第十三話
朝遅めに目が覚める。夕方から行動開始ということで、夜は緊張で眠れなかったのだ。みなも、そんなに熟睡できなかったらしい。まだ、数人しか起きていない。
「おはようございます。」
「おはようございます。シルヴィアさん。」
「お早いですね。」
「そうですか?遅いと思いましたが…」
「夕方から忙しいのに朝から起きていたら大変ですよ。」
「それもそうですね。」
トーマスも起きており、物の手入れをしている。
「おはようございます。」
「おはよう。今日はよろしくね。」
「はい。こちらこそ、お願いします。」
シルヴィアが用意してくれたご飯を食べる。食べ終わったとこで武器の手入れをしておく。そこまで用意するものはないが。サリナとエリドア、ヴァルが起きてきた。
作戦会議だ。
「よし、今日のおさらいをしておくぞ。王子が流してくれた噂のおかげで、御親兵は全員集まるらしい。」
「どんな噂をながしたんだろうね。」
「上級貴族暗殺かなんかだろう。そこはどうでもいい。まず、俺が中に入る。そして日が落ちたと同時にケイルとトーマスが正面から突っ込む。ある程度、騒がしくなったところでサリナが裏から突撃だ。」
「どうやって、ヴァルは中に入るんだ?」
「それは考えてある。単純につかまればいい。」
「捕まる?」
「ああ、どんな理由であれ、中には入れれば何でもいい。」
「大雑把…」
「何でもいいだろ。次に昨日見てきたことを報告しよう。俺は上級貴族の館の前まで行ってきた。正面には4人、奥に3人の兵が居た。ケイルとトーマスならいけるだろ。」
「そうだね。僕たちなら行けると思う。」
「そうですね。」
「都市内は裏道が多い。だからどこから帰っても行けるように道を覚えてきたよ。」
「さすがトーマス。デート野郎と違って働き者だな!」
「なっ!失礼な。僕だって高台を見てきたんだ。」
「高台?」
「突入するまでに待機場所がいるでしょ?そこの下見に。」
「なるほどな。意外にちゃんとしてきてるな。」
「当たり前だよ。僕とトーマス先輩は待機しておくよ。日が落ちた瞬間に行く。」
「分かった。サリナは?」
「私は入れそうなところを探しておいたわよ。塀を登らなくちゃいけないけど、あの高さなら何とかなりそう。」
「よし、各々完璧だな。後は、臨機応変にいこう。」
「でもなんで、上級貴族暗殺なのに館で待っているんだろう?普通どこかへ逃げるものじゃないの?」
「確かに不可解だな。」
「それは。多分。噂だからじゃないかな。しかも御親兵は負けるはずがないと思っているんじゃない?」
「それはあるだろうな。」
「よし、行動開始。」
まだ時間があるというのに、それぞれ準備を開始する。
・ヴァル視点
いい感じに捕まるために中央周辺に歩く。シルヴィアにキスくらいしてこればよかった。まあ、最期ってわけでもないしいいか。おそらくこの作戦は成功する。あとは、王子の奴隷解放組がうまくやれば完璧だ。
しかし、何か引っかかる。奴隷の解放は上級貴族が潰れてからの方がやりやすくないか。なんでこのタイミングで。それに、あの王子だ。
なぜ自分は中級貴族のもとで寝泊まりしているのか。それに、一回も食事を口にしていなかった。何かを恐れてる?それならなんで、ついてきた。最初は来ない方針だったはずだ。それに口実までつけて。分からない点はいくつもある。
中央の館にまでついた。捕まる方法は簡単に思いついた。塀に登ればいい。剣を持って。あの噂がある以上放置はしないだろう。
「おい!そこで何してる。」
剣を取り出して、応戦するふりをする。
「貴様!何をするか」
「兵隊さん。俺はノクシリオン殿の首を狩りに来たんだ。雑魚どもには用はねぇ。失せろ。」
「なんだと貴様…」
二人の兵士が剣を取る。向かってくるので応戦する。鋼がぶつかる音が響く。剣を流し、首を落とす。次に向かってきていた者の腕を切り落とし、背後から剣を突き刺す。
これは御親兵じゃないな。弱すぎる。だが、この首の紋章どこかで…。
「何をしてるんだい?」
気配に気が付かなかった。
「掃除だよ。ここに案山子が立ってたもんで撤去しといてやったぜ」
「そう。まだ案山子が残ってるじゃないか。」
「ほんとだ。一つ残ってるわ。」
お互いに切りかかる。相当な手練れだ。剣の打ち合いになるが、腹を蹴られ、よろめく。
「うっ」
剣の柄で頭を殴られ気絶する。
目が覚めると、椅子に座っていた。腕には鎖がまかれ、頭からは血が流れている。
「やあ。君を運んでくるのには苦労したよ。」
「あ?そふかお」
うまくしゃべれない。顎でも外されているのか?
