24.ミノタウロスアンデッド②
主の広間に入ってすぐ、ミノタウロスアンデッドは私に気づいたようだった。
数秒間は私の動きを視線で追うだけだったけど、耳をつんざくような雄叫びを上げる。探索者によほどの怒りがあるのか、荒い鼻息で私を追いかけてきた。
ミノタウロスアンデッドが足を踏み出す度に、ドシンドシンと地面が揺れるような感覚がある。
スピードは、普通のミノタウロスよりは遅い。
けれど、そもそも身体が大きくて歩幅も広いから、ただ逃げるだけでは絶対に追いつかれてしまうだろう。
右側の壁が迫ってきたので、私は広間の奥に向かって方向を切り替えた。
まだまだ距離はあるけど、確実にミノタウロスアンデッドとの距離は詰まって来ている。
だけど、ミノタウロスアンデッドの背中が、完全に広間の入り口を向くくらいまでは引き付けたいところだ。できるだけ執行さんが視界に入らない角度にしたい。
広間の扉から見て、2時の方向に近づいてきたとき。
扉から執行さんが飛び出したのが見えた。
ミノタウロスアンデッドには全く見えていないはずだ。抜刀した執行さんが徐々にミノタウロスアンデッドの背後に迫っていく。
私はミノタウロスアンデッドに追いつかれないように距離は取りつつも戦況を見つめた。
執行さんが倒したら、すぐに治癒魔法でトドメを刺せるように準備をする。
そして、執行さんがミノタウロスアンデッドまで残り数メートルとなった瞬間だった。
「執行さん!」
「――ッ」
ミノタウロスアンデッドが急にブレーキをかけて立ち止まった。
かと思うと、くるりと身をひるがえして、その勢いのまま執行さんに向かって巨大な斧を振り下ろした。
直後、強烈な破裂音、爆発音が響き渡る。
執行さんは!?
この攻撃を受けたらひとたまりもない。
ミノタウロスアンデッドの攻撃に気づいて、回避行動をとっていたようには見えた。だけど、砂煙で無事を確認できなかった。
すぐに砂煙が晴れてくる。
石畳の地面には大きな陥没ができていた。まるで隕石が落下したかのような威力だ。
そして、砂煙の奥に人影が見えた。
良かった、執行さんは無事だった!
ほっと安堵していると、執行さんは加速してミノタウロスアンデッドとの距離を詰めていく。一気に肉薄して、斧を持っている右手を切断した。
さらに執行さんは止まることなく、ミノタウロスアンデッドの腕を足場にして駆け上がっていく。
このまま一気に頭を刎ね落とすつもりらしい。
その途中で尻尾による攻撃をしてきたが、私が先に伝えといたのも良かったのだろう。執行さんは冷静に尻尾を斬り落とし、ミノタウロスアンデッドの顔に迫った。
「――っ」
執行さんが洗練された動きで、刀を一閃する。
随分と太く筋肉質なミノタウロスアンデッドの首が刎ね飛ばされた。
すごい……。
流石は執行さんだ。
ミノタウロス……いや、ミノタウロスアンデッドを相手に全く引けを取っていない。上手に隙を作ることはできなかったけど、作戦は成功しそうだ。
執行さんはミノタウロスアンデッドの肩を蹴って、空中で態勢を整える。
そして、私に顔を向けて合図を送ってくれた。
「佐々貴さ――」
ここからは私の出番だ。
復活させて、もう一度執行さんにミノタウロスアンデッドの相手をさせるわけにはいかない。多少の無理をしてでも、この一回でトドメを刺そう。
駆けだそうとしたときだった。
「――え?」
首のないミノタウロスアンデッドが左手を振り抜いた。
刹那、私の視界から執行さんが消える。
「え? え?」
執行さんが吹き飛ばされたのだと理解するのに、少し時間がかかった。
だけど、すぐに現実に引き戻される。
「執行さんっ!」
強烈な拳の一撃を、空中でまともに受けられるはずもない。
吹き飛ばされた方向を見ると、壁際から大きな砂煙が立ち上っていた。
姿は見えないけど、無事では済んでいないだろう。
「嘘……」
自分で顔から血の気が引くのが分かった。
目の前では、首のないミノタウロスアンデッドが落ちた首を拾い、バキバキゴリゴリと胴体に接着させる。同様に右手も無理矢理にくっ付けて、斧を拾い上げた。
そして完全に元通りとなったミノタウロスアンデッドが私を見据えていた。
お読みいただきありがとうございます。
もしよろしければ、ブックマークや評価(☆)を付けていただけると嬉しいです。




