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追放された第六王子の復讐〜僕が拾った木の棒が聖剣になるんです〜  作者: そら・そらら
第2章 女子爵の息子

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2-44.子爵の私兵

 キアは僕から離れて、兵士を避けて少し迂回しながら屋敷の壁面へ駆ける。ゾーラは十人の兵士の足の蔓を維持するのに集中しなきゃいけない。

 ティナとアンリは僕を掩護しようと考えてるようだけど、とりあえず必要ないかな。


 敵ふたりの脚力はほぼ同じで、僕に同時に到着しそうだ。とはいえ馬鹿正直に同時に相手することはないし、ある程度引きつけてから片方に向けて駆ける。剣の持ち方を見て、比較的弱いと思われる方に。


 兵士が迎撃で振った剣を自分の剣で受け流して、懐に潜り混む。そのまま姿勢を低くして体を押せば、走っている状態から急に止まろうとして不安定な姿勢になっていた彼は、バランスを崩して倒れた。

 僕はなんとか踏みとどまり、奴の頭を蹴飛ばしてから、もうひとりの敵の攻撃に対処する。


 倒れた仲間を巻き込まないように、横薙ぎに振られた剣を後ろに下がって回避。仲間の体をまたぎながら前進して僕に踏み込む敵の二撃目を、剣で受ける。

 受け止めるのではなく、刃を当てて受け流すことを徹底した。腕力では僕に勝ち目はないから、真正面からぶつかることはない。


 師匠の教えを忠実に守る。敵の攻撃を捌き続ければ隙が見える。


 何度目かの斬撃の後、力を込めすぎた奴の斬撃が地面に当たった。そこにちょうど硬い石があったのか、ガアンと重い音が響く。

 振動が伝わってきて、奴の腕が震えたらしい。数度の本気の攻撃により疲労もしてたのか、動きが止まった。


 その隙に、首元目掛けて剣を突く。向こうもそれに対処するだけの力はあるから、後ろに下がっていき。


「もふもふ! いっけー!」

「ごふっ!?」


 後退する途中で、横から出てきたもふもふに蹴られて倒れた。


「え。アンリ?」

「いい戦いだったけど、手を出せそうだったから助けてあげたわ!」

「そっか。ありがとう」


 別に無くても勝てたんだけどな。


 けど、ひとりでやるより早く倒せたから、いいか。


「ふふっ。アンリーシャみたいで格好良かったでしょ!」

「うん。そうだね」


 アンリが嬉しそうなら、それでいいんだよね。


「ヨナ様ー! こっちも無力化できましたー!」


 最初に倒した方の敵に、ティナが剣を突きつけていた。兵士は倒れたまま腕を上げて降参している。


「ティナもありがとう!」

「えへへっ。褒められました!」

「さ、みんな。屋敷の中に入るわよ。あの中にも敵はいるでしょうから」


 ゾーラがこっちに来た。足止めしていた兵士たちはといえば、街の兵士の増援が来てくれたようだ。丸腰の子爵兵を容易く制圧して、拘束している最中。

 僕は庭園に落ちている槍の残骸を拾って聖剣に変えながら、屋敷の正面玄関へと向かっていく。


 建物の方を見れば、キアが外壁をスルスルと上っていくところだった。あっさりと三階まで到達する。


「すごいわね……キアってなんでも登れちゃうのかしら」

「そうかもね」

「ほら。みんな余所見しない。ヨナくん、扉の錠を壊して。開ける時は合図して。向こうに敵が待ち構えているはずだから」

「わかった」


 左右に開く扉の合わせ目に沿うように、聖剣を通す。錠がどんな構造かは知らないけれど、これでスパッと切れたわけだ。


「重そうな扉だから、これももふもふに開けさせるわね。いち、にの、さん!」


 と、アンリが代わりに合図をして、もふもふの前足で扉を蹴らせる。バンと音がして扉が両開きになる。


 屋敷の玄関には高そうな家具が見えた。それから、弓を構えた兵士たちの姿。こっちに弓を構えて待っていた彼らは、一斉に放ってきた。

 その姿が見えたのは一瞬。次の瞬間には、視界をすべて覆う闇のカーテンが扉の大きさいっぱいに広がった。


 日中だから、真っ暗なそれは逆に目立つ。黒すぎてカーテンの動きはよくわからないけれど、それが矢を受け止めているらしい。ポスポスと気の抜ける音がした。

 闇の中で身を隠す以外にも、こんな使い方できるんだ。


「よし突撃!」

「ええ! もふもふ、いっけー!」


 カーテンが消えると同時に馬が進む。僕たちもそれに気づいた。兵士たちは二の矢を準備する暇もなく、弓を捨てて剣を抜く。


 そこにアンリが矢を放ちながらぶつかる。矢でやられた敵はいなかったけど、屋敷の中を馬が走るという非常識な光景に狼狽え、その隙に馬に蹴飛ばされてしまった。蹄が鎧に当たる音と、悲鳴が玄関に響く。


 僕たちも続き、兵士たちの間を通り抜けて屋敷に入っていく。立ち上がろうとした兵士を蹴飛ばして、再び倒して、とどめとばかりに顔面を踏みつける。剣を持って起き上がったばかりの兵士が、蔓で動きを止められてティナに斬りつけられて負傷していた。


 何人かは、もふもふにさらに踏みつけられて動けなくなった。腕が変な方向に曲がっている兵士もいた。可哀想に。

 仕える相手を間違ったからだ。


 先を急ごう。シャルロットたちを助けるのが先かな。それとも、子爵親子を何とかするべきだろうか。



――――



 シャルロットと協力してカーテンを結んでいたカルラは、窓が叩かれる音を聞いた。三階の窓を外から叩く奴って何者なんだ。まさか敵か。

 そう思ってシャルロットを背に庇いながら窓を見た。


 キアだった。


 すぐに窓を開けて中に入れる。


「ヨナたちが助けに来てくれたぞ。街の兵隊も来てるから、この屋敷はもうすぐアタシたちのものだ」

「そ、そうか。良かった」


 別にキアたちのものじゃないけれど。制圧するって言いたいのか。


「ヨナ様が助けてくれるのですね! 良かった……」


 彼が来てくれたことに、シャルロットは本気で安堵しているようだった。


「もう、大丈夫、ですね。シャルロット様」

「はい。カルラも、ここまで守っていただき、ありがとうございます」

「まだ安心するには早いみたいだけどなー」


 そうだった。扉からはまだ、ドンドンと音がしている。

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