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第二十六話

 起きてすぐに歩き始める。日が昇って間のない森は冷たい風が支配していた。休憩をはさみつつ歩く。村までのルートは商人が案内してくれる。

 次の日の昼、村に到着することができた。馬車を出してくれる業者を手配する。急なことだったので明日以降にしか動くことはできないらしい。今日は村に泊まらせてもらう。通りの村なので宿泊できる建物も何個かあった。そのうちの一つに泊まる。

 借りることができたのは1軒の家だ。部屋は4つで一階に広い居間がある。都市部では借りられないほど大きな家を借りることができるのが村での最大のメリットだ。

 マルリックとエラリアが一つずつの部屋。トーマスとヴァルが相部屋。僕とアリスが同じ部屋だ。部屋割りはいつもとさほどかわらない。

 村で食材を買って、家の中でご飯を食べる。移動中は基本野宿なのでこうして屋内で一息つくと安心する。部屋に入り、ベッドに入る。アリスと少し戯れてから睡眠する。何の変哲もない生活をすることで幸せを実感できる。

 次の日の出発日。夏も近いので朝でも暖かい。このくらいの季節が一番心地いい。心地良さの中、馬は走り始める。

 一週間ちょっとで王都に到着する。王都はお祭り騒ぎのようだ。王都に入る前の検問で止められる。

「貴様ら顔をよく見せろ。」

「?」

「手配書と一致しているぞ。名乗れ!」

「は?」

「武器を馬車の外に投げろ。」

「なんかの誤解だろ。」

「誤解ならばすぐに終わる。」

「どうしたの?ヴァル。」

 外で応対しているヴァルに声をかける。

「こいつらが俺たちを悪人みたいな口ぶりで言ってくるんだ。」

「なんで?」

「知らん。」

 もう検問している兵士は剣を握っている。その後ろから続々と兵士が増えてくる。

「なんだ?」

「手配書と一致しております。班長!」

 班長と呼ばれるその男には見覚えがあった。ロイク・バルディン。僕が所属してた班の班長だ。

「ケイルか。」

「お久しぶりです。班長。これは…?」

「悪く思うな。これも仕事だ。おとなしく捕まれ。」

「なんでですか?」

「仕事だ。捕まえれ。」

「説明になっていません!なんですか!?この状況は!?」

「ケイル。仕事だ。捕まっておけ。」

 ヴァルに肩をつかまれて引っ張られる。ヴァルが前に出る。

「仕事なんだな。」

「その通りだ。」

「良いだろう。」

 ヴァルは剣をロイクの前に置く。

「お前らも武器捨てろ。」

 ヴァルの真剣な顔に気圧され、武器を捨てる。馬車の中の面々も武器を外に投げる。

「このまま連行する。」

 馬車のまま牢獄がある建物まで連れていかれ全員同じ牢屋に収監された。

「なんでだろうね。」

「そりゃ、御親兵を殺して回ってたらこうなるだろ。」

「だが、王子が後ろについているという話ではなかったのか?」

「そうですわ。話が違いますわ。」

「まさか!」

 二人の人物が歩いてくる。ロイク・バルディンとルシアス・アルカンシア。第二王子だ。

「すまない。王位戦に負けた。」

「そうだろうな。この状況を見る限り。」

「呑み込みが早くて助かる。すまない。何もできなくて。」

「今どうなってる?」

「先日王位継承が行われた。そこで発表されたのは、第一王子ノアレイ・アルカンシアの王位継承だった。父は権力を失い、兄が政治を司るようになった。そこでいくつか制度を変えられた。表向きでは前任の意志を受け継ぐと言っていたが。」

「何が変わったんだ?」

「一つ目が御親兵の強化だ。やつら、今までは人数制限をかけていたはずなのに、国からの補助金のおかげで人数を実質無制限にした。二つ目が上級貴族の強化。今まで地方の貴族は中央の政治に干渉できなかったのに、親族を大臣に任命して中央で雇うと言い出した。三つ目が戸籍の作成だ。国民の身を守るとか言ってこれまで以上に正確な戸籍を作るつもりらしい。今のところこの三つだけだ。」

