38.武器選び②
新谷さんに案内してもらって、店の奥に進む。
「こちらです」
案内された先。
ガラスケースの中には、占い師さんが使うような水晶玉がいくつか並んでいた。
「こちらは『オーブ』と呼ばれる比較的新しく開発された遠距離魔法を使用する探索者用の武器です」
「オーブ。どのように使用するんですか?」
「基本的にはロッドやワンドと同じです。こちらに魔力を注ぐことで魔法を出力します。最大の特徴、利点は魔力を内部に滞留できることでしょうか」
「滞留ですか?」
「はい。ロッドやワンドの場合は武器に魔力を留めることはできないので、魔法を使う際は使用者の魔力を毎回武器に通してから魔法として出力しています。しかしオーブの場合は内部にある程度の魔力を蓄えることができるので、魔法を出力するまでの時間がわずかに短縮できるというわけです」
決してワンドやロッドが魔法を出力するのに遅い、というわけではない。
でも、魔物と戦う上では、0.1秒でも早く出力できるのは利点だ。
たぶんだけど、上級の探索者にはニーズがあるのではないだろうか。
「速度に加えて、持ち運びの点でもメリットがあります」
「と言いますと?」
「オーブは使用者が魔力を通すと浮遊する仕組みになっているのです」
「浮くってことですか!?」
「はい。繊細な技術が求められますが、身体の傍でしたら自由に動かせる方もいらっしゃいます。ワンドやロッドに比べて邪魔にならない、両手が空いた状態になるのも利点ですね」
「なるほど……」
それは魅力的かもしれない。
執行さんが倒したアンデッドの元に急いで駆けつけて、治癒魔法でトドメを刺す必要がある。今の何も持っていない状態と、ほぼ変わらないで移動できるのはありがたい。
ただ、心配なのは……。
「あの……新谷さん」
「はい」
「ちなみにですけど、これって投げたら割れますよね?」
「割れますね」
「やっぱりそうですよね」
最新の武器とは言っても、水晶は水晶みたいだ。
攻撃できる魔法を使える探索者ならいいけど、私の場合は治癒魔法しか使えない。自衛や執行さんを助ける時は武器で直接攻撃することになる。
そのたびに割れるのなら、それはスマホを投げるのと同じだった。
「……投げる予定があるのですか?」
「あ、いえ! もしもの時と言いますか……」
怪訝そうな新谷さんが尋ねてくる。
そりゃあ、遠距離魔法用の武器を投げるって言われたら、こんな顔にもなる。
何を言っているんだお前は? と私でも思う。
言葉足らずだったので、具体的に説明をする。
私が単に遠距離魔法用の武器を求めているのではなく、自衛や執行さんのサポートでも使用したい旨を話すと、新谷さんは納得してくれた。
「――なるほど。そういうことでしたか」
顎に手を添えて、思案する仕草のまま新谷さんが小さく数回頷く。
「オーナーからは遠距離魔法用の武器だけではなく、近距離魔法用の武器を売っている店舗も手配しておくようにと言われていて、少し疑問だったのです。執行様の武器かと思っていたのですが、そのような理由だったのですね」
「ややこしくて、すみません」
「いえいえ、こちらこそ意図を汲み取れておらず申し訳ございません」
謝罪を口にして、続けて新谷さんが提案してくる。
「それでしたら、遠距離魔法用の武器ではメイスが該当するかと思いますが……いっそのこと近接系の武器のほうが良いかもしれませんね」
「そうなりますかね」
「はい。そちらも見て、最終的に決めるのがよろしいかと」
「そうですね……そうします」
貸し切り状態にしてくれたお店の方には申し訳ないけど、やはり近接系の武器も見ておくべきだろう。
津守さんの言う「これだ」っていう武器に出会えるかは分からないけど……。
「じゃあ、私は執行さんを呼んできますね」
「分かりました。では私は先方に連絡をしますので、外で待っております」
新谷さんと別れて、私はお店の中にいるであろう執行さんを探す。
途中までは一緒にいたんだけど、どうやらオーブの説明を受けているあたりではぐれてしまったらしい。
はぐれると言うのは大げさかもしれないけど。
執行さん、高校生だし。
流石に子ども扱いしすぎかな……。
案の定、すぐに執行さんの姿を見つけることができた。




