31.ミノタウロスと探索者
「気が休まらなくて申し訳ないけど、執行君が戻って来るまで仕事の話をしてもいいかな?」
「はい。もちろんです」
津守さんの言葉に頷く。
執行さんがメディカルチェックを終えて戻って来るまでは、もうしばらく時間がかかるだろう。
それまでお互いに黙っているのも気まずい。かといって、趣味の話をするとも思えない。必然的に仕事の話になるだろう。
「と言っても、柏迷宮やミノタウロスアンデッドについては現在解析中だ。だからアンデッドに関して、伝えられるような進展は今のところないんだけどね」
自嘲をするように津守さんは苦笑を浮かべた。
でも、それはそうだろう。ドローンで撮影したダンジョン内の映像は、既に保安庁に送られているとは言っても、すぐに解析が終わるとは私も思っていない。
「ただ、それ以外に分かったこともあるから、それを伝えておこうかなと思ってね」
「アンデッドのこと以外ですか?」
「まずはミノタウロスの件だね。これについては、佐々貴君の見立て通りで間違いないだろう」
「やっぱり、そうですか……」
柏ダンジョンは循環型のダンジョンで、主であるミノタウロスは倒されても一定の期間が過ぎればダンジョンの力によって復活する。
今回、ミノタウロスアンデッドを倒した後、すぐにミノタウロスが出現したのはそのせいだろうと思っていたが、やはりそうだったらしい。
「私たちは運が悪かったんですね」
「いや、そうとも言えない」
「どういうことですか?」
たまたま、討伐のタイミングと復活のタイミングが重なったのではないのだろうか?
「ミノタウロス復活のタイミングについては偶然ではなく、必然だった可能性も高いと思っている」
「必然……」
「まだ確証は得られていないが、解析班によるとミノタウロスアンデッドの存在がミノタウロスの復活を邪魔していた可能性があるとのことだ」
邪魔で復活できなかった?
探索者目線で言えば、ミノタウロスアンデッドとミノタウロスが一緒にいた方が厄介なのは間違いない。
でも、二体が同じ空間にはいられないのだろうか?
「共存はできない、ということでしょうか?」
「おそらく。柏迷宮のそもそもの設計として、主の広間には「ミノタウロスが一体」と決まっているのかもしれないね」
「なるほど……」
柏ダンジョンの「ミノタウロス」の席は1つと決まっていたのかもしれない。
ミノタウロスアンデッドがその席を奪っていたから、ミノタウロスは復活の準備が整っても復活できなかった。
でも、私たちがミノタウロスアンデッドを倒したことで、空席が生まれ、そこにすぐミノタウロスが座った……ということか。
津守さんや解析班はまだ確証を得られない、と言っているけど、可能性は高そうだった。
「それから、君たちが途中で会ったという探索者についてだけど」
「はい、どうでした?」
久遠さんと永遠子さん。
どちらも綺麗な金髪をしていた兄妹を思い出す。
「どうやら、うちと管理事務とで認識に齟齬があったようで、探索者事務所に依頼をかけていたらしい。迷惑をかけたね」
「いえ、驚きはしましたけど迷惑はなにも」
「そう言ってくれると助かる。正直なところ、アンデッドに関してはまだバタバタとしていてね……」
溜息混じりに津守さんが言う。
津守さんも大変なのだろう。
……そういえば。
久遠さんと永遠子さんは、私たちにあった時に主の広間でミノタウロスを倒したと言っていた。正確には、ミノタウロスアンデッドだったからトドメは刺せていなかったけど。
でも、動けなくなるくらいにボコボコにしたということだ。
勇者とか言っていたのは知らないけど、やはりそれなりに強い探索者、配信者なのは間違いないのだろう。
と、二人の姿を思い出して、ふと思いつく。
久遠さんは剣、永遠子さんは杖を持っていた。
……私も武器を持つのはありかもしれない。
お読みいただきありがとうございます。
もしよろしければ、ブックマークや評価(☆)を付けていただけると嬉しいです。