「なるほど。今まで以上に地方の貴族を待遇することで王位を得たわけか。だが、次期国王は現国王の独断で決まるんじゃなかったのか?」

「そのはずだった。しかし、父上も奴隷商売に一枚噛んでいたらしい。これからは貧民以外も奴隷の対象にしたいのだろう。クソ!王位は最初から決まっていたんだ!」

「落ち着け。じゃあ、今まで御親兵を殺してきたのは無駄だったのか?」

「そうなるな…。『能力者』がどうやって誕生するのか分からないが、給料を弾めばこれまで以上に人数が集まるに決まっている。中央は地方を完全に貴族に任せるつもりだ。」

「それで俺たちが指名手配か。よくできてるな。」

「私たちはあいつらの手のひらで踊らされていたんだ!貴族制に反対の者を私の下に集めて一掃する準備をしてたんだ!すまない…」

「謝ってどうなるものでもないだろ。ここまでことが動いた以上行動するしかない。」

「そう言ってもらえて助かる。無駄だったこと自体は否定しない。しかし、無駄じゃないこともあった。」

「なに?」

「御親兵ほどの戦力が数人にやられたんだ。それは、御親兵に新たに入る者に対する恐怖になった。すぐに人数の補充はできないだろう。」

「俺たちはこれから【ルメレイン】に向かう。道中に【ニクスポート】の御親兵を殺してきた。ひとまず4つの都市の御親兵を一掃するつもりだ。お前も来い。」

「すまない。私は【フロストホロウ】の上流貴族。アルヴァロス家に婿に入ることになった。」

「は!?なんで王家の人間が貴族の婿なんだよ。」

「分からない。どんな心情があるのか。わがままを言って申し訳ないが妹を、セラフィナを連れて行ってくれないか?」

「それくらいならいいが。どうした?」

「妹は王位戦に関係なかったとはいえ、私とある程度行動していたから目をつけられているかもしれない。」

「分かった。安心できるまで同行する。」

「そう言ってもらって助かる。今晩助けが来る。それに備えて今は寝ておけ。」

 王子はどこかへ行った。

「聞いてないぞ。ヴァル。」

「話が全然違いますわ。」

「悪い。かなりまずい状況に追い込まれた。」

「話は後にして今は休もう。」

 トーマスが話を遮り、各々眠りにつく。疲れていたらしく誰もがすぐに寝れた。ここが檻に囲まれた牢獄であることを忘れて。

「おい、おい、、おい!」

 誰かに声をかけられて起きる。牢屋の前ではリオナーが立っていた。

「迎えに来たぞ。」

 全員目を擦りながら起きる。

「『焔』」

 檻が溶けていき、人間が通れる穴が生まれる。

「行くぞ。あまり時間がない。急げ。」

 リオナーに続いて走っていく。警備と目が合うが、何も言われない。

 牢屋のある建物から出ると一台の質素な馬車があった。

「早く乗り込め。かなり狭いが我慢しろ。」

 馬車の扉を開けると、セラフィナ、ロイク、フェルガスが乗っていた。

「早くしろ。」

 かなりセラフィナとリオナー、フェルガスは外に座って馬を引いてくれるらしい。中はパンパンだ。小声で「踏むな」「詰めろ」「痛い」などいろいろ聞こえる。

 馬車が走り始めると、揺れが激しくなりさらにきつくなる。しばらくすると揺れが収まった。ドアが開けられる。

「大丈夫か?」

 リオナーが立っていた。

「大丈夫に見えるかよ」

「大丈夫そうだな。降りろ。一旦王都からは離れた。」

 一度降ろされる。総勢11名の大所帯だ。

「馬車は私とフェルガスが担当する。中には姫様、アリス、そこの女性、ケイル、トーマス、ロイク。外側の見張りとしてヴァル、エリドア、そこの男の人で担当する。配置に付けすぐに出るぞ。」

 言われるがままに行動する。外は質素だったが、中をきちんと見ると高級感があり、いかにも王族が乗って居そうな装飾が施されている。馬は走り出す。時間を気にせずに。夜の空気を感じさせない馬車は故郷の街へと駆り出された。


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