「いいよ。しゃべらなくて。顎を外してあるからね。にしても痛みで叫ばないんだね。いいね。拷問の甲斐があるじゃないか!」
男は歩いてくる。
「最近の貴族様は、拷問の許可をくれなくてね。前は適当に捕まえて、好き勝手出来たのに…。寂しいからさ、君を連れてきちゃった。いや~いいね。君。鍛え抜かれたからだ。その精神力。いいよ!いいよ!!君からはどんな声がするのかな。」
男は興奮しているようだった。頭のおかしいことを言っているが腕は確かなんだろう。さっきもかなりの腕前だった。正面を二人だけに任せたのは失敗だったか。
「何考えてるの?もう、日の光を浴びることなんてないんだから何も考えなくていいよ。」
道具を取り出し、口に突っ込まれる。歯を乱暴に抜かれ激痛が走る。
「うっ…」
「いいね!いいね!!もっと声を出してもいいんだよ。」
さらに口に突っ込まれ一本、また一本と次々と抜いていく。
「はぁはぁ…。」
「意外に叫ばないね。全部抜いたのに。もったいない。次はこれかな。」
棒状の何かを取り出し、眼球を抉られる。
「ああああああああああ」
激痛なんてかわいいものじゃなく、言い表せない苦痛だ。
「良い声出るじゃん!大丈夫!!もう一個あるから。」
もう一つも抉られ何も見えなくなる。
痛い。痛い。。痛い。。。なんだ、この頭のおかしい奴は。鼻歌を歌いながら次の道具を選んでいるようだ。何も見えないが道具がカチカチとなる音が聞こえる。
「そうだ、これなんかどう?」
耳に何かがあてられる。
「?」
がりっ。耳を切り落とすつもりらしい。
「あああああああああああ」
「悪くないよ。その声量!もっと声出してもいいからね!」
片耳がなくなり、顔面は血だらけだと思う。
「い、、な、、だ」
「なんだい?」
「いふぁ、はふじだ」
「時間かい?」
必死に頭を揺らして、うなずく。
「今は夕方かな~。君が意外に眠っていたから。すっかり遅くなっちゃって。今日は場内を守らなきゃいけないのに…。でもしょうがないよね!楽しいものはしょうがないもんね」
『花園』
「?」
目を見開いて。
「反撃開始だ。くそ野郎。」
鎖を力いっぱい引きちぎり、指で相手の喉を抉る。向こうが必死に抑えている間に机に置いてあるナイフで首を切り落とす。
「あぁ、痛え。もっと加減しろよ、コイツ。剣はどうせどっかにあるだろ。早くしなきゃな。」
『花園』は自分を中心にして、周りに花を咲かせる。その花の範囲にいる間、自分が指定した人物だけが傷を治すことができる。負傷に限界はない。言い換えれば、死んでいない限りどんな傷でも治すことができる。
剣を探しつつ、敵を殺して回る。人数が聞いていたよりも多い。もう十人以上殺したがまだまだ湧いてくる。しかもあの首元の紋章は奴隷市場の入場に必要なタトゥーだ。なんでこんなところに。
「あった!俺の剣。流石に拾った剣じゃ手に合わないわ。」
剣を腰につけて、走り出す。殲滅するまで。
・ケイル視点
「時間だね。そろそろ行こうか。」
「そうですね。」
二人は高台をおり、屋敷へと向かう。上級貴族の館の周りには誰もいなかった。近づきたがらないのだろうか。正面の門に到着する。
「なんか。聞いていたよりも人数が多いね。」
「なんでこんなに…」
ここだけで20人はいる。しかも、バラバラな服装だ。
「殲滅が僕たちの仕事だからね。殺ろうか。」
「はい。」
二人で歩いていく。向こうも気づいたらしく全員が構える。
「貴様らなに用か?」
トーマスはどんどん近づいていく。
「止まれ!」
静止を耳にせず、まっすぐに。
我慢の限界が来た3人が襲い掛かる。トーマスは一振り目で、1人目の剣を落とし、二振り目で背後の2人目の心臓を一突き。三振り目で、3人目の首を落とす。その勢いのまま、剣を落とした1人目の喉を突き刺す。
一瞬の出来事過ぎて、誰も反応できなかった。
「なっ…。」
その殺気で相手がビビっているのが分かった。
「構うな!やっちまえ!」
次は大人数で来る。
剣を適当に交わし、相手の手を落とす。膝から崩れ落ちる相手を見ながら、2人目の腹に剣を突き刺す。そのまま腹をかっきり、3人目、4人目と首を落としていく。残りの16人を殺した。
「さあ。次行こうか。」
「待ってください。一人、腕を落として生け捕りにしてあります。」
振り返ると悶絶している一人の男がいた。トーマスは近づいていき声をかける。
「ねえ。想定よりも人数が多いんだけどどうなってるの?」
「はぁはぁ…。知らねぇ!」
「ごめんね。あんまり時間がないんだ。拷問とかやってる暇ないからさ。君たち御親兵じゃないでしょ?」
「!?なんで…はぁ…それを…はぁ」
「弱いからね。聞いていたより。ここには一人も御親兵はいない。じゃあ、どこに行っているのかな。」
「し、知らねぇ!ほんとに知らねぇんだ!信じてくれ!」
「そう。じゃあ、しょうがないよね。」
剣を構える。男の首にめがけて振りかぶる。
「待ってくれ!」
トーマスは男の首の前で静止した。
「御親兵は、数人を残して、どっかに行った!これ以上は知らねぇ!」
「そっか。ありがとう。」
トーマスは首を落とした。
「さあ。行こうか。」
その容赦のなさに驚きを隠せなかった。
「す、すごいですね…」
「?何かあった?」
「いや、い、今の…」
「ああ。ごめん。少し焦ってたから。彼見たことがあるんだ。奴隷商人だよ。」
「え…」
「あの首のタトゥーは商人の証みたいなものだよ。」
「そんな…」
「この人たちがここに居るってことは、上級貴族は奴隷売買に噛んでいる。間違いなく。それに、御親兵がどこかへ行ったってことは、王子が危ないかもしれない。」
「それはまずいですね…。向かいますか?」
「いや、こっちはこっちでやろう。じゃないとわざわざ戦力を分けた意味がなくなるからね。」
「分かりました。行きましょう。」
二人は屋敷の中に入っていく。血の匂いが付いた、その体で。




