13.八王子ダンジョン
一週間後。
津守さんに命じられて、私は八王子市にあるダンジョンへ車で向かっていた。
日本にあるダンジョンは、基本的に出現した地名がそのまま名称になる。
今回だと八王子迷宮、もしくは、八王子ダンジョンと呼ばれていた。
以前の渋谷ダンジョン同様に、現在は政府が管轄しているダンジョンだ。
ダンジョンには、その攻略難易度や出現する魔物の危険度などを参考にして国際規格が与えられている。上から順番にDⅠ、DⅡ、DⅢ。
八王子ダンジョンは国際規格はなく、日本独自の規格であるJDⅢが付与されていた。
シンプルなダンジョン攻略と考えれば、そこまで難しいダンジョンではない。
けど、私たちが相手をするのはただの魔物ではなくてアンデッドだ。
今回は、ダンジョンの管理事務所から何やら怪しい物陰や物音があると報告があって、こうしてやって来た。
JDⅢだからといって、油断はできない。
「……よし」
駐車場に車を止めて、管理事務所へ向かう。
中に入ると、一足先に到着していた執行さんの姿を発見した。
お行儀よく、ピンと良い姿勢で来客用のソファに座っている。
事務所の人と少し話をしてから、執行さんの元へ向かった。
「執行さん、お待たせ。今日もよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
執行さんの服装は、前回と同じパンツスタイルにジャケットと、私たち迷宮保安官の制服と似たものだった。
今日は土曜日だし、制服なわけないか。
そもそもダンジョンに制服で入る人はいない。破れたり汚れたら大変だ。
「もう出発しますか?」
「うん。準備はできてる?」
「はい。私はいつでも行けます」
「じゃあ、もう出発しよっか」
「分かりました」
首肯した執行さんが刀を手に取り、ソファから立ち上がる。
おぉ……やっぱり背が高い。
そして顔がマジで可愛い。芸能人と言われても疑わない。
そういえば、顔の傷は綺麗に治っただろうか?
あの場で治癒魔法を使ったときは、後に残らずに綺麗に治っていた。でも、あとあとになって薄っすらと跡が出て来てないか、少し心配していたのだ。
じっと執行さんの顔を見つめていると、ほんのりと頬が朱に染まった。
「あ、あの……佐々貴さん?」
「ん?」
「私の顔にその、何かついていますか?」
居心地悪そうに、執行さんが目を泳がせながら言う。
ぶしつけに凝視しすぎていたかもしれない。
「あ、ごめんね。顔の傷がどうなったか心配で」
「そういうことですか……。はい、綺麗に治ってます。傷があったのが分からないくらいに」
「みたいだね、良かった」
改めて安堵する。
実をいうと、剣術の家元のお嬢さんと聞いたこともあって、ご両親に「娘の顔に傷を!」とブチ切れられるのでは!? とちょっとビビっていた。
「……あのくらいの傷、佐々貴さんがそこまで気にされることもないのですが」
「いやいや! するよ! ていうか、執行さんが気にしなすぎだから」
「そんなものなのでしょうか?」
「そうだよ。もっと自分を大事にして?」
「……はい」
治癒魔法で治療をしたときに、執行さんは私が過剰に心配しすぎだと言っていた。
こんなに心配をしてもらったのは初めてだとも。
幼いころから剣術の指導をされていたから、傷ができたり怪我をしたりは日常茶飯事だったのかもしれない。
それが当たり前になっているのだとしたら、少し心配だ。
「って、おしゃべりしちゃってごめん。ダンジョンに行こっか」
「はい」
管理事務所を出て、すぐ近くに見えているダンジョンの入り口に向かう。
撮影用ドローンの準備をして、私たちは八王子ダンジョンに足を踏み入れるのだった。
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