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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-48.エイナートの死

 血走っていたエイナートの目から生気が失われているのがわかった。


「し、死んだのですか?」

「そうみたいね。アンリちゃん大丈夫? こうやって弓で人を殺すのは初めてでしょ?」

「え、ええ。そうね。……これでよかったのかしら? ゾーラに言われるままにやったけれど」

「ええ。いいのよ。この男は明らかに正気じゃない。あのふたりを守るには、こうするしかなかった。……アンリーシャだって、同じ状況だったら同じことをしているはずよ」

「そっか! そうよね! 正しいのよね!」


 アンリが少し動揺しているのも、気持ちはよくわかる。けど、感謝もしていた。


 もしアンリが助けてくれなかったら、自分は殺されていただろうから。本来はカルラがやらなきゃいけないこと。


「おふたり、とも。ありがとうございました」

「カルラ。あなたこそ大丈夫? 怪我は?」

「問題、ありません」

「そう。なら良かった。シャルロットちゃん、怖いもの見せちゃったわね」

「いえ。こうするべきだと、わたしも思います。エイナートは死んだのですか?」

「死んだわ。見ての通りね。何があったかは知らないけど、サハギンたちと同じ状態になっている」


 彼が剣をぶつけてヒビが入った壁を見ながら、ゾーラが言う。


「正気を失っているなら、さっさと殺すべきよ。他人に危害を加えない内にね」

「だなー。ほら、のんびりしてる暇はないぜ。ヨナたちを手伝いに行かないと」

「キア。あなたこそ大丈夫なの?」

「おう! ちょっと肩が痛いけどな」

「わたしの後ろに乗せてあげるわ!」

「頼む」


 もふもふの上に乗るキア。あれだけ強烈な蹴りを食らったのに、本当に丈夫そうだった。殺人を気にしていたアンリも、既に平静に戻っている。


「すごい人たちですね」

「はい」


 シャルロットに話しかけられて、カルラも頷いた。彼女は、あまり見るべきではないと理解しながらも、エイナートの死体にチラチラと目を向けていて。


「わたしはもう、彼につきまとわれることは無いのですね」

「そう、です。シャルロット様は、自由です」

「好きな男の子を好きになっても良いのですね」

「はい。……好きな、男の子?」

「ふふっ。ヨナ様はわたしのために、すごく頑張ってくれているのですよね。この屋敷にも、わたしのために来てくれたんですよね」

「……はい」


 顔を赤くして話すシャルロット。やはりそうだったんだな。


 好きでもない相手に、突然求婚なんかしないものだ。



――――



 エイリス子爵の私室の場所はすぐにわかった。他の部屋より扉が広い。

 あっても無意味ではあるけど、鍵はかかっていなかった。


「エイリスはいるかな?」

「わかりません。開けてみないと」

「そうだね」


 だから遠慮なく開けて中に踏み込む。エイリスは椅子に座ってぐったりとしていた。


「お前は何者だ?」


 そういえば僕は、エイリスと顔を合わせたことはなかったな。王族の末息子の顔も把握していなかったらしい。


「僕は……さっきあなたが幽霊屋敷の前でやりあっていた学者の、仲間です」

「あの学者か。……聞いてくれ。わたしは騙されていた」

「騙された?」

「わたしは何もしていない。真面目に港の管理をしていたんだ。だが息子が、エイナートが、わたしに隠れて汚職をしていた」

「地下水路に魔物を隠していたのも?」


 エイリスの眉がピクリと動く。


 なぜ街の兵士ではなく、学者の共をしている子供がそれを知っているのか。そもそもなぜ子供がこんなことをしているのか。

 わからないなりに、嘘をつき通すしかないと考えているらしい。


「そうだ。わたしに隠れてエイナートがやった」

「それは嘘だね」


 すぐにわかること。そりゃ、エイナートも貴族の息子で、母に隠れて悪事をする余地はあるだろう。

 けど、彼には無理だ。


「エイナートは水路を開ける鍵の場所を知らなかった。母親しか知らないと言っていた」

「なに?」

「ギルドでね。カルラと対面していた時に言っていた。だから魔物や、その他ご禁制の品を地下水路に隠すのは、エイナートには無理だ。母親であるあなただけができる。……ギルドに行って現場を見ていた冒険者たちに聞けば、証言はいくらでも取れるよ。その後ギルド内での戦闘に発展したからね。みんな印象に残ってるだろうさ」

「貴様……」

「そもそも、港で悪事に加担した人間は調べればすぐに見つかる。本当にエイナートに頼まれたのかどうか、いずれわかることだよ。だから見苦しい言い訳はやめて――」

「黙れ! ガキが調子に乗るな! 子供に負けるほど落ちぶれはしない!」


 僕の言葉にエイリスの顔つきはどんどん険しくなっていく。そして声を上げながら、机に置かれていた瓶を手に取って投げつけてきた。中の粉末がばらまかれる。

 咄嗟に、後ろにいたティナの体を押して部屋の外へ追いやり、自分も口を閉じて息を塞ぐ。


 エイリスが続けて袋に入った何かを投げつけて、粉末が部屋に充満していく。僕たちはその様子を見ながら部屋から退避した。


「ヨナ様今のは」

「たぶん、サハギンたちを狂わせたスパイスとか!」

「吸ってはいけませんね! ちょっと待っててください!」


 このままでは部屋に入れない。そう考えていたら、ティナは隣の部屋の扉を遠慮なく開けた。

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