17.八王子ダンジョン調査完了
その後、私たちは無事に八王子ダンジョンの外に出た。
「うっ、眩しい……」
太陽の光に、思わず目を閉じる。
時計を確認すると、現在の時刻は午後2時を過ぎたところだった。
今日は本来、午後5時まで調査の予定だった。アンデッドがいなくて、調査が随分と順調にできたので、2時間半くらい早く終わったことになる。
報告のために管理事務所に入ると、事務所の人たちも驚いていた。
ダンジョンにアンデッドがいるという前提での調査だったから、こんなに早く戻ってくるとは予想していなかったのだろう。
なんなら、三毛猫を地上に戻すために往復しているから、予定よりも遅くなると思われていたかもしれない。
今回の件を担当していた女性が、慌ただしく駆け寄ってくる。
何か問題が発生して戻ってきたと思っているのかも。
「ど、どうされました?」
「調査が終わったので、その報告に」
「え!」
女性の目を大きく見開かれる。
「と、とりあえず、こちらへどうぞ」
と応接間に案内された。
そこで八王子ダンジョン内での出来事を簡単に話していく。
最初は随分と不安そうな表情をしていた女性も、シンプルにアンデッドがいなかったことや物陰や物音の正体は三毛猫だったことを聞いて、最後には安堵していた。
「――そういうことだったんですね」
「はい。あとは撮影した映像の解析待ちでしょうか」
詳しく解析すれば、私たちでは気づかなかったことが見つかるかもしれない。
担当の女性は「そうですね」と同意すると椅子から立ち上がった。
「では保安庁の方に連絡を取ってきますので、少々お待ちいただけますでしょうか」
「分かりました。お願いします」
小さく会釈をして、女性が応接間から出て行く。
「佐々貴さん。この後って、どうするんですか?」
「うーん。どうだろ?」
さすがに、時間があるからと言って別のダンジョンの調査に行かされることはないだろう。そう信じたい。
八王子ダンジョンで出来ることはないから、戻って来いと言われる気がする。
執行さんは……帰宅? もしかしたら、話を聞きたいって、一緒に保安庁に行くことになるかもしれないけど。
十中八九で帰宅で良いと思うけど、もし違ったときに責められたくないから適当なことは言えない。
ここは保安庁の指示を待つほかないだろう。
しばしソファに座って待っていると、先ほどの女性が戻ってきた。
「失礼します。佐々貴三等迷宮保安正」
「どうでした?」
「八王子ダンジョンの調査は以上で終了して構わないとのことです。佐々貴三等迷宮保安正は帰庁、執行さんは帰宅して構わないと」
「分かりました」
「ただ……」
ちら、と女性が執行さんに視線を向ける。
「執行さんのお迎えですが、今から出発するので待っていただくことになるのですが……それで構わないですか?」
気を遣うように言った女性に、執行さんは大して気に留めた様子もなく頷いた。
だけど、保安庁から八王子ダンジョンまでは一時間くらいかかる。
調査があまりに早く終わったから仕方がないけど、それだけの時間、執行さんを待たせるのは申し訳ない。
応接間にずっといるのも、執行さんも管理事務所の人たちもお互いに気を遣うだろう。
私は先に帰っちゃうわけだし……。
あ、思い付いた。
「あの、執行さんさえ良かったら、私がお家まで送って行こうか?」
「いいんですか?」
「うん。待っててもやることないだろうし」
「佐々貴さんのご迷惑でなければ……」
「迷惑なんかじゃないよ。じゃあ、決定ね?」
「はい。お願いします」
最初からこうしておけば良かったのだ。
調査が終わる時間は正確には分からないのだから、次回からも帰りは私が送ってあげたらいい。そのほうが、執行さんも待たなくていいし、保安庁の職員さんも今回みたいに慌てて出発する必要はない。
「ということになったので、保安庁に連絡してもらってもいいですか?」
「分かりました。伝えておきます」
事務所の人たちに挨拶をして、私たちは管理事務所を出た。
「車は、あの白いやつね」
「佐々貴さんの車ですか?」
「まさか。迷宮保安庁のだよ」
運転免許こそ持っているけど、自分の車は持っていない。
都内なら公共交通機関が張り巡らされているし、何よりも駐車場代が高い。高すぎる。
その駐車場代に見合うだけの必要性はなかった。
もし必要な時は、仕事なら今みたいに保安庁の車でいいし、プライベートで必要になることは今のところない。
執行さんは後部座席の左側に座った。
もしかすると助手席に座るかも? と思ったけど、刀を持っているから狭くて邪魔になるのだ。
「シートベルト締めた?」
「はい。お願いします」
「はーい」
執行さんに教えてもらった住所をナビに入力して、私たちは八王子ダンジョンを後にするのだった。
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