にでも津守さんに確認してみるよ」


 津守さんから許可が出たら、さすがに不安も綺麗さっぱり消えるだろう。


「とりあえず、外に出よっか? 新谷さんが待ってるし」

「あ、そうですね。すみません、行きましょう」


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