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⑥ 告白

二年目、ヌマーダ領には相変わらず移住希望者が後を立たない。

王妃が来られた事で他の貴族からも移住の申し出が次から次へと届いた。

そしてそれら移住希望者の中で林業や大工などの者を優先で移住させた事で開拓のスピードがかなり早くなった。

だが、まだまだ希望者に待機して貰っている状態であった。

タカサやマエバーシャなどの大都市から大工などを派遣して貰えるともっと早く進むのだけど、それは仕方がない事であった。


そして、今年も神託の時がきた。

大聖女であったメヌメールはユーリッチ王子と婚姻を結んだため大聖女の座を降りた。

次の大聖女はメヌメールの妹のティティーヌが選ばれたであった。


─ メヌメール ─


私は妹に申し訳ない。

私はユーリッチ王子と婚姻を結び大聖女の座を降りる事となった。内心、神託から逃れる事ができホッとしたのと同時に王都から逃げる事が出来ないと自分の運命を諦める事にした。


祭りの前日に大聖女と、なった妹に会いに言った。

妹には伝えないと・・・


─ ティティーヌ ─


私は憂鬱である。

姉がユーリッチ王子と婚姻を結ばれた事は喜ばしい事なのだが次の大聖女に選ばれてしまった。

私は姉から内密に聞いている。

リシャラテ様の神託が真実であった事や姉の本当の神託を。

だから解るのだ。明日の神託で何か起こる事は想像出来た。


「ティティーヌちょっといいかしら?」


どうしたのだろうか?

祭りの前日に姉が訪ねて来るとは思わなかった。


「どうしましたか御姉様?」


「貴方に話したい事があるのいいかしら?」


私は姉を部屋に入れると二人だけの秘密の話をした。


─ ユーリッチ ─


やはりか・・

今日、神託が降りた。

いや、実際には降りなかったのだ。

大聖女が神託の儀式を行うと驚きの言葉を述べた。


「神託は降りませんでした」


皆、大聖女が何を言っているのか理解出来ないでいた。

だが、徐々に神託が無いことの現実を理解し始めるとざわつきが徐々に大きくなった。

暴動が起きる。

いち早く対応したユーリッチによって騒ぎは最小限に抑えられたが問題はそこではない。


早急に大聖女を王の間に呼ぶことなった。


─ グーマ国王 ─


今年も大聖女が問題をお越しおった。

考えてみれば三年続けて王の間に大聖女を呼んでいる。

今年は神託が降りなかったと言う。

大聖女を呼び、真相を聞くがどんな質問をしても神託が得られなかったの一辺倒であった。

何故かリシャラテを思い受けべ腹正しく思えてならない。


どうしたらものかと悩んでいると、メヌメール妃が助言した。


「レッグエル様、此度の大聖女ティティーヌは大聖女の資格がなかったかもしれません。資格がなかったからこそ神託が降りなかったのです」


「そんな事は過去にない事であるが」


「それでも、其が真実であるかと。国民も納得するのではないでしょうか」


「成る程、ならば大聖女を偽った罪としてティティーヌ嬢を裁かなければならんな」


「その件で此度の大聖女ティティーヌは私の妹でございます。グーマ王国に申し訳なく此度の大聖女への処罰は私に任せて頂けませんでしょうか?」


「構わんが生ぬるい処罰は許さん」


「大聖女、いや大聖女を偽る聖女ティティーヌ、大聖女を偽った罪としてそなたから聖女を剥奪します。また、タカサ公爵から除名とし、マエバーシャ領及びタカサ領から追放処分と致します」


