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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
柏ダンジョン

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26.ミノタウロスアンデッド④

「なんとか足止めしてるから、今のうちに逃げよう」

「……分かりました」


 執行(しぎょう)さんは頷くと、日本刀を支えにしながら、よろよろと立ち上がった。


「倒しましょう」

「え!? 話聞いてた!?」


 私は逃げると言ったのだ。

 倒すなんて一言も言っていない。


「好機ですから。それに、私はまた何も役に立てていないので……」

「いやいや、執行さん! その身体じゃ無理だって。一旦退こう」

「いえ、私は大丈夫ですから」

「ダメだって」


 私だって、ここで倒せるものなら倒したいと思っている。

 一秒でも早くミノタウロスアンデッドを倒して、柏ダンジョンを再攻略して、情報を持ち帰りたい。その情報が姉の治療にも転用できるかもしれないから。いきなり目を覚ます、完治するのは難しくても、津守さんが言っていたみたいに前進はするかもしれない。


 姉を思うと、前回の八王子ダンジョンが空振りに終わったことで焦りもあった。

 でも。


 今は執行さんのことも大切だ。

 アンデッドの調査に役に立ちたいと思ってくれるの嬉しいけど、無理をさせるわけにはいかない。

 どうやって説得しようかと思っていると、


「……佐々貴(ささき)さん」

「なに?」

「どっちにしても逃げるのは無理かもしれないです」

「え」


 眉をひそめながら、執行さんが見ている方向に私も視線を遣る。

 体勢を立て直したミノタウロスアンデッドが、こちらに歩んで来ていた。一歩、また一歩と巨大な足音を立てながら近づいてくる。


 主の広間の扉に行くには、ミノタウロスアンデッドの横を通り抜けないといけない。

 見逃してくれるはずもないから、戦いは避けられないだろう。


 もう! 執行さんが駄々をこねるから!

 と責めそうになったけど、冷静になる。

 すぐに逃げ出していても、この様子では扉の前あたりでミノタウロスアンデッドと鉢合わせていただろう。


 ……最初から、道は一つしかなかったってことか。


 一回、深呼吸をしよう。

 迫りくるミノタウロスアンデッドを見据える。

 隣では執行さんが構えていた。


「執行さん。本当に無理はしないでね」

「はい」

「ちょっとでも無理だって思ったら、隙を作って逃げるから。ちゃんと従うって約束して」

「……はい」


 間があったのは気になるけど、たしかに頷いてくれた。

 言質は取った。

 ちゃんということを聞いてくれるだろう。


「じゃあ、攻撃には最後まで気を付けて」

「はい」

「……行こうか」

「はい」


 私たちは、それぞれがミノタウロスアンデッドの左右に駆け出した。

 私が右側、執行さんが左側。

 さて、ミノタウロスアンデッドはどっちに来るだろうか。


 ……私か。


 首を刎ね飛ばしたり、腕を斬り刻んだ執行さんよりも、尻尾と右足に治癒魔法を喰らわした私の方がヘイトを買っていたらしい。

 案外、アンデッドも考えているのだろうか?

 偶然で私が狙われた可能性も否定はできないけど。


 ……ん?

 よくよく見ると、ミノタウロスアンデッドの歩き方が変なことに気が付いた。

 右足を庇うような足の踏み出し方をしていた。

 少しでもいいから時間を稼ぐために攻撃したけど、思っていたよりも効果があったのかも。それに尻尾の先も、治癒魔法で消し飛ばしたままの状態になっている。

 治癒魔法で消滅させると、その部位は再生できないのかもしれない。


「……意外と勝機あるかも」


 ミノタウロスアンデッドが、私を木っ端微塵にしようと巨大な斧を振り上げた。

 この攻撃を受けたらひとたまりもない。たぶん、私なんて消し飛んでしまうだろう。


 でも。


「――ッ!」


 私と反対方向に駆け出していた執行さんが、ミノタウロスアンデッドの側面から接近した。人の技とは思えない速度で刀を振るう。

 次の瞬間。

 振り上げたミノタウロスアンデッドの両腕が、まるで野菜が輪切りされるように斬り刻まれて地面に落下した。手にしていた巨大な斧も落ちて、地面に突き刺さる。


 不意を突かれたミノタウロスアンデッドは激怒したように雄叫びを上げた。

 ピリピリと空気が肌を刺す。

 ミノタウロスアンデッドがくるりと体の向きを反転させる。どうやらターゲットは私から執行さんに変わったらしい。


 けど、それでは反応が遅い。

 執行さんはすでに次の動きに移っていた。


 私が瞬きをして、次に瞼が上がるときには。


「――ッ」

 

 ミノタウロスアンデッドの首が刎ね飛ぶ、二度目の光景に変わっていた。


お読みいただきありがとうございます。

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