第九章16 【覇王杯/オーバーロード・カップ1回戦/第3試合】13/ヌルチームの自信
【華刻嬢チーム】が【第10覇王/テンス・オーバーロード】に声をかけてもらって自信を得た様に、【ヌルチーム】も自信を持つ事があった。
それは、【神魔】にその座を奪われた【神】と【悪魔】がコンタクトを取ってきていたと言うことだった。
【神魔】とは逆転参戦方式で参加している【内田 愛幸】の元になった人間の変化した姿だ。
【内田 愛幸】の元の人間は、【オーバーロード・カップ】の第1回大会から第4回まで優勝し、【覇王】となっている。
【覇王】になる度に力をつけて、ついには【神】と【悪魔】からその立場を奪った。
元々、【夢異世界部活学校】とは【神】と【悪魔】が始めた事である。
【神】が【善】を【悪魔】が【悪】を司り、志半ばに夢を諦めそうになった人間達に最後のチャンスを与えると言う趣旨の元で始まったものだった。
だが、【内田 愛幸】の元になった人間はその当時、圧倒的な実力を持っていたのを良いことにそれを私物化した。
第5回大会からは自分の身代わりとして自らの血と汗と涙の結晶である【内田 愛幸】を生み出し、代わりに出場させて、自分は【神魔】となり主催者として裏から牛耳ろうとしていた。
だが、そう言う後ろめたい心の持ち主の血と汗と涙の結晶から生まれた【内田 愛幸】は自らの【神魔の傀儡】と言う立場に不満を抱き、反旗を翻そうとしているというのは【神】や【悪魔】には手に取る様に解った。
【神】や【悪魔】は【神魔】によって立場を追われたが、追われたままでは無い。
因果応報。
自分のやった事は自分に返っていく。
【善行】なら回り回って良いことが、
【悪行】なら回り回って天罰が、
その者には返っていく。
それは人間が元々持っている業の様なものである。
それは、人間としての身体と名前を捨てて【神魔】となったとしても変わらない。
自らを【神】や【悪魔】を気取る、【神魔】にもやがて、人としてやって来たことが返って来ると【神】や【悪魔】は理解している。
第5回大会から第7回大会での【覇王】が決まった時、【神魔】はお払い箱になる。
【覇王】は自らの力でこの世界を守るための力と責任を負うことになるだろう。
その時、欲にまみれた【神魔】はいらなくなる。
【神魔】もまた、その座を追われる運命が待っている。
その事を【ヌルチーム】に【神】と【悪魔】は顕現し話して聞かせた。
そして、自分の信じた事をやれば結果として返ってくると告げた。
その事を天啓として受け取った【ヌルチーム】は、自分達にやれること。
それは、仲間を信じて仲間と共に行動する事。
そう、考えて行動する事にしたのだ。
【ヌルチーム】の方針は、【あるがままに】だ。
だから、【華刻嬢チーム】の一方的な提案も受け入れた。
【ヌルチーム】にとっては、なるようにしかならないと考えている。
自分達にその資格があるとなったら【覇王】にもなるし、なれなかったとしても【覇王】の仲間になることは出来る。
【覇王】になることだけが全てではない。
生きてさえ居れば自ずと自分の道は見えてくる。
それが【覇王】かそうで無いかは大した問題ではない。
実力不足の自分達でも【覇王】を決める戦いに参加出来ている。
その事だけでも喜ばしい事ではないか。
そう、達観するに至ったのだ。
敵を知り己を知れば百戦危うからず。
【ヌルチーム】はまず、自分達のチームの事を知ることを重視した。
今、やれる事をやろう。
そう考えているチームは実力以上の事が出来る事がある。
それが理解出来て行動しているからこの【ヌルチーム】も自信を持っているのである。
心の強さで言えばトップクラス。
それがこのチームだ。