この処分はかなり重く思え護衛騎士から動揺が見られた。ティティーヌに普通の平民として生きていけと言っているような事であった。

この処罰を聞いた者達はこれ以降メヌメールを恐れる事になった。


「メヌメール妃の処罰を採用する」


グーマ王の承認が得られティティーヌの処罰が確定した。

それと同時にティティーヌが大聖女を偽っていた事を国民に告げる事となった。


─ ユーリッチ王子 ─


父は可笑しくなった。

王として普通に政務をこなしているが、此度の判断は明らかにおかしい。

父は忘れてしまったようだ。

昨年のメヌメールの神託『選択を間違えると神託がなくなる』と言う事を。


そして、先程のメヌメールのやり取りで気付いた。

メヌメールは妹を解き放ったのだ。

王都と言う縛りから。

そして同時に解った。王都と同時に滅びる覚悟でいるのだと。

私も覚悟しよう。

リシャラテに会えないのが残念でならないが、其が私の天罰なのだろう。


─ ティティーヌ ─


私は馬車の中にいる。

姉が内緒で用意してくれた馬車だ。

馬車の中で神託の前の日の夜の事を思い出す。


「ティティーヌ、私の神託が真実ならば王家は選択を間違えました。ですので、明日は神託が降りないでしょう」


「そ、そんな・・・」


「だが、貴方は真実を述べるのです」


「ですが・・・」


「ティティーヌ、貴女は女神様に嘘をついてはいけません。貴女はリシャラテ様と同じように真実を述べるのです」


「ですがその後はどうなるのですか。国民からの暴動が起きてしまいます」


「私が貴女は『偽の聖女』と進言し、私に処罰を任せて貰うようお願いをします。そこで貴女から聖女としての責任と聖女としての責任を奪いますので貴女はヌマーダに向かうのです」


「私だけ助かる事など出来ません。私も御姉様と一緒に王都の運命を受け入れます」


「駄目!王都と一緒に滅びる罪は私が請負います。だから・・・だから、貴女だけでも生きていて欲しいの。私からの最後のお願い聞いてくれる?」


御姉様の考えられた通りになった。

もう、御姉様と会う事はないと思うと涙が止まらなかった。

最後にユーリッチ王子からリシャラテ様宛の手紙を預かった。

ユーリッチ様は気付いていたのだろう。姉の演技を。


─ リシャラテ ─


王都から元聖女が来られた。

彼女から王都での出来事や姉であるメヌメールの謝罪をされた。

メヌメールが行った事は仕方がない事であったと彼女に伝えると彼女は涙を流しながら感謝の言葉を述べた。

彼女は聖女の資格を剥奪されてしまったので協会で修道女として働くらしい。

聖女の資格が剥奪されても聖力は変わらず使えるので私は彼女に一緒に領地巡回をお願いしたところ喜んで了承を得られた。

最後に彼女から1通の手紙が渡された。

ユーリッチ王子からである。

私はその手紙を夫カナージャと共に見ることにした。


─ ユーリッチ王子の手紙 ─


『この手紙が無事に貴女の手元に届けられたと言う事は彼女は無事にヌマーダに着けたのだろうか?

また、彼女から王都の現状を聞いたと思う。

私は貴女を裏切ってしまったことを後悔している。

貴女と初めて会い私の婚約者と告げられた時に私は貴女に「死ぬまで貴女を守り抜く」と告げたが約束を守れなくて申し訳ない。願わくはこの約束をカナージャ侯爵が引き継いでくれる事を祈っている。

ティティーヌ嬢から話を聞いたと思うが母上がいなくなってから父上の様子がおかしい。崩壊への序曲が始まったかもしれない。

私はマエバーシャ領と運命を共にする覚悟を決めた。最後にもう一度君に会いたかったがそれも難しいかと思うので手紙で伝えさせてくれ。

リシャラテ、すまなかった。

実はお願いがある。私の計画が上手く行けばもう一人ヌマーダに行く事になる。そのものはリシャラテと因縁があるものだがどうにか引き受けて貰えないだろうか。計画が上手く行くかは解らないがその時は宜しく頼む。

最後にリシャラテ婦人、私の分も長く生きて欲しい。

ユーリッチより』

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