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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
柏ダンジョン

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34/39

34.お邪魔でしょうか?

執行(しぎょう)さんとですか!?」


 予想外の提案に思わず声が零れる。

 私の反応に津守(つもり)さんは苦笑を浮かべていた。


「そんなに驚かなくても」

「いや、だってですね……」


 決して私が嫌なわけではない。

 むしろ、執行さんに来てもらえるのは嬉しい。

 

 津守さんの知り合いの方に案内や説明をしてもらえるとはいえ、実際にダンジョンで魔物と戦ってきた執行さんの視点でアドバイスもほしい。これから先も一緒にアンデッド調査をしていくのだから、執行さんの意見は取り入れたい。


 だけど、執行さんはどうだろう。

 執行さんと一緒に行くってことは、まさか高校を休んでまで行くことはないだろう。

 ということは、放課後とか、土曜日日曜日といったお休みの日になる。

 せっかくのお休みの日に私と一緒にいたいだろうか……。

 

 ちら、と執行さんの顔を窺う。

 ちょうど視線が重なった。


「武器、買うんですか?」

「あ、うん……。私も持っておいた方がいいかなって」

「私が不甲斐ないせいでしょうか……」

「いやいや! そんなことないよ、執行さんはすごく心強いから」


 実際、これまでのアンデッド調査が上手く行ったのは執行さんのおかげだ。

 私の治癒魔法で倒しているとは言っても、私がしているのは動けなくなったアンデッドにトドメを刺しているだけ。

 魔物との戦いは、ほとんどを執行さんに任せきりになっていた。


「不甲斐ないのは私の方だよ」

「そんなこと」

「あるよ。今回、柏ダンジョンでそう思わされた」


 不甲斐ない、とは少し違うのかもしれない。

 実際のところ、私は治癒魔法を使うわけだし、探索者の人に聞いても後ろにいてサポートに徹していればいいと思う人も多いかも。


 でも。

 私たちは二人だし、調査の安全性や効率の面でも、私が強くなるほうがいい。

 執行さんにおんぶにだっこでいるわけにもいかないし、執行さんにこれ以上のパフォーマンスを求めるわけにもいかない。


「今回のミノタウロスみたいな時に執行さんを助けられるようになりたいし、それに私がそれなりに戦えたら、執行さんも私を気にせず魔物と戦えるでしょ?」

「それは、そうかもしれませんが」

「でしょ? だったら、やるべきかなって。幸い、お金は出してくれるみたいだし」

 

 執行さんに安心してもらおうと、最後は冗談っぽく言ってみる。

 ……って、違う違う。

 なんか一緒に行く前提で話をしちゃったけど、そうじゃない。

 ちゃんと断りやすい空気を作ってあげないと。


「ていうか、執行さん行きたくないよね!? ごめんね、仕事じゃないし、断ってもらって全然いいから」

「あの……私が行くのは、お邪魔でしょうか……」

「え? 邪魔ではないけど……」


 邪魔ではないか聞いてくるってことは、一緒に行くことを前向きに考えてるってこと?

 執行さんも何か見たいものがあるのだろうか。

 執行さんが義務感ではなく、本当に行きたいのなら断る理由もないけど……。


「でも、いいの? お休みが潰れちゃうよ?」

「どうせ稽古くらいしかすることもありませんから」

「そ、そう?」

「はい」

「そっか……じゃあ、一緒に行こっか? 実を言うと、私も執行さんが来てくれたら嬉しいなって思ってたから」

「本当ですか」

「うん。だって、執行さんの目線でもアドバイスがほしいなって」

「そういうことですか……」

「え?」

「いえ、なんでもないです」


 小さく首を横に振る執行さん。

 

 え? どういうこと?

 私はイマイチその反応の意図が分からず、首をかしげる。

 変なことを言ってしまったのだろうか? いや、でも、アドバイスが欲しいなって言っただけで、変なことは言っていないような。

 分からん……。

 

 うーん、と思っていると隣の津守さんが口を開いた。


「執行君も行くんだったら、来週の土曜か日曜がいいだろう。先方にはそう伝えておこう」

「あ、お願いします」

「では、私は保安庁に戻るよ」


 よいしょ、と津守さんが立ち上がって歩き出す。

 途中で振り返って言った。


佐々貴(ささき)君、執行君を連れて帰ってあげられるかい? もし、身体が辛いようだったら迎えをよこすけど」

「大丈夫です。私のは魔力だけですから」

「そうか。では、よろしく頼む」

「はい」


 手をひらひらと軽く振りながら津守さんが去って行った。

 その足音も聞こえなくなり、医療施設はしんと静かになる。

 

「それじゃあ、私たちも帰ろうか?」

「はい」


お読みいただきありがとうございます。

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