37.武器選び①
「佐々貴様、執行様。まずはこちらになります」
新谷さんの案内で、最初にやって来たのは遠距離系魔法を使う探索者向けのお店だった。
シックで高級感のあるお店で、スーツ姿のきっちりとした店員さんが待機している。
ぺこりと会釈して店内に入ると他のお客さんの姿はない。
もしかすると、この時間だけ貸し切りにしてもらっているのかもしれない。
落ち着いた雰囲気の店内には、杖やステッキ、メイスなどの武器が並んでいた。
似たようなものでも、材質や長さ、装飾など様々な種類があるみたいだ。
「ご自由にお手に取ってください」
「ありがとうございます。とりあえず、いくつか見てみます」
「はい。何かございましたら、遠慮なくお声がけください」
そう言って、新谷さんは少し離れたところに移動した。
私が気を遣わなくてもいいようにしてくれたのかもしれない。
……とはいえ。
何から手を付けたらいいものか。
普通の探索者の場合は、魔法との適性や相性を考慮して決める。
でも、私の治癒魔法は例外で、そもそも武器がなくても使える魔法だ。だから、相性などは考慮する必要がない。
逆に言えば、この場にあるどの武器でもいいから、選択肢が広すぎて困っているのだった。
津守さんが言っていたみたいに、見た目や持ってみた感覚で決めるしかないか。
とりあえず、眼の前の棚からチェックしていこう。
一番手前に飾られていた、黒色のロッドを手に取ってみる。
どうやら入り口近くは、ロッドやメイスなど比較的短めの武器が置いてあるコーナーのようだった。
長さは50センチくらいで、先端は灰色の球状。その球の中心には、赤色の宝石が飾られていた。
「ん~」
予想していたよりもめちゃくちゃ軽い。
商品を説明したボードには300グラムと書いてあった。
赤い宝石の効果で、出力される魔法の威力が少し上がるみたいだ。
……ていうか、高っ!
説明文を読んでいる途中、お値段が目に入って思わずツッコミしてしまった。
私が思っていたよりも0が1つ多い。
そ、そういうものなの……? お給料、1ヶ月分じゃ買えないんですけど……。
お店の雰囲気から察していたけど、かなりランクの高いお店に案内されたみたいだ。
ま、まぁ、経費だし……。それに今後のアンデッド調査で必要になるのだから仕方ない。
ロッドを棚に戻して、その隣にあるメイスを手に取る。
60センチの銀色のメイスで、先端はとげとげした造りで殴られたら痛そうだ。
「あ、意外と重い」
こちらは見た目よりも重たくて、その重量は2キロと書いてある。
ほぼ小型のハンマーみたいなものかもしれない。
打撃力は申し分ないけど、もう少しリーチがあってもいいかも?
続いて、1メートルほどの長めの武器が置いてあるコーナーに向かう。
先ほどよりも長いロッドや、木製の杖(ワンドと言うらしい)が並べられている。
短い武器と比べると、長い方が遠距離系……というか魔法使いっぽく感じた。
そういえば、柏ダンジョンで出会った永遠子さんは木製のワンドを持っていた。あれは配信を見る人を楽しませるために、ゲームやアニメに登場しそうな王道な武器にしているのかもしれない。
「手には馴染むかも……重さもいい感じ」
でも、木製だと耐久面で不安だ。
魔法を使うためではなくて、魔物と直接戦うわけだから、耐久や威力を考えると木製よりは金属製のほうがいいだろう。
ていうか、そもそもの話。
魔法を使うための武器ではないのだから、遠距離系の武器ではなくてもいいのかもしれない。身を守るためなら近接系の武器でいいわけだし。
うーん……と腕組みをして悩んでいると、新谷さんが声を掛けてくれた。
「佐々貴様。いかがですか?」
「すみません……色々と悩んじゃってて……」
「いえいえ。佐々貴様の場合は武器との相性がない分、選択肢が多くて人よりも悩みますよね」
「はい……」
やはり、私が求めているのが「遠距離系の魔法を使う武器」ではないから、選ぶのが難しくなっているのだろう。単に魔法を使うためじゃなくて、自衛や執行さんのサポートがメインだから、近接系の武器も含めて色々と見て決めたほうがいいのかもしれない。
「……参考になるかは分かりませんが、奥にはワンドやロッドなどのように棒状ではない武器もあるにはあるのですが」
「そうなんですか?」
「ご覧になりますか?」
「はい。お願いします」
「かしこまりました。こちらです」
棒状ではない遠距離系魔法用の武器って?
あまり想像ができず、私は少し首をかしげながら新谷さんについて行った。
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